宇宙のロマン。
プラネット・ナインって知ってますか? 太陽系の外縁に存在すると提唱されている大型天体のニックネーム。
…そう、あるかないかわからないんです。たぶんあると思うけど、まだわかんないという謎の星。そのわりに仮説ではあるものの、星の大きさや軌道などが予測されているという、なかなかおもしろい存在なんです。
限りなくあるに近いけどまだない星。または、ないのにあると思いたくなる星。このプラネット・ナインについて、昨年末に最新研究論文がでています。結果からいうと、存在を明らかにすることはできず、謎の星のままなのですが。
プラネット・ナインに関する最新研究をリードしたのは、ノルウェーのオスロ大学の天体物理理論機関の研究員のSigurd Naess氏。チリにあるアタカマ宇宙論望遠鏡を用いて探査しました。
プラネット・ナインの存在が提唱されたのは2014年。2016年には、カリフォルニア工科大学の科学者Konstantin Batygin氏とMichael Brown氏が、エッジワース・カイパーベルトの遠くに物体の奇妙な動きが見られたとして、ナイン・プラネットの存在に関連するかもしれないと発表。その後、この奇妙な動き、物体は解明されプラネット・ナインの存在を裏付けるものではないと結論づけられました。
プラネット・ナイン、仮説ではこんな星
質量は地球の5倍から10倍。太陽から200auから800auの距離に位置し、大きな楕円軌道を1万年から2万年周期で公転している。(au=天文単位、1auは太陽から地球までの平均距離で約15000万キロ。)相当大きな星なのですが、太陽系外縁、つまり海王星の外には冥王星やエリス、ハウメアなどもあるので、ない話ではありません。
で、天体素人は「それ都市伝説でしょ! だってそんなにデカイ星ならとっくに見つかってるはずだもん」と思ってしまうのですが、プラネット・ナインの存在証明が難しいのには理由があるんです。仮にプラネット・ナインが存在していたとして、太陽からかなり離れた位置にあるので光がほとんど届かない。反射する太陽光もわずかなら、星の放射もわずか。地球から存在を確かにできるほどのデータをとるのは至難の業なのです。過去に行われた人工衛星WIREでの探査も失敗に終わりました。
アタカマ宇宙論望遠鏡による最新探査
Naess氏のチームが用いたアタカマ宇宙論望遠鏡は、ミリ波で宇宙をスキャンできます。本来は、ビッグバンによって放射されたとする宇宙マイクロ波背景放射を探査するために使用されています。ピッツバーグ大学の天文学者で、プラネット・ナイン研究チームに参加、論文共同執筆者のArthur Kosowsky氏は、米Gizmodoの取材に対して、アタカマ宇宙論望遠鏡がいかに今回の探査に適しているのか説明してくれました。
「プラネット・ナインを探るには、電子レンジレベルのわずかな熱発光線を探知する必要があります。また、プラネット・ナインが位置するであろう広い範囲を探査しなくてはなりません。センシティブかつ広範囲、この2つがアタカマ宇宙論望遠鏡が今回の探査に適している理由です。」
300au~2000auの距離で、98 GHz/150 GHz/229 GHzで探査。地球の約5倍ならば、プラネット・ナインは、325auから625auのあたりに、10倍ならは425auから775auのあたりにあると予想。あるかどうか以前に、どこにあるのかも誰もハッキリとわからないんですね。さらに難しいのは、プラネット・ナインが動いているかもしれないということ。
Kosowsky氏は「どこにあって、どの方向に動いているのかわからないので、億を超える可能性をコンピューターで調査しました。それぞれの可能性に対して、収集したデータから平均をだし、それぞれの軌道において、何か動くものはないかを探したのです」その結果、期待のできる軌道が複数見つかったものの、動く物体を見つけたと思ったらランダムなデータノイズだったなど、何百回とやればやるほど確かな軌道、動く物体を捉えることは難しいことがわかってしまう羽目に。
それでも、アタカマ宇宙論望遠鏡によるスキャンによって、3万8000ものダイヤの原石的シグナルを発見。うち、3500はプラネット・ナインの存在を示唆する可能性があるといいます。その中には追加調査が行われるかもしれないシグナルも10ほどあるそうです。が、あくまでも可能性であって、どのシグナルもハッキリ確認がとれるほどのものではなく、今回の探査では大きな収穫はなしという結果に。
今回のリサーチによって、プラネット・ナインが動いているとして、探査したエリア内においては、(プラネット・ナインが)地球の約5倍ならば可能性のある星17%を候補から排除、10倍ならば9%を排除できるということで、それでも謎解明に向けてちょっとずつ前進はしているのですけどね。
「プラネット・ナインが隠れているかもしれない場所はまだまだたくさんありますからね」と、なんだか楽しげなKosowsky氏でした。
Source: Center for Astrophysics
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2022-04-02 12:00:00Z
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