Minggu, 26 Mei 2024

NASA探査機ジュノーが撮影した木星の衛星エウロパ 画像から新たな事実も判明 - sorae 宇宙へのポータルサイト

こちらはアメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「Juno(ジュノー)」に搭載されている可視光カメラ「JunoCam」で撮影された木星の衛星エウロパです。無数の線条が表面を走る印象的な姿をしています。

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー」の可視光カメラ「JunoCam」で撮影された木星の衛星エウロパ。2022年9月29日に取得されたデータをもとに市民科学者のBjörn Jónssonさんが作成(Credit: Image data: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS; Image processing: Björn Jónsson (CC BY 3.0))】
【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー」の可視光カメラ「JunoCam」で撮影された木星の衛星エウロパ。2022年9月29日に取得されたデータをもとに市民科学者のBjörn Jónssonさんが作成(Credit: Image data: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS; Image processing: Björn Jónsson (CC BY 3.0))】

JunoCamの画像は一般の人々が利用できるように順次公開されていて、数多くの市民科学者が様々な画像を作成しています。冒頭の画像は2022年9月29日に実施されたジュノーによる45回目の木星フライバイ(近接通過)「PJ45(Perijove 45)」で取得された3つの画像を使って市民科学者のBjörn Jónssonさんが作成したもので、色とコントラストを強調するための画像処理が施されています。

NASAによると、ジュノーはエウロパの表面から220マイル(約354km)以内まで接近して観測を行いました。エウロパの高度500km以下を探査機が通過したのはこの時が史上3回目で、2000年1月3日に木星探査機「Galileo(ガリレオ)」が高度351km以下を通過して以来22年ぶりです。このエウロパ接近時にジュノーに搭載されている恒星を捉えるためのセンサー「SRU(Stellar Reference Unit)」やJunoCamで取得した画像を使った研究成果をまとめた2つの論文が、2023年12月と2024年3月に発表されました。

【▲ 低反射率の堆積物の場所(a)、「カモノハシ」と名付けられた地形(b)、SRUの画像における堆積物と「カモノハシ」の位置(c)を示した図。Becker氏らの論文から引用(Credit: Becker et al.)】
【▲ 低反射率の堆積物の場所(a)、「カモノハシ」と名付けられた地形(b)、SRUの画像における堆積物と「カモノハシ」の位置(c)を示した図。Becker氏らの論文から引用(Credit: Becker et al.)】

SRUはナビゲーション用に恒星を観測するためのモノクロカメラですが、暗い星も捉えられる感度を応用して、木星の反射光に照らされたエウロパの夜側表面を撮影するために使用されました。SRUの画像を分析したNASAジェット推進研究所(JPL)のHeidi Beckerさんを筆頭とする研究チームは、画像に写っていた37km×67kmの地形を「Platypus(カモノハシ)」と名付けています。カモノハシは幅1km~7kmの氷塊を多く含む複雑な地形で、その端では線条が崩れています。こうした地形は、エウロパの内部海(氷の外殻の下に存在するのではないかと予想されている)から上昇してきた塩水が表面下に貯まっているような場所では氷殻が崩れる可能性があるとする仮説を裏付けるものだと受け止められています。

また、カモノハシの北では線条に沿って反射率の低い堆積物が複数確認されました。堆積物の半径は2km~5kmで、プルーム(水柱、間欠泉)の活動と関連している可能性があるようです。これらの特徴についてBeckerさんは、表面における現在の活動と内部海の存在を示唆するものだとコメントしています。

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ガリレオ」(左)と「ジュノー」が撮影した「Gwernクレーター」を比較した図。ジュノーの画像はGwernがクレーターではなく交差する線条が作り出したパターンであることを示している。Hansen氏らの論文から引用(Credit: Hansen et al.)】
【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ガリレオ」(左)と「ジュノー」が撮影した「Gwernクレーター」を比較した図。ジュノーの画像はGwernがクレーターではなく交差する線条が作り出したパターンであることを示している。Hansen氏らの論文から引用(Credit: Hansen et al.)】

いっぽう、JunoCamの画像を分析したアメリカ惑星科学研究所(PSI)のCandy Hansenさんを筆頭とする研究チームは、予想されていた線条やブロック状の氷に加えて、険しい崖に囲まれた幅20km~50kmの窪地を複数確認しました。こうした窪地はエウロパにおける真の極移動(true polar wander )にともなって形成されると考えられていて、その影響を示す地形的な特徴がエウロパの南半球でマッピングされたのは今回が初めてだとされています。

※…地殻やマントルが回転することで天体の表面と自転軸の交わる場所(北極や南極)が移動する現象のこと。エウロパの場合は氷の外殻が内部海によって岩石のコアから切り離されているために真の極移動が起こると考えられている。

また、HansenさんたちはJunoCamの画像に写っていた2つのクレーターについても分析を行いました。その結果、直径約22kmの「Gwern」が実際にはクレーターではなく交差する線条によって作り出された準円形のパターンであることを確認したといいます。エウロパで命名されているクレーターはGwernを含めて41個ありますが、研究チームはエウロパがその1つを“失った”と表現しています。

なお、2023年4月に探査機が打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)主導の木星系探査ミッション「JUICE(ジュース)」はエウロパ・ガニメデ・カリストの3つの衛星を探査目標としています。また、NASAが2024年10月に探査機を打ち上げる予定のミッション「Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)」ではエウロパの内部海の探査などが行われる予定です。ジュノーによるエウロパの観測で得られた貴重な知見は、今後の探査ミッションでも役立てられることになります。

Source

  • NASA – NASA’s Juno Provides High-Definition Views of Europa’s Icy Shell
  • Becker et al. – A Complex Region of Europa’s Surface With Hints of Recent Activity Revealed by Juno’s Stellar Reference Unit (Journal of Geophysical Research: Planets)
  • Hansen et al. – Juno’s JunoCam Images of Europa (The Planetary Science Journal)

文・編集/sorae編集部

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2024-05-26 11:28:51Z
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