今月は昨年も実施した航空機操縦訓練をご紹介します。
米田、諏訪両宇宙飛行士候補者は、2月上旬からの約1か月間、米国テキサス州ヒューストンにて小型軽飛行機を用いた航空機操縦訓練を行いました。昨年11月中旬から約1か月間行っていた初回に続く、2回目の訓練機会でした。
今回の訓練機会では、教官が同乗せず一人で操縦を行う単独飛行(ソロフライト)、夜間操縦訓練や、クロスカントリー飛行(出発空港から別の空港までフライトすること。普段は同じ空港で離着陸訓練を行います。)といった飛行を通じて、飛行技量の向上はもちろんのこと、マルチタスキング能力や状況把握能力、決断能力を向上させています。
さらに、初回の滞在時と同様にNASAジョンソン宇宙センターにおいて語学訓練(英語、ロシア語)や体力訓練を行っています。
米田宇宙飛行士候補者の感想
飛行機操縦も二か月ぶりであり、機体の傾きなどへの微細な対応は慣れるまでに時間がかかりました。
新しいことを学ぶ際に、成長を感じることができる時と、なかなか上手くいかずもどかしい時があると思います。パイロットの中で“Every takeoff is optional. Every landing is mandatory” という言い回しがあります。飛ぶと決めるためには、必ず着陸できないといけないということです。飛行機操縦の中でも着陸動作は難しいもののひとつであり、私にとっても、着陸が上手くできず悔しい期間が続きました。ソロフライトの許可が教官から降りるまで何度も操縦と反省を繰り返す日々であり、着陸の様子が夢にも出てきたくらいでした。飛行士の先輩方にもアドバイスをもらいながら、試行錯誤を凝らし、じっとこらえて練習を続けた先で、着陸の感覚を体で身に着けることができた時には次の成長ステージに入ったようでとても嬉しかったです。自転車に乗ることができる感覚と近いかもしれません。
教官に許可をもらって飛んだ初のソロフライトは、あまり怖さはなく、自分が一人で飛行機を操縦し、空を飛んでいるのだということに晴れやかな気持ちになりました。練習という「訓練」を何度も何度も繰り返したことで、「本番」でも「訓練」通りに進めることができました。ソロフライト中にも教官の指示が空耳で聞こえてくるようでした。
このように、悔しい期間を経て成長できた経験は、今後飛行士として様々な技術を身に付ける上できっと糧になるだろうと感じています。そして何か新しいことをはじめる方々にとってその挑戦を後押しできるお話になっていればとても嬉しいです。引き続き頑張ります!
諏訪宇宙飛行士候補者の感想
私にとって、今回の訓練の一つのハイライトは夜間飛行でした。夜間飛行ではクロスカントリーといって、普段使っているヒューストンのエリントン空港からボーモントという、となり街にある空港まで行って帰ってくるという訓練もしました。いままで昼間でも飛んだことのない場所に、街の明かりと計器上に映し出される小さな地図とGPSを頼りに飛んでいきます。暗い中で空港を探すのは一苦労です。リンドバーグが、初めて大西洋横断飛行をした際、パリが見えたときに「翼よ、あれが巴里(パリ)の灯だ」と言った…かどうかは実際はあやしいとのことですが、機体がボーモント空港の滑走路に相対して、滑走路の灯が見えた時はまさに「翼よ、あれがボーモントの灯だ!」という気分でほっとしました。
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2024-03-15 08:40:48Z
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