PC用モニターを購入すると、必ずと言っていいほど付属してくるモニタースタンド。それがないとデスクに設置できないわけだから、付属して当たり前ではある。だが、そんな必須アイテムが省かれたモニターがある。BenQの27型「PD2705UA」だ。
といっても、モニター本体だけしかない、なんて話ではない。代わりにモニターアームを標準装備しているのだ。変わり種に思えるかもしれないけれど、これが意外と理にかなったスタイル。かつ、モニター自体も4K HDR対応の高機能・高性能なデザイナー向け製品。そして、デザイナー以外の幅広いPCユーザーにもオススメできるものなのだ。さっそくチェックしてみよう。
汎用品ではない、専用モニターアームだからこその強み
一般的なモニタースタンドと比較したときのモニターアームのメリットを整理しておこう。詳しい方ならご存じの通り、モニターの位置、高さ、角度の調整がより柔軟に行なえること。また、モニター下に空きスペースができることから、デスクを有効活用できる範囲が広がる、という利点もある。こうしたメリットから、近年ではテレワーク環境強化の有力アイテムとして汎用モニターアームの人気が高まっている。
ただ、汎用モニターアームはモニターとの固定部分の金具がVESAという共通規格で基本的に統一されているとはいえ、相性の問題は少なからずある。たとえば、モニターの重量がアーム側の耐荷重の範囲外だと使用できないので、あらかじめ確認しておくことが大事。また、モニター側のねじ穴の深さがまちまちで使用できるねじを選ぶこともあるし、ねじ穴のピッチには75mmや100mmなどのタイプがある、ということにも注意しておかなければならない。いざ設置してみると、モニターの上下位置調節に想像以上の力が必要……なんてことも。
すんなり導入して便利に活用できるときもあれば、ちょっとしたトラブルにハマって無駄なコストを支払いかねないこともある。通常はモニター本体とは別に数千円~2万円前後のコストをかけて導入するだろうから、なおのこと問題があって使えなかったときのダメージは大きい。
対して今回のPD2705UAのモニターアームは製品付属の専用品。すなわち、汎用品であるがために遭遇する可能性のあったさまざまなリスクが一切ない、というのが1つ目のポイントだ。耐荷重を気にすることはないし、ねじ穴絡みで戸惑うこともなし。スタンドは付属していないので、最初からモニターアームを使いたいと思っている人にとっては追加のコストがかからず、取り外したモニタースタンドの保管方法に悩むこともないのだ。
充実のUSBハブ機能、PC3台のKVMも可
モニターアーム部分だけでもなかなかに魅力的なのだが、PD2705UAはモニター本体もそれに負けず劣らず高機能・高性能だ。
デザイナー向けモニターということもあり、解像度は4K(3,840×2,160ドット、60Hz)でHDR10対応。色空間としてはsRGBおよびRec.709について99%のカバー率を誇る。さらに、本格的な仕様として、輝度ムラの補正機能も搭載しており、画面の隅々まで均一な明るさで素材を確認できる。Webデザインや映像編集、CG作成といった用途にぴったりだ。
Display P3はカバーしていないものの、macOSの色空間に近づけられる「M-Book」モードを備えており、MacBookと本製品の色合いと一発で統一して作業性を高められる。クリエイティブな作業をしない人であっても、MacBookユーザーであれば本体側のモニターと外付けモニターの色味が合っていてほしいと思うはず。それを簡単に実現できてしまうのはありがたい。
インターフェイスはDisplayPort Alternate Modeに対応したUSB Type-C×1(アップストリーム)と、DisplayPort×1、HDMI×1の3系統。MacBookなどのノートPCからType-C接続で映像出力する際には、ノートPCに最大65Wで給電するUSB PDにも対応している。最近のモニターで増えてきた機能だが、これがあるのとないのとでは配線の手間やデスク・モニター周りのすっきり感が大きく変わってくるので重要な部分だ。
そして、USBハブとしての機能がかなり充実している。背面側のインターフェイスにはアップストリームのUSB(Type-B)ポート×2と、ダウンストリームのUSB 3.2(Type-A)ポート×2が用意され、加えて本体右側面のアクセスしやすいところにもダウンストリームのUSB 3.2(Type-A)ポート×1とUSB Type-C×1、そしてイヤフォン端子がある。
このうち背面側のUSBアップストリームポート(Type-Cまたは2つのType-A)にPCから接続すると、ダウンストリームポートに接続したUSB機器などをPCから直接利用できる仕組み。しかも、これら3つのアップストリームポートに別々のPCを接続して、Type-C、HDMI、DisplayPortにそれぞれ映像出力するよう配線しておけば、最大3機種のKVMも実現する。
たとえばType-Cの映像入力に切り替えれば、モニター本体に接続しているキーボードやマウスの制御がその映像入力元のPCに移る。入力をHDMIに切り替えれば、同じようにその入力元のPCでキーボードとマウスが使える。1セットのキーボード&マウスで最大3台のPCを操作できるので、業務で複数の環境を使い分けなければならないときに便利なのだ。これでPCと同じ数だけのキーボードとマウスでデスク上が埋めつくされることはなくなるはず。
こうした色空間や映像入力の切り替え、画面輝度の調整などは、BenQのクリエイター向けモニターではおなじみの付属アクセサリー「ホットキーパックG2」を使うことで手早く行なえるようにもなっている。いちいちモニター本体のOSDを操作することなくサクッと設定変更できるので、複数の環境でのコンテンツ制作や確認作業が発生するクリエイターの作業効率はアップすること間違いなし。ビジネスで複数のPCを使い分けるようなシチュエーションでも効率が高まる。メインとなる映像と同時に別の入力元の映像を表示する「PIP(Picture in Picture)」や「PBP(Picture by Picture)」の機能も役立つはずだ。
なお、Windows/macOS対応の専用ユーティリティ「Display Pilot」も利用可能。ここまで説明してきたモニター本体の各種設定をマウス操作で行なえるというスグレモノのアプリケーションだ。きめ細かな設定変更をキーボードのショートカットキーで素早く、容易に実現できたりもするので、インストールは必須と言ってもいい。
モニターアームでの運用を考えているなら、最初からコレ!
モニターアームが標準で付属する珍しいタイプのPD2705UA。モニタースタンドでの困りごとだった狭いデスクで使いにくいという問題を解決し、別途汎用のモニターアームを手に入れる必要がなく、相性に頭を悩ませることもない、というのはとにかくうれしい。クランプ式のモニターアームなので挟み込める天板のデスクであることが条件にはなってしまうものの、それさえクリアしていれば誰もがその使い勝手の良さを実感できることだろう。
4K HDR対応の高解像度・高画質、sRGB/Rec.709カバー率99%のスペックや、充実のUSBハブにKVMなど多彩な機能を備えており、デザイナー向けPCモニターとしての実力の高さにも納得感がある。オフィスや自宅でモニターアームを追加すること前提で環境を整えようとしているなら、最初からPD2705UAを選択してしまうのは大いにアリなのでは、と思わずにはいられない。
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2023-03-23 21:30:00Z
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