米航空宇宙局(NASA)が昨年7月に打ち上げた探査車「パーシビアランス」が日本時間の19日午前、火星に着陸しました。数十億年前、微生物が生きていた可能性がある火星で生命の痕跡を探すのが目的。いよいよ火星表面の現場で、数々の難関に挑みます。そのパーシビアランスを何回かに分けて紹介しましょう。
まず注目はその独特の着陸方法です。地球ほどではないですが、お月さまに比べると火星の重力は大きく、薄いながらも大気があります。火星周回軌道から離れてブレーキをかけながら徐々に高度を下げていき、最終的には軟着陸させるには、いろいろと障害があります。現在火星で活躍中の探査車「キュリオシティー」の前までは、ロケットエンジンの噴射で減速したり(図1)、「エアバッグ」などの方法(写真)が使われたりしました。これらは今も一般には使われている方法ですが、キュリオシティー(900キロ)やパーシビアランス(1トン)のように、精密な機器を積んだ重い探査車では、困ったことが起きるのです。
ロケットエンジンで減速させながらそのまま着陸させる方法は、ロケットの噴射で飛び散った岩石が精密な機器を破損させる危険性があります。加えて、着陸した後で探査車を着陸船から発進させる必要がある時は、探査車が重くなると、その際に使うスロープが頑丈で重くなりすぎるなどの悩みもあります。一方「エアバッグ」を使うというアイデアは実に独創的な発想なのですが、これは重いものを着陸させるのには不適です。
そこで考案されたのが、「スカイクレーン」という一見泥臭そうな方法です。この方法では、探査車を発進させる着陸機を使わず、火星大気圏突入後、降下船から探査車をクレーンでつり下げた状態で降ろしていきます(図2)。つり下げた3本のケーブルのそれぞれが独立して制御できるようになっています。そのケーブルを自由に操って、「パーシビアランス」の姿勢を整えながら、着陸に至るわけです。この時、地球と火星の距離では電波の速さでも15分くらいかかってしまいますから、パーシビアランスから大気圏突入開始の電波を地球で受け取った頃には、すでに着陸のスケジュールは終わってしまっているわけで、着陸は、全てプログラム通りに、搭載コンピューターによって完全に自律制御で行われます。
「スカイクレーン・システム」では、ケーブルから探査車をつり下げた状態で地上に降ろします。こうすれば、ロケット噴射の影響も小さくなり、直接探査車を地面に降ろせるので着陸船もスロープも要らないなどの利点があります。ただし、その誘導や制御には、いろいろと苦労があります。次回はそのユニークな技術について紹介しましょう。(つづく)
的川泰宣さん
長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉教授。1942年生まれ。
日本宇宙少年団(YAC)
年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp
「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載開始。カットのイラストは漫画家の松本零士さん。
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2021-02-26 21:01:55Z
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