「ミッションを完全完遂できた」
小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセルが12月6日、6年ぶりに地球に帰ってきた。地球から遠く離れた小惑星まで飛行し、試料を採取して再び地球へ戻るという、難しい技を実現できたのは、今のところ世界でも日本の「はやぶさ」初号機と「はやぶさ2」だけだ。
探査機「はやぶさ2」から分離された試料カプセルの到着を受け、記者会見する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一プロジェクトマネジャー=2020年12月8日、神奈川県相模原市のJAXA相模原キャンパス
科学探査で世界のトップの地位を確保したかに見える日本だが、一方で「日本は宇宙先進国の地位から脱落しかねない」と危惧する見方も広がっている。日本の宇宙開発は進んでいるのか、それとも遅れているのか。
「はやぶさ2」は2014年の打ち上げ後、順調に飛行を続け、小惑星「リュウグウ」に2回着地、人工クレーターも作り、砂や地中の物質を採取した。JAXA宇宙科学研究所の津田雄一・プロジェクトマネジャーは15日の記者会見で「計画を完全に完遂できた」と報告した。
地球以外の天体から試料を持ち帰る「サンプルリターン」は、米欧中国など各国も取り組んでいる。NASA(米航空宇宙局)もこの10月、小惑星「ベンヌ」に探査機を着地させて試料を採取した。2023年に地球に戻ってくる予定だ。NASAと言えば、長年、日本が師と仰ぎ、お手本にしてきた組織。その大先輩を追い越し、2回も小惑星探査を成功させた。
初号機の感動物語から10年
「はやぶさ」と聞くと、10年前に地球に帰還した初号機を思い出す中高年世代も多いだろう。2003年に打ち上げられ、小惑星「イトカワ」に着地、試料を採取した。エンジンの故障、通信途絶などさまざまなトラブルが起き、満身創痍の状態になったが、予定より3年遅れの2010年にカプセルを地球に戻し、探査機自体は大気圏再突入の際に燃え尽きた。
地球帰還が近づくにつれ、科学や宇宙に関心がなかった人まで巻き込む大ブームが起きた。トラブルでぼろぼろになりながらも宇宙を「1人」で旅する「はやぶさ」初号機の姿に、自分の人生を重ね合わせるサラリーマン、「はやぶさ君」と呼んで応援する人。仕事を終えて最後は燃え尽きたことも、感動を呼んだ。
一方、「はやぶさ2」は、こうした「ドラマ」は乏しかった。というよりも、ドラマにしないことがチームの目標だった。初号機の失敗や経験を生かして技術や設計を磨き、運用訓練を重ねた。その努力が結実した。「はやぶさ2」を率いる津田氏は「100点満点で言えば1万点」と表現した。
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2020-12-17 00:00:00Z
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