[名称] Labelflash(DVD-R)
[種類] 光ディスク(650nm)
[記録方法] オキソライフ色素(追記型)、描画用色素
[サイズ] 120mm
[容量] 4.7GB
[登場年] 2005年頃~2016年頃
今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。
「Labelflash」は、YAMAHAと富士フイルムによって開発された、レーベル面への印刷に対応したDVD-Rドライブの機能、およびディスク。印刷といってもプリンターを用意する必要はなく、光学ドライブのみで印刷できるというのがメリットです。
ベースとなっているのは、文字や絵を描けることで注目されたYAMAHAのCD-R用機能となる「DiscT@2」。この機能では、データを書き込んだ後の記録面の空きスペースを活用する、といった用途が想定されていました。
必要なファイルをどのディスクに書き込んだのか忘れてしまうと、1枚ずつ再生して確かめないといけませんが、DiscT@2で「実験データ①」とか「10月の旅行写真」などとメモを記録しておけば、ひと目で何を書き込んだかわかるわけです。もちろん、純粋に装飾として楽しむこともできます。
この機能を実現するには精密なレーザー照射、つまり高精度なディスクの回転と、ピックアップ位置制御が必要となるわけですが、とくに高品質な音楽CD書き込みで高い評価を得ていたYAMAHAだけに、なるほどと納得できるものでした。
ただし、あくまで書き込んだ部分の反射を利用したものとなるため、ディスクに使われている色素の種類によっては見にくいという欠点がありました。あくまでオマケ機能というか、遊び心のある機能ですね。利用者からは、比較的色が濃くて見やすい青いAZO系色素のディスクが好まれていました。
このDiscT@2を進化させたのがLabelflashで、名前の通り記録面ではなく、レーベル面へ文字や絵を描く機能となりました。記録面へのオマケ的な書き込みでは判読しづらかった点を改良し、専用の描画用色素を使ったレーベル面を持つ専用ディスクを作ったというのが大きな違いです。この専用ディスクが、今回紹介するものです。
ということで、実際のディスクを見てみましょう。
レーベル印刷層には、DiscT@2時代から見やすいといわれていた青系の色素を採用。書き込んだデータを読み出せる必要はないため、描画専用の色素が使用されています。ちなみに、鏡のようにかなりの反射があるため、正面からの撮影は諦めました。
もちろん、レーザー光を誘導するための溝となるグルーブもありませんから、光の反射で模様が見えたりすることもありません。
面白いのが、このレーベル印刷層は表面ではなく、保護層の内側にある事。記録層も保護層で守られていますから、ある意味、2つのDVD-Rをひっくり返して貼り付けたような、特殊な構造のディスクといえるでしょう。
こんな構造をしていれば、どっちが記録面でどっちがレーベル面なのかわからなくなりそうですが、中央に思いっきり「PRINTING SIDE」と書かれているので、簡単にわかります。
親切です。
せっかくなので、記録面も見てみましょう。
こちらも青系の色素が使われていますが、これはオキソライフ色素という富士フイルムが開発したもの。富士フイルムはCD-Rではあまりパッとしない印象でしたが、この色素をウリにしたDVD-Rでは、結構存在感が出たような印象があります。写真や映像が絡んでくると、強さを発揮しますね。
記録面にはレーベル面と違いグルーブがあるため、光の干渉やら反射がで模様が浮かび上がっているのが分かります。見比べてみると、その違いがハッキリします。
Labelflashを使うには対応ディスクは当然として、対応するドライブも必要となります。ドライブはレアかと思いきや意外と豊富にあるので、今から中古で探しても入手しやすいでしょう。
問題は、Labelflashの書き込みに対応したソフトが必要なこと。レーベルフラッシュ公式サイトが潰れた今、入手するのはかなり困難です。といっても、Internet Archiveが提供しているWayback Machineで過去のサイトを表示すれば、英語版の「Labelflash Index Maker」というソフトはダウンロードできます。
Windows 10でも動くか試してみたところ、一応Labelflash Index Makerは動作しました。ただし、OSのせいか中古のドライブのせいかはわかりませんが、レーベル面をうまく認識してくれず、エラーで書き込めませんでしたが。
CD-Rの時代から、レーベル面をどうするのかというというのは悩みどころで、マジックで直接書く、ラベルシールを貼るなど色々な方法が取られていました。回転数が高くなるとシールによる偏心の影響が問題視され、次第に消えていきましたが、これに代わって出てきたのが、インクジェットプリンターによる直接印刷です。
2000年末あたりから対応プリンターが登場し、ホワイトレーベルのインクジェット用ディスクが発売されると、フルカラーのレーベル印刷が一気に身近になりました。
Labelflashはプリンターがいらないとはいえ、表現力で見劣りするモノカラー。しかも反射率の違いを利用したものとなるため、DiscT@2ほどではないにせよ、インクジェットプリンターと比べてしまえば見づらくなります。また、レーベル印刷時間も結構長く、高品質で印刷しようとすれば、20分以上かかってしまうというのも厳しい点です。
そして何より、ホワイトレーベルのディスクはどこでも売っていましたが、Labelflash専用ディスクは数が限られている……というか、ぶっちゃけ富士フイルムのコレくらいしかないので、入手性の面でも微妙でした。
対応ドライブの数は多く、潜在的に利用できる人は多かったはずですが、すでに普及していたインクジェットプリンターを使った印刷ではなく、わざわざLabelflashを選ぶメリットはほとんどありません。結局、あまり利用されることなく消えていきました。
参考:
レーベルフラッシュ公式サイト,YAMAHA CORPORATION / FUJIFILM Corporation, Wayback Machine
高性能,高堅牢DVDディスク用「オキソライフ色素」の開発, 富士フイルム
DVR-UN16L, アイ・オー・データ機器
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiN2h0dHBzOi8vamFwYW5lc2UuZW5nYWRnZXQuY29tL2xhYmVsZmxhc2gtMjMwMDMzNDM1Lmh0bWzSATpodHRwOi8vamFwYW5lc2UuZW5nYWRnZXQuY29tL2FtcC9sYWJlbGZsYXNoLTIzMDAzMzQzNS5odG1s?oc=5
2020-10-11 23:02:42Z
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