Jumat, 09 Desember 2022

火星の地下では微生物が今も休眠中? 可能性示唆する研究相次ぐ - ナショナル ジオグラフィック日本版

極限環境でも生きられるデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)の走査型電子顕微鏡写真。火星にもし生命が存在するとしたら、このような微生物なのかもしれない。(MICROGRAPH BY DENNIS KUNKEL MICROSCOPY, SCIENCE PHOTO LIBRARY)

極限環境でも生きられるデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)の走査型電子顕微鏡写真。火星にもし生命が存在するとしたら、このような微生物なのかもしれない。(MICROGRAPH BY DENNIS KUNKEL MICROSCOPY, SCIENCE PHOTO LIBRARY)

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 過酷な世界が広がる火星の表面に、我々が知るような生命が存在できるはずもない。しかし、氷で覆われたその地下では、何億年にもわたって休眠できる微生物が、時折何かのきっかけで目を覚まして増殖しているのかもしれない。

 これは一見突拍子もない考えのようにも思えるが、古代の火星に生命が存在した可能性をモデル化したり、地球の研究室や地下で生きる生物の耐性を観察したりして、その可能性がゼロではないことを示唆する研究結果が立て続けに発表された。

もしも初期の火星が温暖だったなら

 現在、乾燥しきって大量の放射線に覆われた火星の表面は、最も頑丈な地球の微生物であっても一瞬たりとも生きることはできない。

 しかし数十億年前の火星は、温暖で水を豊かにたたえていた。そこには、水のほか、炭素を含んだ有機化合物や、エネルギーを供給する活発な化学反応といった、知られている限り生命に必要な材料がすべてそろっていたことがはっきりしている。

 そこで、フランス、パリ高等師範学校生物学研究所の計算生態学者ボリス・ソートレイ氏は、初期の火星がどの程度生命の存在に適していたのかを調べることにした。氏は以前にも、35億年ほど前に地球の初期生命が地表の状態にどのような影響を及ぼしたかを描いたモデルを開発していた。その時期、火星にも居住に適した環境が整っていた可能性がある。

 今回ソートレイ氏の研究チームは、大気や地表の気温、塩水の種類(塩水は、種類によって氷点が異なる)などの条件を変えた複数の火星モデルを検討した。そして、初期の地球に生息していた生物のように、火星の微生物も水素を餌とし、メタンを発生させ、3メートル以上深く地下に潜った環境でしか生息できないと仮定した。そこは放射線の量も少なく、生命を支える塩水が豊富に存在していたからだ。

 その結果、温暖で氷が少なく、生命に最も優しいモデルの場合、数十億年前の地下浅い層が生命の居住に適していた可能性が少なくとも50%はあることが示された。この研究は、10月10日付けで学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

「火星が完全に氷に覆われていなかったとすれば、生命は存在できただろうという結果が示されました。だからと言って、生命が存在していたというわけではありません。『存在できる』からいかにして『存在していた』に切り替わるのかという部分についてはわかっていないからです」と、ソートレイ氏は言う。

次ページ:生命の存在が破滅につながっていた可能性も

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2022-12-09 08:00:19Z
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