長い長い進化の中で、私たちの祖先は、何を得て、何を失い、何と別れてきたのかーー
約46億年と言われる地球の歴史において、生命が誕生は、遅くとも約39億5000万年前と言われています。そして、最初の人類が登場するのは、約700万年前。長い地球の歴史から見れば、“ごく最近”です。
しかし、そのホモ・サピエンスも、突如として誕生したわけではありません。初期生命から現在へと連綿と続く進化の果てに、生まれたのです。私たち「ホモ・サピエンス」という一つの種に絞って、その歴史をたどってみたら、どのような道程が見えてくるでしょうか。そんな道のりを、【70の道標(みちしるべ)】に注目して紡いだ、壮大な物語が『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)です。
この『サピエンス前史』から、70の道標から、とくに注目したい「読みどころ」をご紹介していきましょう。今回は、哺乳類の特徴として欠かせない「臼歯」に焦点を当てていきます。一見、地味そうなテーマですが、じつは「臼歯で生物種を特定できる」ほど、進化や生物の研究にとって「非常に重要な証拠」だと言います。早速見てみましょう。
*本記事は、『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
種さえも特できる「臼歯」…代表的な3タイプ
異歯性である哺乳類において、とくに臼歯にはさまざまな形がある。その形状は、専門家がみれば、種さえも特定できるというほどの“固有性”である。
種レベルの“固有性”とまではいかなくても、本記事を読んでくださるような、生物の進化に興味をお持ちの方なら、臼歯のいくつかのタイプを知っておきたいところだ。ホモ・サピエンスへの進化の道標(第32の特徴)としてとくに注目すべき臼歯は、「トリボスフェニック型」と呼ばれるタイプである。
「すり潰す」の意味のある「トリボ」と、「切り裂く」の意味のある「スフェン」に由来する言葉だ。「トリ(tri)」が「3」を意味するものではないことに注意が必要だ。この言葉の通り、トリボスフェニック型の臼歯には、「すり潰す」と「切り裂く」の両方の役割がある。
トリボスフェニック型の基本形は、三つの咬頭だ。上顎のトリボスフェニック型臼歯では、この三つの頭が三角形となり、その間に谷状構造がある。下顎のトリボスフェニック型臼歯では、さらに三つ、つまり合計六つの咬頭があり、その間に谷状構造がある。この複雑な構造が、「すり潰す」と「切り裂く」の両方を可能にしている。
単孔類の臼歯は、このトリボスフェニック型臼歯、あるいは、それによく似たものだった。
単孔類ののちに“ヒトに至る系譜”と袂を分かつグループには、臼歯の横幅が狭く、三つの頭が一直線に並んだ“剪断仕様のグループ”「真三錐歯類(しんさんすいしるい)」や、低い突起が列をつくって並んでいる“すり潰し仕様のグループ”である「多丘歯類( たきゅうしるい)」、頭が二等辺三角形をつくって並ぶグループ「スパラコテリウム類」などがいる。
- ヒトに至る系譜=トリボスフェニック型:上顎で三つ、 下顎で六つの咬頭があり、その間に谷状構造
- 袂を分かつグループ
- 真三錐歯類(しんさんすいしるい):三つの頭が一直線に並ぶ
- 多丘歯類( たきゅうしるい):低い突起が列をつくって並ぶ
- スパラコテリウム類:頭が二等辺三角形をつくって並ぶ
そして、“ヒトに至る系譜”の臼歯は、トリボスフェニック型である。
“結果的に似た”形態になる「収斂進化」
哺乳類において最も原始的なグループである単孔類と、私たちが同じような臼歯をもっているというこの事実は、臼歯の形状はそれぞれのグループで独立して進化した結果として、単孔類と“ヒトに至る系譜”の二つのグループで似た形状になったと考えられている。
これは、いわゆる「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼んで良いのかもしれない。「収斂進化」とは、異なる二つのグループで、進化の結果として形態が似ることをいう。
いずれにしろ、臼歯の多様化は、中生代の哺乳類を大いに“盛り上げ”た。中生代の哺乳類は、見た目はさほど目立たず、ちがいがないかもしれないけれども、口の中では革新的な進化が進んでいたのである。
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2024-04-10 21:08:00Z
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