アップルは自社製品の中核プロセッサーとして、「Appleシリコン」と呼ばれる自社設計プロセッサーを使っている。Macでもその方針になってから、2年半近く経過しようとしている。
昨年から導入が進んでいる「M2」世代は名前の通り、Mac向けAppleシリコンとしては第2世代だ。
より高いパフォーマンスを求めるプロ向けには、当然「Pro」が求められていた。というわけ、2月3日から「M2 Pro」「M2 Max」搭載のMacが市場に出る。
今回はMacBook Pro(14インチモデル)のM2 Pro搭載モデルを借りることができたので、その性能を確認しつつ、特性を見ていこう。
デザインは同じだが「Wi-Fi 6E」「HDMI 2.1」対応に
今回のMacの新製品は、MacBook ProシリーズとMac miniがある。
前者は14インチ・16インチの2サイズ展開で、M2 ProとM2 Max搭載モデルがあり、さらにCPUやGPUのコア数、搭載メモリーなどでバリエーションが分かれている。
後者については、「MacBook Air」などですでに導入されている「M2」を搭載した低価格モデルと、M2 Proを搭載した最上位モデルに分かれている。
アップルの場合プロセッサー変更ではデザインを変えないことも多いわけだが、これらのモデルもそれに倣い、大きな変更は加えていない。筆者は日常的にMacBook Pro 14インチモデル(2021年秋発売)を使っているのだが、貸し出しモデルとは色まで被ったので、並べてみても差がわからない。
だが、ハードウエア仕様はいくつか変わっている。
例えば、Wi-Fiは最新の「Wi-Fi 6E」対応になった。ただ、貸し出されたMacBook Pro 14インチの場合には、最初には従来通り「Wi-Fi 6」までの対応だった。初回セットアップの過程でOS(macOS Ventura 13.2)のアップデートが行われ、それ以降は、Wi-Fi 6Eでの接続が可能になる。ただ、2.4GHz帯や5GHz帯がひどく混み合っている環境でない限り、6Eであるメリットはあまり感じられないだろう。
HDMIについても、従来は「HDMI 2.1」に対応しておらず、8Kや120Hz駆動対応、可変リフレッシュレート(VRR)などの最新機能が使えなかった。
しかし、今回はHDMI 2.1対応になったので、最新のディスプレイと組み合わせた場合であっても、ちゃんと性能を引き出せる。
ただし、Mac miniについては注意が必要だ。HDMI 2.1に対応するのは、M2 Proを採用した最上位モデルだけであるからだ。
すなわち、M2 ProとHDMI2.1の対応はセットになっているので、HDMI 2.1の機能を欲するなら、性能的にはM2で十分だと思っても、MacBook ProかMac mini上位モデルを選ぶ必要がある、ということだ。
まだ数は少ないが、Macにも、AppleシリコンのGPU性能を活かしたゲームが出始めている。Mac mini+テレビやゲーミングディスプレイの組み合わせは、ゲームなども視野に入れた使い方に向いている。しかしその場合、Mac miniを選ぶなら、M2 Pro搭載モデルを選んだ方が良い。
順当に「前世代比で2割」高速化、「Pro」の意味も明確に
では触ってみるとどうか?
現在のMacはどれも十分に高速なので、ウェブやオフィスソフトを使うくらいだと差がよくわからない。だがベンチマークソフトで測ると、やはり違いは明白だ。
今回は定番ベンチマークソフトである「GeekBench 5」と「Cinebench R23」を使って、まずCPU周りのテストをしてみた。参考として、M1搭載のMacBook ProやM2搭載の「MacBook Air」などでの、過去のテスト結果とも比べて見ている。
アップルは「2割速度が向上する」とコメントしていたが、確かにベンチマーク上、2割近く性能がアップしている。
M2搭載製品が登場したとき、「M2とM1 ProやMaxは、どっちが上なのだろうか?」という疑問があったように思う。
答えは「M2よりM1 Proの方が速い」。今回、M2 Proを加えてあげることで、序列はさらに明確になった。
すなわち、「世代が違うと20%程度速度が上がり、同じ世代でProだと60%から70%速くなる」という感じだ。だから、M2とM1 ProではM1 Proの方がずっと速く、M2 Proになるとさらに速くなる。
一方で、シングルプロセッサー性能だと、世代が変わると速くなるものの、差は極端に大きなものではない。
すなわち、「Pro」「Max」とコア数が増えていくことで性能をアップさせていくのがAppleシリコンのやり方であり、「M2」世代でヒエラルキーの作り方が明確になった、と考えればわかりやすい。
ソフト開発や動画編集などは、処理が早く終わるならそれに越したことはない。あとはそこにいくら払うのか、という問題が残るのだが。
GPUがより強化、コア数増加以上の性能アップ
そして、CPU以上にM2 Proになって性能アップを感じられるのがGPU性能だ。
今回試用したモデルの場合、GPUコアは19個ある。M1 ProモデルはGPUコアが16個だったので、3つ増えているわけだ。
GeekBench 5での速度差は26%程度だったのだが、これはコア数の増加(計算上18%アップ)以上の性能向上だ。
この辺は、リアルタイムCGで確認するとよりわかりやすい。Appleシリコンに最適化された、カプコンの「バイオハザード ヴィレッジ」を動かしてみると、描画コマ数がざっくり3割多くなっている。
設定は、解像度WQHD(2560×1440ドット)で、画質優先。画質をあまり劣化させずにコマ数を稼ぐ「MetalFX Upscaling」機能はオフとした。
この設定だと、M1 Proでもフレームレートは毎秒30から50コマくらいで、60コマを切る。しかし、M2 Proでは60コマ以上安定……とはいかなかったものの、おおむね50-70コマとなり、かなり「なめらかな方に安定した」と感じる。そこで「MetalFX Upscaling」をオンにすればもっと安定するわけだ。
まだMac向けのゲームは少ないが、今後「No Man's Sky」などのAAAゲームもMac向けに出てくる。それらをゲーミングPCに近い環境で楽しめると考えていいだろう。
逆に言えば、それだけのパフォーマンスがあるということは、CG制作のプレビューなどでリアルタイムCGを使う場合にも効果は大きい、ということになる。
発熱などは相変わらず優秀、価格の高さの判断が課題
そして重要なのは、そうした使い方をしても「発熱が従来モデルと大差ない」「バッテリー動作時間も変わった印象がない」「バッテリーで動作させてもパフォーマンスがあまり落ちない」ということだ。インテルやAMDの最新CPUもかなり消費電力が下がってきたが、まだ「最高性能ではないがほとんどのクリエイターやゲーマーが満足できるパワーレンジ」に限定すると、Appleシリコンに一日の長がある、と感じる。
全体として割高なマシンではあるのだが、それだけの完成度はある。
ただ、この価格でM1 ProやMaxのモデルを持っている人が即座に買い替えるべき性能か、というと、そこは微妙だろう。逆に言えばそのくらい、M1 Pro/Maxのモデルは今も快適なのだ。
まだインテルCPU世代のMacを使っている人や、Windowsからの買い替え・買い足しの場合には、M2 Proベースのモデルを選ぶべきかと思う。
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2023-02-01 16:00:00Z
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