画面なしってアイデアは良さげなのですが…。
スマートウォッチやフィットネストラッカーにもいろいろありますが、Amazonはちょっと異色のHaloを打ち出しました。画面がないこと、スマホと連携した体脂肪スキャン、声のトーン分析など、他のウェアラブルにはない特徴がいろいろあります。なかなか興味深いデバイスなんですが、実際使ってみるとそうそう期待通りにはいってないみたいで…米GizmodoのCaitlin McGarry記者のレビューです。
Amazon Haloが誰のために作られたものなのか、今もわかりません。Haloは画面なしのリストバンドで、身体活動と睡眠をバックグラウンドでトラッキングするとともに、マイクでユーザーの声を聴いてそのトーンを分析します。画面がないってことは気を取られる要素が減るし、それでいて有用な健康データはきちんと取れます。そこは良いんですが、Haloはフィットネストラッカーとしてはあんまり良くできてると思えないし、他の2つのフラッグシップ機能を使うにはスマホが必要で、画面なしとは何だったのか?ってなります。しかも後で詳しく書きますが、使ってる過程ですごく気分が下がるケースもあります。
私はHaloを数週間使って睡眠と運動をトラッキングし、会話を聴き取らせ、体脂肪を測定してきました。結果、私はこのフィットネスバンドは誰にもお勧めできないという結論に至りました。
Amazon Halo Band
これは何?:Amazon初のウェアラブルデバイス
価格:100ドル(約1万400円)、プラス6カ月後からは月4ドル(約410円)
好きなところ:1日着けてても快適、エクササイズ動画の品揃えが充実してて別途オンデマンドのサブスクしない人にはナイス、声のトーン分析結果は正確。
好きじゃないところ:体脂肪測定値が不正確で使えないしモチベーションも上がらない、アクティビティポイントの仕組みがよくわからない、ウェアラブルにマイク付けるなら最低限便利さがないとね…。
Haloの主要な機能は3つあり、アクティビティトラッキング、声のトーン分析、体脂肪測定です。まずは最初の、体の動きと睡眠をトラッキングする機能について見ていきましょう。
やる気が上がらないアクティビティトラッキング
Haloは極力目立たないようにできてるって意味で、かつてのFitbitを思わせます。でも初期のFitbitが特に面倒なやりとりもなく心拍数やアクティビティのトラッキングを上手にこなしてたのに対し、Haloはすごくベーシックで、ほとんど使う意味があるのか怪しくなるレベルです。内蔵の光学心拍センサーと加速度計がバックグラウンドで動作して運動を記録してるので、エクササイズを始めるときに操作しなくてもいいことになってはいます。でもFitbitの自動トラッキングがいろんなエクササイズを認識できるのに対し、Haloはユーザーが歩いてるか、走ってるか、何かしら心拍数が上がるような動作をしてるのかくらいしかわかってくれません。
またHaloはそのユーザーのアクティビティを、米国心臓協会の推奨に基づくポイントで記録していきます。Amazonいわく、1週間150ポイントを目標にすべきだそうです。どういう運動をすると何ポイントになるのかは、ユーザーが自分で何か適当に動いてみるか、「labs」と呼ばれるサードパーティパートナー(Orangetheory FitnessとかAaptiv)が提供するエクササイズを試すかで、やってみないとわかりません。
labsは要するにエクササイズ動画の集合で、提供元によって「まあまあ」くらいのところと、「良い」くらいのところがあります(たとえばAaptivの音声ガイドのエクササイズは、私はポーズを見たいのでどうかと思ったんですが、そういう方が好きな人もいます)。アクティビティポイントを爆上げするには、何らかのプログラム(たとえば4週間のヨガコース)に加入すると、クラスの時間になったらリマインダーをもらえます。エクササイズクラスはアラカルトでも選べるし、エクササイズの種類(有酸素運動、屋外、筋トレ、ヨガなど)、時間の長さ、またはどのサービス上で提供されるかによっても選べます。
エクササイズをゲーム化すると効果的だし、他の有料オンデマンドエクササイズにお金をかけずに、Haloアプリからいろんなエクササイズにアクセスできるのも便利です。ただ1週間単位のポイントシステムはバカらしく感じます。私は定期的にちゃんと運動してるので、1週間に150ポイントっていう推奨は簡単にクリアしてしまいましたが、それでも心臓の健康状態とか活動レベルについては何もわかりませんでした。それにただポイントを貯めていくだけだと、Fitbitで友達の歩数に勝つとか、Apple Watchのアクティビティリングを日々完成するとかに比べて満足感が低いです。
ポイント以外には、Haloは心拍数と歩数、運動中の消費カロリーを記録しています。Apple Watch Series 6とHalo両方で3マイル(約4.8km)のランニングを記録してみたんですが、平均心拍数はどちらも同じくらい(Apple Watchは毎分181回、Haloは毎分177回)でした。でも消費カロリーは大きく違っていて、Apple Watchは298kcal、Haloは495kcalでした。それからHaloでは移動距離やペースはわからなくて、軽度・中度・強度の運動をしていた時間がわかるだけです。また、ウォーキング、ランニング以外の細かいエクササイズの種類の記録はできません。45分間Pelotonで運動したところHaloで88ポイントになりましたが、後から1週間のログを見ると、どの運動で88ポイントになったかはわかりません(私は同時にApple Watchも着けてたので確認できましたが)。
Amazonは健康状態・フィットネスの理解と向上のためにHaloを作ったそうなんですが、ポイントシステムがどんくさくて、使えるとは言い難いです。
それで…?ってなる、声のトーン分析
Haloにはユーザーの会話を聴き取って声のトーンを分析する機能もあるんですが、個人的にはこれも使い道がないと思いました。会話の一部をランダムにサンプリングして分析してるらしいんですが、そのために声を聴き取らせるのって抵抗があります。Alexaみたいな音声アシスタントにも常時声を聴かれてはいるんですが、その抵抗感と引き換えに利便性があるから納得してるんです。常時オンのマイクを歓迎する人はほとんどいませんが、それでもアシスタントに何か聞けばすぐ答えてくれたり、コマンドを実行してくれたりするから、多くの人がその存在を受け入れたんです。でもHaloの声分析は、Alexaほど有用じゃありません。Amazonがどう思ってるかはともかく、ほとんどの人は自分の声のトーンがどう聴こえるかなんてわかってます。
声のトーン分析を設定するには、まずいくつか古典文学の抜粋を読み上げて、Haloに自分の声を記憶させます。Haloにはマイク2つとLEDライト1つが内蔵されていて、マイクが聴いているときはライトが光るのでわかります。でも私のフィットネストラッカーにはマイクが付いてますって伝えると、正直周りの人はいい顔をしません。私は夫に「Haloは私の声しか聴いてないから」とか、「録音内容は分析後は保存されないから」とか説明したんですが、それでもオフにしてほしいと言われました。
Haloの分析そのものは私的には不快じゃなく、女性であることでトーンを勘違いされた(と私が思う)こともありませんでした。実際たいていは、少なくともHaloがタイムスタンプを付けて何らかのトーンに分類した会話に関しては、その分類は当たっていました。ただ問題はその情報の使い道がないことです。
たとえば1月6日にワシントンで暴動が起きてるとき、Haloは私が「がっかりしていて」「懐疑的で」「悲しい」声だと記録していました。まあ、そうですよね。だから…?ってことなんです。それほど感情的でない日には、私の声はだいたい「ハッピー」か「楽しそう」でした。ときどきは「落ち着いて」いたり、「いらだって」いたりしました。でもHaloが聴き取った声を後から確認することはできません。それはHaloが声のデータを保存しないからで、そのほうが安心ではありますが、ときどき「午後1時35分にがっかりしてたってあるけど、誰と話してたっけ?」となることがあります。
トーン分析をオンにすると、バッテリーライフが急速に減っていくのも問題です。AmazonいわくHaloは、トーン分析オフだと1回の充電で1週間使えるんですが、オンにすると2.5日になってしまいます。他人から見た自分の印象がわからなくて真剣に困ってるとかじゃない限り、このトレードオフをする必要はないと思います。
体脂肪スキャンの精度が低くて有害ですらあるかも
体脂肪スキャンも、これって誰のため?と思わせる機能でした。体脂肪スキャンを使うには、まず自分の写真をいくつか、ほぼ下着姿で撮らなきゃいけません(私はバイクショーツとスポーツブラで撮影しました)。この写真を元に、体脂肪を推定します。Amazonは、BMIだと超筋肉質な人が肥満に分類されることもあるので、体脂肪の方が健康状態を正確に把握できると言ってます。
でもこの結果がオブラートに包んで言っても奇妙でしかなく、しかも私が見る限り不正確で、醜形恐怖とか摂食障害の経験のある人にとってはかなり問題じゃないかと思います。今回はコロナ禍で、体脂肪スキャン精度の検証のためにクリニックに行ったりはできなかったんですが、私は体脂肪率を測れるWithingsのスマート体重計Body Cardioを持ってたのでそれと比較しました。Body Cardioだと私の体脂肪は27〜32%なんですが、Haloだと40%近くになってしまうんです。私は小柄でかなり運動もしてるので、そりゃないだろうって感じです。
しかももし40%近いほうが本当の数値だとしても、それ自体は何も教えてくれません。どういう脂肪がどこに付いてるのかがわかれば、健康状態がもっとわかります。でもHaloアプリで数値以外に見られるのは、自分のおかしな3Dモデル(私の場合、自分とはまったく似ても似つかない)と、体脂肪を50%から13%までスライドさせるとどうなるかのシミュレーションだけです。Haloによると、私はほぼ骨と皮レベルに激痩せすれば、ついに腹筋が6つに割れるらしいです。
そういう人は多いと思いますが、私は今より痩せてたこともあれば、太ってたこともあります。そして私は、Haloの3Dモデルと実物の自分は全然違うという事実も知ってます。でも中には、この間違った3Dモデルが頭から離れなくなる人もいるかもしれません。この機能は単に役に立たないだけじゃなく、積極的に害を及ぼすかもしれません。だとしたら、これは何の役に立つんでしょうか?
しかもユーザーの画像は分析のためにクラウドに送信されるので、そこも不安を誘います。Amazonはスキャンのときに全裸にはならないで(ぴったりしたショートパンツとブラとかでOK)とか、スキャンは2週間に1回でいいとか言ってるのですが、そうは言ってもね…。自分の(半裸の)画像をAmazonのクラウドに保存して時系列変化を見るっていうオプションもあるんですが、うーん…ノーサンキューですね。
そんなわけでこのHalo、どうしてこんな不可思議なデバイスになっちゃったんでしょうね? 手首を見ないでほしいから画面はなく、バンドが振動することもない。それでいてムダに丁寧な声のトーン分析とか、半裸写真に基づく自分のデブ度合い分析とかは確認してね、なのです。なんだか入られたくない部分に土足で入られてる感じがします。しかも肝心の、運動するモチベーションが上がることも皆無でした。フィットネストラッカーって、ユーザーの目標に対するやる気を高めるべきであって、自分をクズみたいに感じさせちゃいけないと思います。
まとめ
・画面なしのフィットネストラッカーは良さげだと思いましたが、Haloは期待はずれでした。
・体脂肪スキャンと声のトーン分析はピンとこないし、下手するとユーザーの自己肯定感を下げるだけかもしれません。
・アクティビティポイントシステムでは、モチベーションがあまり上がりません。
・この金額出せば、絶対にもっと有能なフィットネストラッカーが見つかります。
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2021-01-24 06:00:00Z
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