クラゲっぽいけど、イカです。
オーストラリア沿岸の深海で大規模な調査が行なわれ、クラゲのような見た目をした深海のイカ、ミズヒキイカが5匹確認されました。この深海生物は非常に珍しく、今回のような複数の観測例はその生態を知るうえでとても有益になります。
先日PLOS ONEには、「深海の頭足綱は非常に多様で広く存在しているが、未だに謎に包まれていることが多い」という文から始まる論文が掲載されました。
「深海の頭足綱」は、ミズヒキイカという奇妙で解明されていない点の多い海洋動物です。論文を共同執筆したオーストラリア、タスマニア州にある CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)の海洋生物学者Deborah Osterhageさんは、5体のミズヒキイカの撮影に成功した深海調査について説明しています。調査で得たデータはミズヒキイカの分布や身体的特徴に行動といった、情報の不足を補うものでした。
謎の多いミズヒキイカ
ミズヒキイカ科の一員であるこの奇妙なイカの観測例はわずかで、彼らのことは少ししか分かっていません。これまで南半球では3体が目撃されたのみ。死んだ標本は幼体であることが多く、姿を現すことはあってもトロール漁によってひどく損傷しています。けれども、大きなヒレ、非常に長くて細い腕とその後ろからぶら下がるあり得ないほど長いスパゲッティ状のようなフィラメントを有していることは分かっています。
オーストラリア水域で確認されたのは初
Osterhageさんと同僚たちがミズヒキイカを撮影したのは、グレートオーストラリア湾深海海洋プログラムの遠征中のこと。2015年から2017年にかけて、同チームはオーストラリア大陸南の沿岸にある開放性湾グレートオーストラリア湾(GAB)の地質学と生態学について研究するため、同海域を調べました。これには海洋調査船Investigatorと、HDビデオカメラ、ライトとレーザーの測定ツールを搭載した遠隔操作型の無人潜水機(ROV)を使用。船の後ろのカメラは5秒ごとに静止画を撮っていました。
この調査の間に、研究者らは218平方kmを巡って、75時間分の動画と1万枚以上の静止画を収集。水中カメラは水深946~3,258mの間をスキャンしています。これにより、これまでの南半球での目撃例よりも多い、5体のミズヒキイカが見つかりました。しかも、ミズヒキイカがオーストラリアの水域で観測されたのは今回が初めてになります。
興味深いことに、ミズヒキイカたちはお互いの近くで観測されています。6kmしか離れていないところで、2体が12時間差で目撃された例がありました。これだけ広大な範囲であっても、5体のミズヒキイカが確認されたのは1カ所に2体、もう1カ所に3体と2つの場所だけでした。論文によれば、個体が集まっていたのは「特定の環境ニーズ」か「繁殖上の機会の向上」のためである可能性が高いとのこと。
ミズヒキイカはどんなところがお好きなの?
ミズヒキイカの好適な生息地に関しては、彼らは浸食された溝の斜面や海底谷の上部といった柔らかな沈殿物を含む場所を好むようでした。目撃された水深は2,000~3,000mの間。目撃された個体の多さから、GABのこの海域をミズヒキイカのホットスポットとみなせるかという疑問には、“まだ分からない”と著者たちは綴っています。
一番大きな個体は183cm
それぞれのイカに身体的な違いがあることから、著者たちはいくつかの目撃例が同一の個体である可能性を除外しています。ミズヒキイカは比較の対象なしに撮影されることが多かったため、研究者らはイカの体にレーザー光を当てて大きさを測るというレーザーの測定ツールを利用。今回目撃されたミズヒキイカで最も長い個体は全長183cmでした。
興味深いミズヒキイカの行動
ミズヒキイカの行動についても、分かったことがあります。観測例のひとつでは、カメラから泳ぎ去ったイカが海底からわずかに浮いて垂直の姿勢に落ち着き、その際にフィラメント3本がコイル状に巻かれました。この行動は、これまでイカが行うとは知られていなかったと著者らは述べています。彼らはヒレをパタパタと動かすことで、水中を移動していました。
研究者たちが記録した行動には、“ヒジのポーズ”というものありました。垂直な姿勢のイカが腕を広げ、そこから直角に近い角度でフィラメントが海底に向かってへとぶら下がるというポーズです。この遠征中には、イカの体が海底と平行になった、このポーズの確認されていなかったバリエーションが記録されました。著者たちはこのポーズをする理由を解明していないものの、獲物を捕らえるための釣りの体勢かもしれないと考えているとか。
今後も未知の生物が見つかるかも?
ミズヒキイカはピンク、オレンジと濃い赤茶色を帯びた淡い色をしていました。外套膜(イカの体の中心部)とヒレがわずかに透き通っていた個体もありました。そしてオレンジ色の部分は、実際に内臓器官(おそらく消化腺)だろうと著者らは述べています。
「これらの観測例は、このとらえどころがなく興味深い属の知識に加えられ、深海のイカの研究ツールとしての画像の価値を強めます」と締めくくっています。
オーストラリアの野生生物に関する驚くようなニュースは他にもあります。たとえば先月下旬には、独自の生態系を宿す高さ500mのサンゴ礁が発見されました。今後も、さらに奇妙な生物が見つかりそうですから、この地からの続報を楽しみに待ちましょう。
Source: PLOS ONE
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2020-11-21 13:00:00Z
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