Senin, 13 November 2023

「究極の液タブ」は小型化しても究極のまま? ワコムの「Cintiq Pro 17」をプロ絵師がレビュー(2023年11月13日)|BIGLOBEニュース - BIGLOBEニュース

ワコムの新型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 17」 (「究極」は別にワコムが言っているわけではありません)

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 こんにちは! refeiaです。
 今日は究極の液タブの第二弾「Cintiq Pro 17」を見ていきましょう。飛び抜けた仕様と飛び抜けた価格で話題にもなり、Cintiq Proの新時代を印象付けた「Cintiq Pro 27」は、サイズ展開が無いまま気づいたら1年が過ぎていました。
 そして先日ついに、「Cintiq Pro 22」「Citntiq Pro 17」が発表されました。今回は後者の17をお借りしています。大型の現行機や、前世代のCintiq Pro 16とはどう違うのか、先代からスムーズに置き換えられるのか……これは自分の制作環境にも直接関わる問題で、詳しく見られると思います。よろしくお願いします!
→・プロが選ぶ液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro」シリーズに17型と22型が登場 実機を見てきた
●小型化した「究極の液タブ」、Cintiq Pro 17
 Cintiq Pro 17は、17.3型の液晶を備えた液タブで、基本的には「Cintiq Pro 27」で打ち立てた新世代のCintiq Proの基準を守りながら、そのまま小型化したモデルです。
・4Kの画面と120Hzのリフレッシュレート
・低遅延/広色域/HDR対応
・狭額縁で大画面とコンパクトを両立
・性能とカスタマイズ性が向上したプロペン3が付属
・画面の角度や高さの調整が容易な専用スタンド付き
・「クリエイターの手を止めない道具」という価値の提供
 このレビューではペンの性能テストはしません。詳しく復習したい方は、Cintiq Pro 27のレビューを読んでください。
 価格は本体が37万1800円、専用スタンドは別売で7万4580円(税込み、以下同様)です。最近のあるあるですが、前世代の中/小型機の感覚が残っているとギョッとするような価格になっています。
●向上したサイズ感と設置性
 それでは本体を見ていきましょう。基本的にはCintiq Pro 27がそのまま小さくなった形で、ショートカットボタン4個を内蔵したグリップが左右に1基ずつと、上面や左右にオプションや他の機材を装着するためのネジ穴があることなど、基本的に同じ方向性で作られています。
 コネクター類は写真の通りです。Cintiq Pro 16の前期モデルにあった、電源も含めてUSB Type-Cケーブル1本で受け取る機能はなくなり、USB Type-C(映像)+電源アダプターという接続が最小になりました。
 また、Cintiq Pro 16とほとんど同じ縦横寸法ながら、ディスプレイとしては15.6型から17.3型に大型化しています。
 ディスプレイパネルは、基本的にどこかのメーカーから調達するしかなく、AppleやMicrosoftでもない限り好きな仕様で作らせ放題というわけにはいきません。そのため、17〜23型で4K(3840×2160ピクセル)のハイスペックという、ノートPCにもデスクトップPCにも市場があまりないカテゴリ−は、欲しくても部材の選択肢やカスタム発注のコストなどの問題で作り難いという状況が続いていました。
 それが、ごく最近はノートPC分野が17〜18型に進展してきており、液タブはいつそこに行くのかという状況でした。ワコムがすかさず17.3型で来たのはさすがだと思います。
 また、本機は簡易スタンドが付属しています。約20度の傾斜で少し浮いた位置に設置できますが、角度を変えたり、容易に畳んだり取り外したりする機能はありません。新しいCintiq Proの中で唯一の「本体と付属品だけで設置できる」モデルになっている点は、(本当に喜んでいいかは疑問が残りますが)うれしいポイントです。
●中型機で初めて「ゴツい多機能スタンド」に対応
 別売の専用スタンドも、大型機と同様の機能になっています。ほぼ垂直からほぼ水平まで、自由に角度を調節することができて、浮かせたような設置にすることもできます。また、左右それぞれ20度の回転にも対応します。90度ピボットならともかく、どのアプリもキャンバス回転ができる時代に中途半端な回転が必要かというと、謎です。
 液タブは、寝かせた角度では首や肩の負担が大きいですが、中/小型機では高さを取らずに単に机面に立てて設置すると机と腕が干渉して描きづらくなりやすいというジレンマがあります。手元のCintiq Pro 16は自作のスタンドで対応していますが、純正品で手軽に好きな高さにできるのはかなり助かると思います。
●使いやすくて細かなカスタマイズも可能な「プロペン3」
 先のレビューで描き味とカスタマイズ性がとても印象的だったプロペン3ですが、本機にももちろん採用されています。
・人間に使いこなせるか謎なレベルの軽い筆圧からの、自然な反応
・テーパーの角度や芯の長さで実現した、視界の広さ
・重さ/重心/軸の太さを好みに応じて変更可能
 太さをカスタマイズしたり、芯の種類/ボタンの有無/重さと重心をカスタマイズしたりは、ものすごい“男の子”の味がしますが、男の子じゃなくてもとても便利です
 また先のレビュー当時はなかった、座標のオフセット機能がドライバーに追加されています。
 デフォルトでは基本的に芯が画面に触れる点に線が出ますが、シャープペンシルやミリペンのような細線を描きたいときは、芯の中心ではなく、視覚的に端っこから線が出てくれた方が自然に感じる場合もあります。そういう好みにすぐに対応できるようになったのは、ありがたい改善です。
●持ち運び用途は事実上困難に
 従来の中/小型機からの移行で一番障害になりそうなのが、出張や二拠点制作などの用途を見込んでいる場合でしょう。縦横のサイズは以前とほぼ同じですが、分厚くなり、内蔵スタンドはなくなり、背面にはグリップの出っ張りがあります。なお、価格からくる心理的な持ち運びづらさは一旦無視します。
 専用スタンドを使用している場合も、簡易スタンドを使用している場合も、ネジなどの取り外し作業をしない限りは運びやすい形になりません。純正以外のスタンドを使うなど、表面上の解決がないわけでもなさそうですが、このモデルはそもそも頻繁な運搬は想定されていないと理解して使うのが安全そうですね。
●Adobe RGBの優先度が低いディスプレイ
 本機は、サイズ以外は基本的にCintiq Pro 27と同じ、と書きましたが、いくつかの注意すべき差もあります。
・上面のねじ穴が減っていて、対応アクセサリーも異なる
・USBホスト(キーボードやUSBドングルが接続できる)端子が省かれている
・HDMIケーブルとDisplayPortケーブルが付属しない
・表示できる色域がCintiq Pro 22やCintiq Pro 27ほど広くない
 特に注意したいのが最後の項目です。表示モードを「ネイティブ」に設定して計測すると、Adobe RGBよりもDCI-P3やDisplay P3を目標に作られたディスプレイらしきことが伺えます。
 Adobe RGBカバー率も公称で88%(CIE 1931)あるとはいえ、これくらいの価格域は妥協なく使いたいディスプレイでもあります。印刷物の制作に広色域を重視して挑みたい人は、Cintiq Pro 27や22などを優先して検討するとよいでしょう。
●ハードウエアキャリブレーションに対応
 今までは触れないでいましたが、旧モデルから引き続き、Cintiq Proシリーズはワコムの純正カラーキャリブレーター「Wacom Color Manager」に対応しているのも見逃せないポイントです。
 カラーマネジメント自体は他社の製品もできますが、この組み合わせの特徴は「ハードウエアキャリブレーション」に対応していることです。通常は「ディスプレイの表示特性をOSに知らせて、逆算で正しく表示してもらう」というものですが、ハードウエアキャリブレーションを使うと、ディスプレイ自体を目標の特性に近づけることができます。
 つまり、本体設定のsRGBモードやAdobe RGBモードみたいな表示を自宅で作れるわけですね。Cintiq Proは最初から調整された各種モードが搭載されているので、それを使えばいいとも言えますが、そうとも言い切れません。液タブは高価な買い物で、とても長い間使うことも想定できます。長い間使えば色がずれてくることもあるわけです。
 ディスプレイは年々性能向上していますし、経年での発色の変化も穏やかになっているはずです。だからといって大丈夫とも言い切れませんし、もし色が変わってきたとしても助かる道があるなら、それに越したことはありません。
 筆者が知る限り、ハードウエアキャリブレーションに対応した液タブはCintiq Proシリーズだけです(Xencelabsも2023年移行に対応予定とされているものの、執筆時点では未対応)。液タブは長く使う機材です。いざというときに助かる可能性があることと、キャリブレーションの方式によって助かり方が違うのを勉強したり検討したりする余地があることも、覚えておくと損にはならないでしょう。
●実際のお絵かきでチェック
 さて、それでは実用していきましょう。今回も感触を比べやすいようにいつもの絵で各工程を試しています。
 低遅延と120Hzによるサクサク感と滑らかさがあり、超軽いタッチからグッと押し込むようなストロークまで自然な反応があり、ペンも前世代のプロペン2よりシッカリ感と視界の良さが向上しています。必要に応じて過去のレビューもチェックしてください。
 また、アプリも1年前より120Hz対応が進んでいるようでもありました。以前は120Hzでも高速度撮影で見るとブラシの表示更新の間隔が秒60回程度の場合が多かったですが、今はPhotoshopもCLIP STUDIO PAINTも、120回か、それ以下だとしても以前よりは滑らかに表示されるようになっています。
●小型化で増えた悩ましさ
 使ってみた実感としては、前世代のCintiq Proのハイエンドな描き味に慣れている人であっても、はっきり進化を感じ取れる出来になっています。ですが、「クリエイターの手を止めない」に目を向けると、本機は正直なところ気持ちや集中を乱される瞬間はちょくちょくあります。
・画面端は操作しづらく、ペンホルダーに触って動かしてしまう
・専用スタンドが小刻みに振動する時がある
・ケーブルが視界のノイズになる
 本機はナローベゼルを採用しているぶん、画面端を操作したいときには少し手がはみ出ます。これ自体は大画面コンパクトとの仕方ないトレードオフなのですが、ペンホルダーを利き手側に設置していると意図せず押してしまい、設置角度がずれるのはストレスです。もちろん、ペンホルダーを装着しなければ済む話ではあります。
 専用スタンドの振動については、浮いたような設置にするためには仕方のない面があります。自分の使い方だと、素早いハッチングを描いたときと、勢いよくタイピングしたときに画面がブルブルと震えて集中を乱されました。こういう作りにする以上、モデルごとに共振周波数があり、ユーザーにつきまとってくるということでしょう。
 ケーブルはまあ、明らかですね。これくらいのハイエンド機を欲するクリエイターは、こだわりが強い人も多いでしょうし、この見苦しさを気持ちよく受け入れるかというと、あまり楽観的にはなれません。
 全体として、基本スペックや描き味は素晴らしいものの、上記のポイントや可搬性の悪化など、大型機の仕様が優先された結果、悩ましい点も増えた印象です。
 一方、発熱と騒音は思ったより好印象でした。ファンは静かに回っていて、旧モデルのようにファン音が頻繁に変わることもなく、音質もよく丸まっていて気になりにくいです。室温28度の部屋で輝度を最大、という極端な状況にして2時間以上使ってみましたが、相応に聞こえるファンノイズではあるものの音が不快というわけでもなく、表面温度もペンタブ用の手袋をしていれば気にならない程度でした。全体としては「満足寄りの中立」ぐらいです。
●まとめ
 それでは、まとめていきましょう。
気に入った点
・前モデルより一回り大きい、17.3型のディスプレイ
・コンパクトで質実剛健なボディー
・4K/120Hz/広色域/プロペン3など、新しいCintiq Proの基準を受け継いでいる
・タッチ操作に対応
・高機能な専用スタンド(従来は大型機にしか提供されなかった)
・拡張用のネジ穴
・抑制の効いたファンノイズ
・VESAマウント(75mm)
難点になり得る点
・コンパクトな割に可搬性がない
・内蔵スタンドがなく、付属の簡易スタンドは融通が効かない
・美しくない接続仕様
・Adobe RGBのカバー率が高くない
・37万1800円と高価
・120Hzのタッチ液晶はSNSとネットサーフィンに最適(時間泥棒)
 Cintiq Pro 17は、1年前にCintiq Pro 27が打ち立てた「Cintiq Proの新しい基準」をほぼそのまま引き継いだ中型機です。コンパクトさからくる設置の自由度と、周辺機材も含めた操作のしやすさ、超高精細な画面などは、大型であることを重視したCintiq Pro 27とはまた別の、妥協のない選択肢です。
 価格は高価ですが、要求の高い、手の込んだ制作に極めて集中して取り組みたい人にとっては、旧Cintiq Proからのアップグレードでも十分に恩恵を感じられるデバイスです。
 一方で、従来の中型機にあった可搬性は失われています。特に従来機で二拠点制作や出張先で利用し、持ち運びやすさの恩恵を受けていた人は、仮に予算があったとしてもスムーズにアップグレードするのは困難です。
 基本的には、作業机に据え置いたら動かさずに使うものとして検討すると良いでしょう。また、その場合、大画面でありながら旧24よりもずっと設置しやすいサイズになったCintiq Pro 22が、本機よりもオールマイティーな出来になっていると想定できます。こちらは自分はレビューしない気がしますが、漏らさず検討しておくと良いでしょう。
 といったところで……。
 ところで新しいCintiq Pro、高いですよね。実はCintiq Pro 17の北米価格は2499.95ドルで、「まあこんだけツヨツヨになっていれば、そんなもんかな」とも思える数字です。それが37万1800円というのは、急激な円安に身体が慣れてない、これにつきます。
 個人的には業務の基幹になる機材ならば、これくらいのものまであっても良いと思います。ですが、性能も十分で仕事もできる機材は他にもあり、ワコムならばCintiqスタンダードがその役割です。また、「Wacom One液晶ペンタブレット 13」がペン以外はCintiq Pro 13みたいな仕様になったことから、Cintiqスタンダードの新型も、従来の古くさい仕様を盛り込んだ入門機という印象から打って変わって、旧Cintiq Pro相当ぐらいの「ちゃんとした上位機」になることが予想できます。
 つまり、新Cintiq Proは「超越した上位機」、まだ見ぬCintiqスタンダードは「ちゃんとした上位機」、というすみ分けになるのでは、ということですね。(4Kとかまではかなわないかもしれないですが)
 折しも、ワコムは7月に「FY03/24-FY03/25の間にブランド商品のポートフォリオを全て更新」(PDF)と株主向けの資料で発表しています。つまり長くてもあと1年半足らずの間に、計画が変わらなければ答えが出るわけです。新しいCintiq Proは間違いなくすごい機種ですが、価格でも機能面でも、必ずしも従来のCintiq Proを置き換えるとは言えません。
 なので、買う人は買えばよし、どうかな……と思った人は、液タブを更新したい人も、持ち運びやすさを維持したい人も、まあ、貯金でもしながら答えを待ってもいいんじゃないですかね。そんな気がします。

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2023-11-13 03:00:20Z
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