日本HPは、クリエイター向けのモバイルワークステーション製品4機種を発売した。今回はそのなかから「HP ZBook Create G7 Laptop PC」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
15.6型OLED 4K、第10世代Core i7、GeForce RTX 2070 with Max-Q Design、32GB、SSD 1TBのハイスペック
今回ご紹介する「HP ZBook Create G7 Laptop PC(以下、ZBook Create G7)」は5モデルあり、「スタンダードモデル」、「スタンダードPlusモデル」の2モデルがパネル15.6型フルHD液晶ディスプレイ(非光沢パネル)。「パフォーマンスモデル」、「パフォーマンスPlusモデル」、「ハイパフォーマンスモデル」の3モデルが15.6型OLED 4K(光沢パネル/タッチ対応)。ディスクリートGPUはGeForce RTX 2070 with Max-Q Designか、同SUPER with Max-Q Designの2種類だ。
手元に届いたのは「パフォーマンスモデル」。OLED 4Kパネル搭載機のなかでは下位モデルとなる。なお、執筆時点でダイレクトモデルとして製品ページで購入できるのはスタンダードおよびパフォーマンスモデルの2種類だった。
パフォーマンスモデルおもな仕様は以下のとおり。
【表】HP「ZBook Create G7」(パフォーマンスモデル)の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i7-10850H(6コア12スレッド、2.7GHz~5.1GHz) |
メモリ | DDR4-2399 32GB(16GB×2) |
ストレージ | NVMe M.2 SSD 1TB |
OS | Windows 10 Pro |
ディスプレイ | 15.6型OLED 4K(3,840×2,160ドット)、光沢、タッチ対応、400cd/平方m、HDR-500 True Black、DCI-P3 100% |
グラフィックス | UHD Graphics、GeForce RTX 2070 with Max-Q Design(GDDR6 8GB) |
ネットワーク | Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | Thunderbolt 3×2、USB 3.0、Mini DisplayPort、SDカードリーダ、Bang & Olufsen HD オーディオ(150Hz Bass Roll Off)、内蔵ステレオスピーカー(2ツイーター&2ウーファー)、内蔵トリプルマイク(全方位マイク機能、ノイズキャンセル対応)、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | 最大約14時間(83Wh) |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 354mm×234.6mm×17.9mm |
重量 | 約1.9kg |
税別直販価格 | 298,000円 |
プロセッサは第10世代Comet LakeのCore i7-10850H。6コア12スレッドでクロックは2.7GHzから最大5.1GHz。キャッシュは12MB、TDPは45W。メモリはオンボードで16GBのDDR4-2933×2の計32GB。ストレージはNVMe M.2 SSD 1TB。OSはWindows 10 Proを搭載する。メーカー製としてはめずらしくバージョン2004がインストールされていた。
グラフィックス機能はプロセッサ内蔵のUHD Graphicsと、GeForce RTX 2070 with Max-Q Design(GDDR6 8GB)。Max-Q Designはノートパソコンの薄型化を可能にする設計がウリ。外部出力用にMini DisplayPortを装備している。
15.6型のディスプレイは、光沢ありの15.6型OLED 4K(3,840×2,160ドット)でタッチ対応。400cd/平方m、HDR-500 True Black、DCI-P3 100%の特性を持つ。
ネットワーク機能はWi-Fi 6対応、Bluetooth 5.0。これだけ筐体が大きいのだからGigabit Ethernetも欲しかったところか。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt×2、USB 3.0、SDカードリーダ、音声入出力。キーボードはバックライト搭載。
加えてBang & Olufsen HD オーディオ(150Hz Bass Roll Off)、内蔵ステレオスピーカー(2ツイーター&2ウーファー)、内蔵トリプルマイク(全方位マイク機能、ノイズキャンセル対応)といったサウンド系にもこだわっている。
83Whの6セルバッテリを内蔵し、駆動時間は最大約14時間。サイズ354×234.6×17.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.9kg。構成のわりに2kgを切っている。
税別直販価格は298,000円。一般的なノートパソコンとして見ると高価だが、これだけの構成と、後述するが筐体はもちろん、パネルとサウンドの品質もすばらしく、妥当な価格だと思われる。
筐体はオールシルバー。メタリックで質感も高い。筐体はアルミ成形で軽量で強度も高い。MIL-STD-810Gに準拠に堅牢。重量は実測で1,965g。2kgを切っている。ただ持った感じは見た目よりズッシリ重く感じる。
ディスプレイ中央上にWebカメラ。狭額縁なのがわかる。左側面にロックポート、USB、音声入出力。右側面に電源入力、Thunderbolt 3×2、Mini DisplayPort、SDカードスロットを配置。裏は手前左右側面にスピーカー。前後に1本バーのゴム足。付属のACアダプタのサイズは約150×75×20mm、重量514g、出力19.5V/10.3A。
15.6型のディスプレイは、明るさ、発色、コントラスト、視野角のすべてが良好。ちょうどスマートフォンの液晶ディスプレイとOLEDとの違いで思ったことが、そのままOLED搭載の本機でも当てはまり、とにかく黒が締まり、コントラストが高く、また色が綺麗。DCI-P3 100%で色域が広く原色系が映える。
ただし光沢なので映り込みが結構あるのは惜しいところ。10点タッチも良好だが、これだけ綺麗なパネルに指紋跡はつけたくない感じだ(笑)。
i1Display Proを使い特性を測ったところ、Windows側の設定の最大輝度が358cd/平方mだった。一般的に写真観賞/編集用で最適とされている標準の明るさは120cd/平方mであり、設定の最大値から-4が149cd/平方m、-5が111cd/平方mとなったため、前者で計測している。
黒色輝度は0.000cd/平方m。OLEDの黒は構造上真っ黒になり、当たり前の結果だ。リニアリティは、驚くことにRGB全色ほぼ補正がかかっていない。おそらくここまでのパネルは、一般的な外付けディスプレイも含めてそうそうノートパソコンにはないレベルだ。色を気にする処理にはピッタリのパネルと言えよう。
キーボードは、2段階のバックライトと防滴機能つき。仕様上のキーピッチは18.7mm。フットプリントが広くテンキーがない分、主要キーはほぼ均一だ。15.6型以上でテンキーなしのノートパソコンは、数えるほどしか種類がない。本機はその少ない1台となる。
キーストローク1.5~1.7mmと今時としては深めだが、打鍵感はしっかりしており個人的には好み。音も静かだ。ただ「電源ボタン」の右に「Delete」キーがあるのは少し嫌な感じだ。
タッチパッドは1枚プレート型。パームレストも含め十分面積が確保されており扱いやすい。パームレスト右上に指紋認証センサーがある。
ノイズや振動は気にならないレベル。発熱は負荷をかけると、キーボードの上(とくに左側)、左右のスペースに結構熱を持つが、パームレストまでは降りて来ない。
サウンドは斜め下にスピーカーがついているので、間接音と直接音とのミックスで耳に届く。テストしようといつもの音源を用意し、音を出した瞬間思わず笑ってしまった(いい意味で)。ノートパソコンの音ではない。Bang & Olufsen HD オーディオ(150Hz Bass Roll Off)、内蔵2ツイーター&2ウーファーのステレオスピーカー構成は伊達じゃないと言ったところか。音量も50~60%で一般的なノートパソコンの最大出力を軽く超える。
全方位的に高性能
初回起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。グループ名はないが、「HP Audio Control」と「HP Programmable Key」がプリインストールされていた。デスクトップは壁紙のみの変更とシンブルだが、先に書いたように高性能なパネルが映える壁紙となっている。体感速度などに感してはこの構成なので書くまでもないだろう。快適そのものだ。
ストレージはM.2 NVMe SSD 1TBのSamsung「MZVLB1T0HBLR」。その仕様よると、シーケンシャルリード3,500 MB/s、同ライト3,000 MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもそのまま出ている。Cドライブのみの1パーティションで約952.9GBが割り当てられ、空き容量は899GB。BitLockerで暗号化されている。
Wi-FiとBluetoothはIntel製。GeForce RTX 2070 with Max-Q DesignのメモリはGDDR6で容量は8,192MB、CUDAコア2,304なのがわかる。
おもなプリインストールアプリは、「HP Audio Control」、「HP Documentation」、「HP Programmable Key」、「HP System Information」に加えて、Thunderboltなどデバイス系ツールとあっさりしている。このクラスを購入する人に、余計なプリンストールは不要と言ったところか。
HP Programmable Keyは電源ボタンの2つ左にあるキーのカスタマイズ用だ。そのままに加え、Shift、Ctrl、Altとのコンビネーションもできる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。
少し前に掲載した「DAIV 5P」(Core i7-10750H/GeForce GTX 1650)と比較して、3DMarkのTime SpyからFire Strikeまでは倍以上の差が出ている。プロセッサはCore i7-10850Hのクロックが若干高い程度なので、ほぼディスクリートGPUの違いがそのまま出た感じだ。
PCMark 10 Modern Officeでのバッテリテストの結果は7時間17分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上は最大約14時間なので約半分となった。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2506 | |
PCMark 10 Score | 5,231 |
Essentials | 8,827 |
App Start-up Score | 12,694 |
Video Conferencing Score | 7,011 |
Web Browsing Score | 7,728 |
Productivity | 7,202 |
Spreadsheets Score | 8,012 |
Writing Score | 6,475 |
Digital Content Creation | 6,114 |
Photo Editing Score | 10,468 |
Rendering and Visualization Score | 7,154 |
Video Editting Score | 3,052 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,357 |
Creative Accelarated 3.0 | 4,787 |
Work Accelarated 2.0 | 4,411 |
Storage | 5,034 |
3DMark v2.12.6964 | |
Time Spy | 5,641 |
Fire Strike Ultra | 4,002 |
Fire Strike Extreme | 7,382 |
Fire Strike | 13,786 |
Sky Diver | 27,478 |
Cloud Gate | 26,174 |
Ice Storm Extreme | 59,664 |
Ice Storm | 43,373 |
Cinebench R20 | |
CPU | 2,839 |
CPU(Single Core) | 486 pts |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 3523.422 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 3018.835 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1156.479 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 401.873 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 436.808 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 421.057 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 44.414 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 120.674 MB/s |
クリエーター向けということもあり、動画のエンコードとRAW現像のパッチ処理を少し試した。使用したアプリ(WinX HD Video Converter Deluxe、SIGMA Photo Pro)と元データ(1080p MP4@3分の動画、X3F 5枚)も同じだ。
動画のエンコードは通常で約3分8秒、NVIDIA CUDA利用でで約1分37秒。RAW現像はGPUによる高速化なしで約27秒、ありで約14秒。どちらもディスクリートGPUを使ったほうが倍ほど速くなる。
以上のように「HP ZBook Create G7 Laptop PC」のパフォーマンスモデルは、第10世代Core i7、GeForce RTX 2070 with Max-Q Design、15.6型OLED 4Kパネルを搭載し、2kgを切るクリエイター向けのモバイルワークステーションだ。基本性能だけでなく、パネル性能、サウンド、キーボード、筐体……すべてにおいて、一般的なノートパソコンとは別次元。文句なしの仕上がりぶりだ。
あえて問題を挙げれば、Deleteキーの左側に電源ボタンがあるのが気のなるものの、とにかく少し高くてもいいから、すべてにおいて満足度の高いノートパソコンを求めているユーザーに使ってほしい1台と言えよう。
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2020-10-21 21:55:00Z
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