Minggu, 14 Juli 2019

「Minecraft Earth」開発の舞台裏:その壮大なAR体験は、ミラーワールドへの大きな一歩となる|WIRED.jp - WIRED.jp

いよいよクローズドベータの参加登録も始まった「Minecraft Earth」。地球全体をマインクラフトの舞台にしてしまおうという壮大なプロジェクトは、世界で初めて大規模な“ミラーワールド体験”を提供することになるかもしれない。「ダンジョン」と呼ばれた秘密のオフィスで数年かけて水面下で開発された拡張現実(AR)体験は、いかに世に送り出されようとしているのか──。その開発の舞台裏に迫った。

WIRED(US)

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IMAGE BY MOJANG

いまのゲーム業界を席巻しているのは「フォートナイト」だと思っている人が多いかもしれない。だが、いまも「マインクラフト」は一大現象であり続けている。

最初の「Java Edition」公開から10年間の累計販売本数は1億7,600万本に上り、年々伸び続けている月間プレイヤー数は現在9,000万人を超えている。近年では中国から200万人のユーザーが加わり、その数はぐっと増えた。

マインクラフトは、PC、ゲーム機、携帯端末、VRデヴァイスなど、20種類のプラットフォームで購入可能だ。明確な終わりのないサンドボックスゲームで、YouTube上の実況動画は、いまだ年間数百億回以上の再生数を誇っている。

マインクラフトがつくる2層構造の世界

開発元のモヤン(Mojang)がマイクロソフトに買収された2012年以降、同作にはほぼ毎年大きなアップデートが行われている。だが、マインクラフトの完全な新作が発表されたことは一度もない(ポイントアンドクリック・タイトルである「マインクラフト:ストーリーモード」もあったし、2020年春にはPC版にダンジョン探索ゲームの「Minecraft: Dungeons」が控えている。ただ、どちらもゲームの特徴である「作品をつくる」体験を真にもたらすものではない)。

では、いったいどうすれば世界中の人が遊べるような新しいゲームを提供できるだろうか? その答えは、ゲームを現実世界にもち出すことにあった。

マイクロソフトが5月に発表した「Minecraft Earth」は、地球を丸ごとブロックで埋め尽くしてしまうような拡張現実(AR)モバイルゲームだ。すでにクローズドベータの事前登録が始まっており、ユーザーたちはもうじきテーブルからソファー、床まで、どこでも好きなところで作品制作を始められるようになるだろう。しかも、フレンドを招待して手伝ってもらうことも可能だ。

できあがった作品は実物大のサイズに変えて、中を歩き回ったりもできる。外の世界に出て、公園など何かしら人の集まる場所に行けば、自分ひとりあるいはエリアにいるほかの誰かと一緒にちょっとした冒険をすることもできる。アイテムを使えば、キャラクターのレヴェルを上げたり、作品をさらに魅力的にしたりすることも可能だ。

これは、マインクラフトの世界に地球全体を取り込んでしまおうという途方もないプロジェクトだ。そして同時に、大勢によって共有され永続する、デジタルとリアルが重なった2層構造の世界の構築に向けた大きな一歩でもある。

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HoloLensからスマートフォンへ

サックス・ペルソンがマインクラフトのチームに加わったのは、2015年。彼はすぐにARの可能性について考え始めた(ペルソンはマインクラフトの開発者でモヤンの共同創業者であるマルクス・ノッチ・ペルソンと同じ姓だが、血縁関係はない)。

当時、マイクロソフトはARヘッドセット「HoloLens」を開発していた。ペルソンは同僚たちとともにHoloLensでのデモ作成に協力し、マインクラフトでつくった村をテーブル上にのせ、建物に頭を突っ込み、地下をのぞいたりしたという。実はすでにこのとき作品を実物大にする試みは行なわれていたのだが、デモのなかで提示されることはなかった。

また、ワシントン州レドモンドにあるマインクラフトのオフィスでは、誰かにHoloLensを装着してもらい、ARのヒツジを廊下の端から装着者に向かって歩かせる実験をしていた。「ゆっくりと、誰も驚かないくらいの速さでです」と、ペルソンは語る。装着者は全員思わずARヒツジに道を譲ってしまうほど、この世界に没入していたという。

ペルソンはピンときた。当時のHoloLensは、どう見ても不完全だった。冒険的な製品で、価格が高く、指でつまむ仕草を必要とする操作性もマインクラフトに合わない。だがHoloLensは、マインクラフトを現実の世界に連れてきたのだ。

依然として技術的な問題が多々あったため、しばらくこのアイデアは保留となった。だが17年7月、国際連合との間でマインクラフトをまちづくりの可視化に利用するアイデアについての会議が開かれる。これをきっかけに、ペルソンはスマートフォンが真のAR体験を提供できるだけの能力を備えるようになったのではないかと考え始めたという。

どこにもない技術をどうつくるか

ペルソンは、モヤンでチーフ・クリエイティヴ・オフィサー(CCO)を務めるジェンス・バーゲンステンと話し合いを始めた。ペルソンはストックホルムまで足を運び、バーゲンステンとともに街中を歩きながら、スマートフォンをあれこれ動かしてブレインストーミングに励んだという。

理想のかたちは、ふたりの頭のなかに出来上がっていた。残る問題は、それをどう実現するかだった。

同じ場所の同じモノ(例えば、噴水の手前にマインクラフトのブタが立っている様子を思い浮かべてみてほしい)を複数の人が見られるようにするには、現実世界におけるブタの位置を永続的に固定できなければならない。この固定された基準点は「アンカー」と呼ばれる。だが当時は、誰かが特定の場所を訪れた際に起動するような永続的なアンカーをつくりだす方法が、存在していなかった。

「『フォーチュン500』に載っているテック企業には、だいたい声をかけたと思います。『こんな技術を開発していたりしませんか?』と」。しかし、そんな企業は皆無だった。

結局、彼らは自ら立ち上がった。

17年のクリスマス前、マインクラフトの技術部長であるマイケル・ワイルバッカーがペルソンに、ある噂の話をした。かつてHoloLensの開発を率い、現在はマイクロソフトのAI最先端事業を複数監督しているアレックス・キップマンのチームが、まさに当時ペルソンが抱えていた問題に取り組もうとしているというのだ。

そして18年1月、ペルソンとキップマンは協力関係を結んだ。それぞれがチームを組んで課題に取り組み、何が起こるか見てみようというものだった。

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“離れ”にあった秘密の「ダンジョン」

いまやマインクラフトのクリエイティヴディレクターとなったペルソンは、別のビルにある“離れ”のオフィスにメンバー数名を連れて行った。

「かなりの極秘プロジェクトでした」。MMORPG「EVE Online」に18年間携わったのち、2月に同プロジェクトに参加したゲームディレクターのトルフィ・オーラフソンはこう語る。「部屋の窓もなく、何の表示もなしと、2重のセキュリティーでした」

彼らはその部屋を「The Dungeon」と呼んだ。18年の6~8カ月ほどの間は、ふたつのチームのメンバーを除けば、The Dungeonの目的はおろか存在を知る者すらいなかった。その目的とは、もちろん「Minecraft Earth」のことだ。

スマートフォンは2015年から、ふたつの大きな変化を遂げてきた。ひとつは高騰する価格(これは不満だ)。もうひとつはAR機能である(最高だ)。いまやAndroidやiOSは、かなりしっかりしたAR開発ツールを提供しており、日進月歩のセンサーとコンピューターヴィジョン・アルゴリズムによって、これまで以上に高いフレームレートが、大きなバッテリー消費なしで実現できるようになっている。

これらの技術を最後の1ビットまで絞り出して活用したのが、Minecraft Earthだ。プレベータ版を少しだけプレイさせてもらったが、どの内容も、HoloLensやMagic Leapのような専用ヘッドセットを付けた状態以外では経験したことのないようなAR体験だった。

試遊したのは「ビルドモード」で、オーラフソンらと作品制作に勤しんだ。オーラフソンが建築物をテーブルに載せると、テーブルの周りを歩いてあらゆる角度から建築物を眺めたり、インベントリ(持ち物)からアイテムを追加したりもできた。複数プレイヤーによる建築は、フレンドが自分と現実世界の同じ場所にいるときのみ可能で、プレイヤーはフレンドに自分の建築物にアクセスする許可を与える必要がある。

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ひとつの建築物を複数で制作する様子のイメージ。PHOTOGRAPH BY MOJANG

ビルド、プレイ、アドベンチャー

建築が終われば、サイズを実物大まで大きくしたり、どこでも好きな場所に設置したり、「プレイモード」にみんなを招待したりできる。オフィス内のいろいろな場所で、複数階層の建築をしたり、ドアを開けてみたり、ブロック人間にめがけてトラップを作動させたりと、さまざまなことを試した。

ある場所には花火まで用意されていて、それを打ち上げることもできた。これらすべてが、部屋のあちこちに向かってスマートフォンを操作するだけでできるのだ。

その見た目も動きも、マインクラフトそのものだった。「みなさんが知るマインクラフトのすべてがあります」と、エグゼクティヴプロデューサーのジェッセ・メリアムは言う。「レッドストーンとピストンを使って、思い思いの作品がつくれるのです」

ビルドモードに施された変更は永続的なものになるが、プレイモードについてはそうはならないという。これは、現に通常のマインクラフトでもときおり見られる意図的な破壊行為を防止する作戦のひとつだそうだ。(当然、ビルドモードで招待したフレンドは建築物に忍び込むことができるということだ。『招き入れてしまったら、されるがままです』と、オーラフソンは言う)。

マインクラフトのもうひとつの重要要素である資源収集は、さらにスケールが大きい。今回は開発者たちの付き添いのもと、レドモンドのダウンタウンでもMinecraft Earthを試遊した。街を歩き回りながらアプリをスマートフォンで起動すると、周辺の地図が表示される。この地図はとっつきやすい抽象的な仕様になっており、さまざまなドットアイコンをタップできるようになっている。

Minecraft Earth

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ありきたりなアイテムから貴重なお宝まで、タップしたモノはすべてプレイヤーのインベントリに追加される。どれも、あとから必要となるアイテムだ。Minecraft Earthは資源でいっぱいのバッグを担いだ状態で始まるわけではない。資源は自分自身で収集するのだ。

アイコンが密集していたら、それは「アドベンチャー」の印だ。これは、その場に居合わせた人と一緒にプレイできる、所要時間6〜8分ほどのミニゲームである。アドベンチャーは活発に発生し、ある手順にのっとって設置されるため、まったく同じ内容のアドベンチャーを繰り返し攻略することにはならないという(リセットもされるそうなので、誰とも一緒にプレイしたくないのであれば、ほかの人が出てきてからひとりで攻略することもできる)。

アドベンチャーのなかには、ダンジョンもあれば平和的な内容のものもある。秘宝を見つけるためのミッションは、弓矢でスケルトンを射る場合もあれば、共同で何かを建築することの場合もあるのだ。

ミラーワールドへの最初の入口

本作の明らかな比較対象として挙げられるのは、ナイアンティックの「ポケモンGO」と「ハリー・ポッター:魔法同盟」だろう。両者とも現実世界を冒険が潜む宝の地図に変え、ヴァーチャル世界の生き物を非ヴァーチャルの世界に登場させることができる。しかし、この2タイトルにおいては、AR機能はオプションにすぎない。AR機能をオフにすれば、これらは実質的に位置情報ベースのアイテム収集ゲームとなる。

一方、Minecraft EarthにとってARは、まさに根幹となる機能だ。それに、これはただのARではない。複数ユーザー間に共有される、永続的なARだ。言い換えれば、「ミラーワールド」に片足を突っ込んだ、世界で初めての大規模ユーザー体験となるかもしれないのだ。

関連記事ミラーワールド:ARが生み出す次の巨大プラットフォーム

「そもそもの始まりは、マインクラフトを現実にもってくるというアイデアでした」と、ペルソンは言う。「それっぽいゲームなんて必要ありません。一部でもダメです。妥協の産物は求めていません。みなさんが思うマインクラフトを丸ごと現実世界にもっていきたいのです。デスクトップモードもなしです。人々が一緒にプレイすることに意味があるわけですから。何らかの制限を加える、規模を小さくするような問題があれば、チーム一丸となってその解決に取り組みます」

また、Minecraft EarthではGPSを使用しない。代わりに使われるのは「Azure Spatial Anchor」だ。

これは「Open Street Map」とマイクロソフトの巨大なAzureクラウドシステムを通じて、プレイヤーが交流できる膨大な数のロケーションをつくりだすものである(ロケーションの数はシアトルだけでも10万カ所以上になる)。

GPSより正確なだけでなく、標高などのデータを含めることもできるため、ゲーム内で歩道と建物上階にあるモノを区別できるという。さらに時間とともにその場所を訪れるプレイヤーが増えれば、特殊な位置情報やアングルの情報(いずれも匿名化されている)を集めることで、データの精度をさらに改善できる。

もちろん、これらすべてはまだ進行中の段階だ。基本プレイは無料で、収益化の方法については何も語られていない。ただし、ルートボックス(いわゆるガチャ)は一切導入しないと明言されている。仮にガチャの話題が出ていたとしても、これはマインクラフトだ。とるべき方法はひとつだけ──そんなアイデアは“ブロック”してしまえばいい。

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https://wired.jp/2019/07/14/minecraft-earth-wants-to-be-the-next-pokemon-go-but-bigger/

2019-07-14 10:00:00Z
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