みなさま、プラモデル作ってますか?本稿では、コナミとトレジャー、そしてG.revが共同開発した横スクロールSTG『グラディウスV』に登場する自機をプラモデル化した、ピーエムオフィスエーより2021年9月に発売された「ビックバイパーver.グラディウスV」をレビューします。
ピーエムオフィスエーは、2010年より『シルフィード』を始めとしたSTGジャンルに寄り添ったゲーム系プラモデルをリリースし、過去には『R-TYPE FINAL』版1/100 「R-9A」や『ダライアスバースト』の1/60 「レジェンドシルバーホーク」などをリリースしてきました。今回レビューする『グラディウスV』版1/144 「ビックバイパー」は、2020年に発売された『グラディウスIV』版「ビックバイパー」に次ぐキットです。
なお「ビックバイパー」のプラモデル自体は、2010年にコトブキヤより『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』版が、2007年にはアトリエ彩からもリリースされていました。本キットを開発したピーエムオフィスエーは長野県諏訪市に拠点を置く会社です。
細かなパーツ分割に驚く組み立て
筆者自身ピーエムオフィスエーのプラモデルに触れるのは初めてでしたが、組み立てていて純粋に驚く部分が複数ありました。ランナーは全10枚。パーツに触れてみると、離型剤が付いているように思えたので洗剤で洗浄してから組み立てを始めます。組説の組み立て順は、機首のコックピットから外枠→機体前方の先割れ→機体後部の翼とエンジン→機体後方の外枠→大型ミサイル2機+スタンドです。キットの一部パーツには接着剤必須の箇所があり、完全なスナップフィットキットであるわけではありません。
組み立て時に気が付いたのが、大本の胴体を作ってから、別工程で作った主翼などを組み込む方式で無く、最初のパーツを発端に次々パーツを付け足す方式だったことでした(プラモデルにおけるリニアな組み立てであるとも解釈もできますね)。この方式なら各パーツの隙間が生まれにくく密度を維持したまま完成まで辿り着けます。
パーツは1/144の航空機系プラモデルからしたらパーツ数や分割数が多いように感じます。しかし、これによって色分けはほぼ完璧。アンダーゲート(ジャンプゲート)を多用してパーツの切り出しも目立ちにくくなっています。一方で極小のパーツを組み込むの難易度が高かったり、パーツを取り付ける時に上手くハマらないと歪みの影響で、パーツ間に微妙な隙間が空いてしまうため、全てが上手く機能しているわけではないとも印象を受けました。
特にミサイルは赤ラインや動翼も含めなんと16パーツ構成。完璧な色分けがなされていますが、組み合わせるパーツ数が多すぎて煩雑にも思えてしまいます。組み立て自体が高めの難易度でしたが、まずは素組みで完成した1/144「ビックバイパー T301」全体を眺めてみましょう。
小さくも緻密な1/144「ビックバイパー T301」
組み立てている最中は「他の1/144キットと同じく小さいのでは?」と思っていましたが、実際に完成してみると下部のミサイルも合わせて厚みがあるために、「意外とボリュームがある」という印象を受けます。以前に制作したコトブキヤの1/144「ADFX-01」と並べてみると大きさは大体同じぐらいです。
加えて、パネルラインを筆頭とした細部の造型も含めて、『グラディウスV』のパッケージやオープニングなどで見る「ビックバイパー T301」のイメージがそのまま立体物として表現出来ており、素組みでも完成度の高さに驚きます。
分割が多く、若干作るのは大変でしたが、キャノピーのフレーム分割や主翼とミサイルの動翼も含めて色分けする必要がなく部分塗装やデカール/シールも必要ないのは素晴らしいです。また、ゲーム中では描かれないエンジン部分の造型がなされているのも興味深いポイントですね。一部を脱着し内部を見せることで説得力を出すことに成功しています。一部接着剤が必要なのが気になりましたが、素組みでも本キットが持つ魅力を最大限引き出せています。
「ビックバイパー T301」の塗装―設定資料へのアクセスの難しさ
続いては「ビックバイパー T301」の塗装です。前述の通り本キットはブロック化されておらず、抜かりなく塗装するためには、最後まで分解する必要があります。再びバラバラにするのは大変ですが、色分けが完璧で合わせ目も出現しないことから、合わせ目消しやマスキング自体はほぼ必要ないのが嬉しいです。
分解後塗装に入るのですが、ここで一つ問題がありました。それは「ビックバイパー T301」の設定資料が無いことです。確かに『グラディウスV』のオープニングやゲーム内のカットシーンでビックバイパーがある程度クローズアップされることがあります。しかし、3Dモデルビューアーも無いためにパイロットの服装や機体裏面、コックピット周辺、そしてインテーク部分の色はほぼわかりません。
他にも、『グラディウスV』関連は設定資料集や攻略本も出版されておらず、インターネット上にも公式の資料は少なく詳しい形がわかりません。どこまでがパネルラインなのか、合わせ目なのかもわからないのです。ここで失敗したのは、『グラディウスV』通常版に付属していた冊子「ビックバイパー開発史」の存在を失念していたことです。当時に筆者が買ったのは冊子が省かれたベスト版でした……。
気づいたときには後の祭り、短い記事の制作期間の間に『グラディウスV』の通常版パッケージを買う事もできません(中古価格も昔に比べたら上昇して、今やプレミア価格ですしね……)。仕方がないので、箱側面に描かれたフレーバーテキストや、MSX2版『グラディウスII』のオープニングだけでなく、様々なユーザーによるファンアート、筆者が素組みした時に翼端や垂直尾翼を見た時の第一印象である「F-16っぽい」イメージを融合し、塗装に挑みました。
塗装は成型色それぞれに近い色を選びました。灰色パーツは「NP001 メカサフ へヴィ」、青パーツは「VO-34ブライトロイヤルブルー」、白パーツは「UG01 MSホワイト」、黒パーツは「075 ニュートラルグレーV」です。
一方で航空機的なアプローチも欲しかったことと直前にタミヤの1/32 F-16CJも作っていたこともあり、内側のエンジンノズル(インテークのフィン部分も)は「GS-10 サーフェイサーエヴォ ガンメタ」を、エンジン部と外側のエンジンノズルは「TS-30 シルバーリーフ」を、そしてエンジン下部は「AS-12 シルバーメタル」で塗り分けました。また配管も機体に対して機首方向は「X-10ガンメタル」を、水平方向は「X-31チタンゴールド」で塗っています。
また、パーツがこれ以上歪まないようにし、上手くフィットするように(ピン部分がタイト過ぎて押し戻されることがあるため)タミヤの接着剤をピン側に塗り再度組み立てました。
最後に塗装の関係から接着していなかった残りのクリアパーツを取り付けます。全体的な造型は良いものの、超極小のクリアパーツを機体に取り付けるために精密なピンセットを用いなければならないのは、単純に難しくいたずらに難易度が上げてしまっているようにも感じました(しかも、9つ機体に接着しなくてはならない)。さすがに約2mmほどの小さいパーツを接着剤で正確に付けるのは難があります。
細部を全て塗り、彩度が異なる部分を塗装で調整したら、最後にエナメル塗料で細部の墨入れ+拭き取りを終えて完成です。
1/144と思えないほど迫力がある「ビックバイパー T301」の造型
全ての塗装を終えた後の1/144「ビックバイパー T301」を眺めてみましょう。微妙な凹凸やエッジが強調され、塗装により内部構造も存在感が溢れ出たその姿には、全長約15cmと思えないような迫力があります。
手に持ってみると大きさとしては他の1/144キットと同じく片手に収まるサイズですが、かなり精密感があるからか、単純な小ささをあまり感じません。素組みした時にもコトブキヤの1/144 「ADFX-01」と並べてみましたが、ここではより巨大な1/144 「ADFX-10F」も比較対象に加えてみました。
機体規模自体はADFX-01とほぼ同じですが、どことなくビックバイパー側が大きく見えます。この時思い出したのが「田宮模型の仕事」という本で言及されていた一節です。田宮模型では、模型のモチーフとなる車をスケール通りに縮小しても違和感が残ることから、実車らしく見えるように特徴を少し強調させるデフォルメ(変形)をしていることでした。
メーカーこそ異なれど、本キットもパイロットを基準に比較すればT301側が小さく、機体が少しだけ大きく作られているように感じます。実際にデフォルメされているのかはわかりませんが、何となく大きく見えるのは視覚的な満足度に応える造型であると解釈できるのです。
組み立て難易度が高いものの『グラディウスV』における「ビックバイパー T301」の決定版
「ビックバイパー ver.グラディウスV」は、細かなパーツ分割による組み立ての煩雑さや極小パーツの取り付けが極めて難しいという部分はあるものの、1/144スケールながらも小ささを感じさせない造型や精密なモールドなどの魅力ある、「ビックバイパー T301」の決定版と言えるプラモデルです。
全てのパーツを取り付けた時の存在感は随一。遠くから眺めてもシルエットが背景に同化していないように見えたのには驚きました。一方で、完全なスナップフィットでないことや、極小パーツ接着の難しさは無視できません。しかしながら、一部パーツを無視すれば作れないこともないので、最終的には組み立てるユーザーの選択によります。
本キットの価格は4,950円(税込み)と、サイズとプレイバリューから見れば少々高めですが、小さくとも見劣りしないほどの存在感を考えれば許容範囲内にあると言えます。『グラディウス』シリーズファンのみならずシューティングゲームファンにもオススメできるキットであることは確かです。
総評:★★★
良い点・1/144スケールでも迫力を感じる造型
・外枠下のエンジン表現で感じ取れる実在感
・安定性の高いスタンド
悪い点
・極小のパーツの取り付け難易度が高い
・ブロック化されていないため組立/分解が大変
¥3,440
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiN2h0dHBzOi8vd3d3LmdhbWVzcGFyay5qcC9hcnRpY2xlLzIwMjIvMDcvMTAvMTIwMjMwLmh0bWzSAQA?oc=5
2022-07-10 09:00:04Z
CBMiN2h0dHBzOi8vd3d3LmdhbWVzcGFyay5qcC9hcnRpY2xlLzIwMjIvMDcvMTAvMTIwMjMwLmh0bWzSAQA
Tidak ada komentar:
Posting Komentar