とあるクリエイターのX(旧Twitter)上での投稿をきっかけに、ゲームのグラフィック描画についての談話が賑わいを見せた。グラフィック描画の印象を大きく左右する処理である「ポストプロセス」などについて、国内開発者・クリエイターらを中心に実際の描画例の共有などが盛んに行われたようだ。
ビデオゲームのグラフィックは、さまざまな処理を重ねた結果として、画面上に映し出される。ゲームが動いているコンソールやPCの中では、3Dモデルの状態やライティングの情報などが高速で処理。多段階のプロセスを経て、プレイヤーが目にするような整った画像として仕上げられていく。そうした画像(フレーム)が毎秒何十回と更新され、動くゲーム画面となるわけだ。そうした一連の処理はレンダリング(描画)パイプラインと呼ばれ、そこでの調整がゲームのパフォーマンスやグラフィックの見栄えを大きく左右するわけだ。
そして、描画パイプラインの後半で適用されるのが「ポストプロセス」だ。ポストプロセスは、すでにレンダリングされた画像に対して上乗せするように適用され、プレイヤーが見るグラフィックの印象を大きく変えてくれる。今回、とあるX投稿をきっかけに、そのポストプロセスの“威力”について開発者・クリエイターらが語る一幕があった。発端となったのは、3Dモデリングやアニメーション制作に携わるLantana氏の投稿のようだ。
Lantana氏は5月8日、開発中のオープンワールドARPG『鳴潮 (Wuthering Waves) 』について、上述のポストを投稿した。同氏は、同作の公式配布3Dモデルについて「3Dモデル単体を普通にレンダリングした見え方と、ゲーム内でのレンダリングした見え方の差」について言及。エフェクトのためかと推測しつつ、どのように差が出ているのか疑問を投稿していた。Lantana氏が投稿に添えた画像では、同作のキャラクターである「秧秧」のゲーム内描画と見られる画像と、同キャラの公式配布3Dモデルを比較している。
実際にゲーム内映像と3Dモデルを比較してみると、たしかにモデル単体の描画ではかなりのっぺりとした印象を受ける。こうした差異をもたらしているのが、レンダリングパイプラインでのシェーディング・ライティングなどのさまざまな処理、ひいてはポストプロセスなのだ。
Lantana氏が投じた疑問を受けて、3Dモデリングなどに携わる多くの人々が描画プロセスについて言及。同氏の投稿への反応として、シェーダーによる光源処理や、ポストプロセスがゲーム画面での美麗な見た目に一役買っていると伝えている。
たとえば上述の投稿では、3Dアーティストのbbbbit氏が実際の効果を例示。シェーディング・ライティング・ポストプロセスを含めて、それがいかに最終的な描画に影響を与えるかを比較する画像を共有している。左の画像に比べて、右の画像ではしっかりと光源に対して影が落ちているほか、布・木材・肌といった素材表面の質感も大きくアップ。そして、被写界深度(Depth Of Field/DOF)効果も追加され、描画全体の奥行きが増している。このDOF効果は、よくゲームなどでポストプロセスによって追加されるエフェクトだ。
ポストプロセスと一口にいっても、さまざまなエフェクトが存在する。Unreal Engineの開発者向けサイトを参照すれば、上述のDOF効果のほか、光が光源から散乱するブルーム効果・カメラレンズの映りを思わせるレンズフレアなど多種多様な効果が存在。色調の調整や特定の陰影/反射処理などもポストプロセスの領分であることがわかる。また、モーションブラー・色収差などのエフェクトや、ピクセルのギザギザを滑らかにするアンチエイリアスなどもポストプロセスの領分。どれも欠かせないレンダリングパイプラインの処理のなかでも画面の最終出力に近く、プレイヤーからの印象を左右する重要な役割を担っているわけだ。
Lantana氏の投稿について、alweiこと中村匡彦氏も反応している。同氏は、Unreal Engineを専門とする関西拠点のゲームスタジオIndie-us Games代表であり、クリエイターとしても活躍する人物。alwei氏はLantana氏の疑問について触れ、『BLUE PROTOCOL』『Hi-Fi RUSH』といった、『鳴潮』と同じくUnreal Engine製のゲームの技術情報に触れることを勧めた。また、参考となる資料についても送付している。
そのうちのひとつ、「UNREAL FEST 2023 TOKYO」における『Hi-Fi RUSH』の開発者講演を取り上げた記事では、同作におけるトゥーン表現におけるグラフィック面での工夫を事細かく知ることができる(ゲームメーカーズ)。同記事によれば、トゥーン表現の要となるオブジェクト周りの「線(アウトライン)」について、キャラクターを除いてポストプロセスによって表現していたそうだ。
同作においては、上述のアウトラインの描画に続いて、「Toon Post Process Pass」と呼ばれる一連の処理によってトゥーン表現を深めているとのこと。この処理内で、さまざまな描画結果を利用して組み合わせ、描画されているステージの雰囲気までも調整し、出力しているとのこと。こうした設計は、『Hi-Fi RUSH』の描画処理負荷を軽くするための試行錯誤の結果とのこと。同作の優れた動作パフォーマンスと印象的なグラフィックは、ポストプロセスにも大いに支えられていたわけだ。
X上ではほかにも、ポストプロセスやシェーディングについての実装例や技術にまつわる会話が交わされている。そうした描画処理技術に興味をもった方はぜひ確認してみてほしい。
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2024-05-11 12:20:12Z
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