超巨大ブラックホール(クェーサー)のイメージ図/NASA, ESA, CSA, Joseph Olmsted (STScI)
そんな国際研究拠点では、日々
どんな最先端研究が行われているのでしょうか。今回ご紹介するのは「超巨大ブラックホール」に関する話題です。宇宙に存在するほとんどの銀河の中心にある、超巨大ブラックホール。太陽の数十億倍の質量を持つものもある、あまりに巨大な天体ですが、その起源はいまだ謎に包まれ、世界中の研究者を虜にしています。
この天体はどのようにして生まれたのか、銀河とはどのような関係にあるのか、そして宇宙のなりたちとの関わりは――それらを知るため、今、「史上最強の宇宙望遠鏡」であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って、遠方にある初期宇宙(=若い頃の宇宙)を観測する研究が盛んに行われています。
そして2023年6月には、国際的な共同研究チームがこの宇宙望遠鏡を使った世界初の「ある成果」を報告しました。どのような観測を行い、何が明らかになったのでしょうか。研究を主導した東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の尾上匡房 特任研究員に、たっぷりとお話を聞きました(取材・文:岡本典明)。
超巨大ブラックホール誕生の謎――「2つの種」説
――尾上さんは超巨大ブラックホールに関心を持って研究をされているということですが、そもそも「超巨大」とは、どれくらいの大きさなのでしょうか。
尾上匡房 特任研究員(以下敬称略):ブラックホールは、天文学では星や銀河と同じくらい一般的な天体だと認識されています。軽いものから重いものまでありますが、なかでも「超巨大ブラックホール」は非常に大きな質量を持ったもので、多くは太陽の10万倍から数十億倍の質量を持っています。
――そんなに大きなブラックホールが宇宙のどこにあるのですか。
尾上:ほとんどの銀河の中心に超巨大ブラックホールがあると考えられています。楕円銀河M87の中心にある超巨大ブラックホールを、EHT(イベント・ホライズン・テレスコープ)が撮影した画像が2019年に公開されて大きな話題となりました。M87の超巨大ブラックホールは太陽の65億倍の質量があると言われています。また私たちの住む天の川銀河の中心にも、太陽の約400万倍の質量を持ったブラックホールが存在すると言われています。こちらもEHTによって撮影された画像が2022年に公開されました。
――そんな巨大なものがどうやってできたのでしょう。軽いブラックホールの誕生の過程とは何か違うのでしょうか。
尾上:恒星と同じくらいの質量を持った軽いブラックホールの形成過程は比較的よくわかっています。大質量星が寿命をむかえたときに起こす大爆発(超新星爆発)の後にブラックホールが残されると考えられているのです。一方で、超巨大ブラックホールは存在することはわかっているのですが、その起源ははっきりしていません。
ただ、超巨大ブラックホールも生まれた当初は軽かったと考えられています。小さな「種」のようなブラックホールがまず生まれて、その種が宇宙の歴史の中でどんどん太っていき、最終的に私たちが現在観測しているような重いブラックホールになったと考えられています。
しかし、その種が、どのように生まれ、成長してきたのかということはよくわかっていないのです。それらを調べるには、種が生まれた過去の宇宙=若い宇宙の観測をすることが非常に重要になってきます。
――現時点では、超巨大ブラックホールの「種」の正体はどう考えられているのですか。
尾上:超巨大ブラックホールの種については、主に2つの説があります。簡単に言うと「軽い種」なのか「重い種」なのかということです。どちらの種もブラックホールなのですが、軽い種の候補は、宇宙で最初に生まれた、太陽の100倍以上の質量を持つ星々が寿命をむかえて爆発した後に残されたブラックホールです。
一方で、初期の宇宙ではもっと重い種ブラックホールが生まれることができたとする説もあります。その場合は星の爆発ではなく、太陽の10万倍から100万倍もの質量のガスのかたまりが、ぎゅっと凝縮してブラックホールになったと考えられています。
どちらの説にせよ、初期宇宙で生まれた種ブラックホールに、まわりから物質が降ってきて吸い込まれ、時には別のブラックホールと合体しながらどんどん太っていきます。そのようにして超巨大ブラックホールへと成長していくのではないかと考えられています。
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2024-03-24 21:00:00Z
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