Minggu, 05 September 2021

小型PCなのにRyzen 9搭載!もはや最強に近いMINISFORUM「EliteMini HX90」を使ってみた - PC Watch

Ryzen 9 5900HXを搭載する小型デスクトップPC「EliteMini HX90」

 MINISFORUMは、主にノートPC向けのCPUを搭載した小型PCを多数ラインナップしている。今回取り上げるのは、そうしたMINISFORUMの小型PCの中でも、とりわけ性能にこだわった「EliteMini HX90」である。

 CPUには、AMDのノートPC向けAPUとしては最上位クラスの「Ryzen 9 5900HX」を搭載しており、高いパフォーマンスを期待できそうだ。小型PCの枠に留まらない可能性の一端を、各種ベンチマークテストの結果などから明らかにしていきたい。

ゲーミングノートPC用の高性能APUを搭載

 EliteMini HX90は、メモリやストレージの構成によって4モデルを用意する。最も低価格なモデルは、メモリとSSDを搭載しないベアボーンキットPCで、MINISFORUMの直販サイトでの価格は8万2,690円。9月中旬出荷予定だ。

 今回は16GBのメモリと256GBのSSDが組み込まれたモデルを試用した。同じくMINISFORUMの直販価格は9万9,690円だが、予約期間中に直販サイトで購入すれば、いずれのモデルも1万円の割引が適用される。

【表1】EliteMini HX90のスペック
OSなしWindows 10 Pro 64bit版
CPU(最大動作クロック)Ryzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.3GHz)
搭載メモリ
(空きスロット、最大)
なし
(2基、64GB)
DDR4 SO-DIMM 16GB
(なし、64GB)
DDR4 SO-DIMM 16GB
(なし、64GB)
DDR4 SO-DIMM 32GB
(なし、64GB)
ストレージ
(インターフェイス)
なし256GB
(PCIe 3.0 x4)
512GB
(PCIe 3.0 x4)
512GB
(PCIe 3.0x4)
拡張ベイ2.5インチシャドー×2
通信機能Wi-Fi 6、Bluetooth v5.1
主なインターフェイス2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort×2、HDMI×2、USB 3.0 Type-C、USB 3.0×5
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
195×190×60mm
重量1.22kg
直販価格8万2,690円9万9,690円10万3,690円11万5,690円

 APUの5900HXは、CPUコアに最新の「Zen3」アーキテクチャを採用する8コア16スレッドの高性能CPUだ。発熱の目安となるTDPは、ノートPC向けとしては破格の「45+W」に設定されており、本来は15~17型液晶ディスプレイを搭載する大型のゲーミングノートPCなどに搭載されることが多い。

 EliteMini HX90は、MINISFORUMのほかの小型PCと比べるとやや大きめな筐体を採用する。Ryzen 9 5900HXのように発熱の大きなCPUをきちんと冷却するためには、冷却性能の高いCPUクーラーを搭載し、エアフローを確保するための構造を採用しなければならないため、これは仕方のないところだ。

細かいフィンを多数装備するヒートシンクと、直径が実測値で約85mmのファンでRyzen 9 5900HXを冷却する

 とは言え、サイズ感的には小型デスクトップPCの範疇から外れているわけではない。十分小型だし、液晶ディスプレイの裏に設置しても違和感はない。また基本的な外装部分は樹脂製だが、前面や天板、背面や底面にはカーボンファイバーや金属製の飾り板を設けており、高級感もある。

側面にはエアフローを高めるためのスリットが設けられている
天板は吸気用にメッシュ構造のプレートを採用する
350mlのペットボトルとの比較だ。縦置きだとペットボトルより背は低い
幅は350mlのペットボトルとほぼ同じ

 背面には、4基のUSB 3.0ポートと2.5Gigabit Ethernetの有線LANポートのほか、ディスプレイ出力端子としてHDMIやDisplayPortを2基ずつ装備する。これらはすべて4K解像度でリフレッシュレート60Hzのディスプレイ出力に対応しており、さらには4画面同時出力のマルチディスプレイにも対応するという。

 4K解像度対応液晶ディスプレイや有機ELのTVに接続して美しい映像を楽しみたいというユーザーだけではなく、複数の4Kディスプレイを接続してテレワークを快適に行ないたいユーザー、あるいは数多くのディスプレイを接続して相場の状況を一目で確認したいトレーダーなど、幅広いニーズに対応できる。小型PCで、ここまで映像出力端子が充実しているモデルは非常に珍しい。

 前面にはUSB 3.0ポートを1基、USB 3.0 Type-Cポートを1基搭載する。映像出力端子としてスペック表に記載されているのはHDMIとDisplayPortのみであり、このType-CはDisplayPort Alternate Modeには対応しないようだ。実際、Type-C接続のモバイル液晶ディスプレイを接続してみたが、映像出力は行なわれなかった。

前面にはUSB 3.2 Gen1ポートを1基とType-C、マイクとヘッドフォン端子を装備
背面にはUSB 3.2 Gen1ポートを4基、HDMIを2基、DisplayPortを2基、2.5Gigabit Ethernetを1基装備する

 底面を固定する4本のネジと底板を外すと、EliteMini HX90の内部にアクセスできるようになる。底面側には2基のM.2スロットと2.5インチシャドウベイを搭載しており、システムドライブとして装備するSSDやの交換や、2.5インチSSD/HDDの増設が行なえる。1基分のM.2スロットは無線LANインターフェイスカード用だ。

底面を固定している4本のネジを外す
さらに側面から底面を固定している爪を薄い板などで外していくと、内部にアクセスできる

 メモリスロットにアクセスするためには、ここからマザーボードを外す必要がある。底面から見える2.5インチシャドウベイを固定しているネジを1本外し、マザーボードが固定されているプラスチックの支柱からマザーボードを慎重に外すことで、メモリスロットやCPUクーラーを装備する側が見えるようになる。

 メモリスロットは一般的なSO-DIMMスロットなので、市販されているSO-DIMMタイプのメモリが利用できる。ただ、初心者だと内部の構造やマザーボードの固定状況などが分かりにくく、このメモリスロットにアクセスするための作業は難易度が高い。

マザーボードを外してメモリスロットなどにアクセスできるようにしたところだ
メモリスロットには一般的なSO-DIMMメモリが組み込まれていた

 電源ボタンや前面ポートを利用するためのアドオンボードと、マザーボードがフレキシブルケーブルで接続されており、マザーボードを無理矢理引っ張ってこれを破損させてしまうと、PCが動作しなくなってしまう。

 そのため完全なベアボーンPCタイプではなく、メモリが装着済みのモデルを購入する方がオススメだ。16GBでも一般的な用途なら問題はないだろう。ベアボーンPCと、16GBのメモリ+256GBのSSDを組み込んだ完成品の価格差は2万7,000円。メモリとSSD、そしてWindows 10 Proのコストを考えれば十分お得だ。

このフレキシブルケーブルを破損しないよう、注意しながら作業しなければならないが、外すときにはこれが見えないという厳しい状況

CPUコアの世代交代で性能は大幅に向上!

 このように小型PCらしからぬ拡張性やインターフェイスを備えるEliteMini HX90だが、やはり一番気になるのは、Ryzen 9 5900HXの実際の性能だろう。

 今回は、同じくMINISFORUM製の小型PCで、1世代古い「Zen2」アーキテクチャのCPUコアを内蔵するAPU「Ryzen 7 4800U」(以後4800U)を搭載する「EliteMini HM80」と、同じZen3コアを搭載するが6コア12スレッド対応のAPU「Ryzen 5 5600G」(以後5600G)を中心とした自作PCと比較してみよう。

【表2】自作PCのスペック
CPURyzen 5 5600G(6コア12スレッド)
マザーボードGIGABYTE B550I AORUS PRO AX(AMD B550)
メモリCFD販売 CFD Selection W4U3200CM-8GR(DDR4-3200、8GB×2)
SSDMicron Crucial P1 CT1000P1SSD8JP(1TB、PCIe 3.0 x4)
電源ユニットCorsair RM750 CP-9020195-JP(750W、80 PLUS Gold)
CPUクーラーサイズ MUGEN5 Rev.B(サイドフロー、120mm角×2)

 4800Uは、発熱の目安となるTDPが10~25Wに設定されているAPUで、13~15型のモバイルノートやホームノートPCに搭載されることが多い。5900HXと同じ8コア16スレッド対応ではあるが、動作クロックは低く抑えられているため、厳密には同じカテゴリの比較とは言えない。

 それでも前回の検証ではかなり高い性能を示した4800Uの結果を、EliteMini HX90が搭載する5900HXがどの程度上回ってくるかが見所になるだろう。

 Ryzen 5 5600Gの自作PCとの比較は、ビデオカードを搭載しない一般的なデスクトップPCとの比較ではどのくらいの位置付けになるのかの目安となる。Ryzen 5 5600Gは6コア12スレッド対応だが、デスクトップPC向けのAPUなので動作クロックが高く、コア数やスレッド数を必要としない処理では比較的有利だ。

【表3】PCMark 10 Extended 2.1.2523のベンチマーク結果
MINISFORUM
EliteMini HX90
MINISFORUM
EliteMini HM80
Ryzen 5 5600G搭載自作PC
PCMark 10 Extended score5,2964,3735,365
Essentials10,5108,83110,622
App Start-up score14,07510,65914,577
Video Conferencing score8,7577,9928,824
Web Browsing score9,4198,0869,319
Productivity9,7777,91810,126
Spreadsheets score12,4789,72212,346
Writing score7,6546,4168,306
Digital Content Creation7,0885,4436,743
Photo Editing score10,2807,9519,879
Rendering and Visualization score7,1325,6006,386
Video Editting score4,8573,6234,861
Gaming2,9212,5983,089
Graphics score3,8043,4134,050
Physics score23,69116,27822,021
Combined score1,2941,0881,284

 一般的なアプリの操作感をScoreとして計測できる「PCMark 10」の総合Scoreを比較してみると、EliteMini HM80に比べ、EliteMini HX90は約21%高いScoreを示した。CPUコアの進化と合わせ、EliteMini HM80が搭載するRyzen 7 4800Uと比べると動作クロックが高めであることも強く影響しているのだろう。そのほかのテスト項目でも、総じて同様の結果になっている。

 5600Gを搭載する自作PCとの比較では、ほぼ同じ数値となった。一般的なアプリを利用する作業では、5600GクラスのAPUを搭載するデスクトップPCと比べても遜色のない性能を引き出せることが分かる。

【表4】3DMark v2.20.7250のベンチマーク結果
MINISFORUM
EliteMini HX90
MINISFORUM
EliteMini HM80
Ryzen 5 5600G搭載自作PC
Time Spy1,4641,2741,449
Fire Strike3,5323,1363,794
Night Raid16,11313,65316,428

 3Dグラフィックスの描画性能を計測できる「3DMark」では、いずれのテストでも5900HXが4800Uに比べて優れており、その差は12~18%となった。内蔵されているグラフィックス性能も若干向上しているようだ。4600Gとの比較では、概ね同じ水準と考えてよい。

 CPU性能を強く反映するCinebenchとTMPGEnc Video Mastering Works 7では、CPUコアの改善とともに動作クロックの違いが、性能に大きく反映されている。またこれらのテストはコア数やスレッド数の影響が大きいため、4900HXが5600Gすら大きく突き放す結果を出しているものもある。

【表5】Cinebenchのベンチマーク結果
MINISFORUM
EliteMini HX90
MINISFORUM
EliteMini HM80
Ryzen 5 5600G搭載自作PC
Cinebench R23.0
CPU11340 pts9395 pts10779 pts
CPU(Single Core)1502 pts1245 pts1429 pts
Cinebench R20.0
CPU5341 pts3635 pts4185 pts
CPU(Single Core)588 pts484 pts554 pts
Cinebench R15.0
CPU2274 cb1639 cb1795 cb
CPU(Single Core)246 cb187 cb234 cb
【表6】TMPGEnc Video Mastering Works 7のベンチマーク結果
MINISFORUM
EliteMini HX90
MINISFORUM
EliteMini HM80
Ryzen 5 5600G搭載自作PC
H.264/AVC1:442:222:14
H.264/AVC(Video Coding Engine有効)0:330:470:40
H.265/HEVC3:335:163:45
H265/HEVC(Video Coding Engine有効)0:320:490:34

※解像度1,920×1,080ドットでbitレート15~16Mbps、約3分の動画を、H264/AVCとH.265/HEVC形式で圧縮、パラメータは標準のまま変更なし

 総じて軽作業中心なら、5600G相当と考えてよさそうだ。またコア数やスレッド数を100%活用し、CPUの処理性能を限界まで絞り出すような作業では、5600Gを大きく上回る性能を発揮する場面もある。もちろん4800Uとの比較では段違いの性能であり、本機もまた小型PCの枠に留まらない可能性を示した。

 ただし高負荷時の消費電力はやや高めだった。EliteMini HX90に付属するACアダプタは19Vで6.3Aまで出力できるタイプで、最大出力は約120W。アイドル時は4.9Wと低いが、Cinebench R23を実行している最中の消費電力は99~100W。一方で4800Uを搭載するEliteMini HM80の消費電力は50~51Wだ。

右はEliteMini HX90の付属ACアダプタで、出力は120W。65W 出力対応のEliteMini HM80付属のACアダプタと比べると、かなり大きい

 これは、消費電力や発熱の目安となるTDPの違いが反映された結果だ。消費電力は約半分なのに、5900HXに迫る性能を示すことを考えると、省電力性については4800Uに優位性があると言ってもいいだろう。ちなみに5600Gだと110~112Wであり、5900HXは消費電力でもデスクトップPCに近いことが分かる。

 最後にストレージ性能を測るベンチマークとして、Crystal Disk Mark 8.0.2の結果を載せておく。EliteMini HX90とEliteMini HM80はほぼ同等の性能を発揮しているのが分かる。PCIe 3.0 x4接続のSSDとしては十分な速度だろう。

【表6】Crystal Disk Mark 8.0.2のベンチマーク結果
MINISFORUM
EliteMini HX90
MINISFORUM
EliteMini HM80
Ryzen 5 5600G搭載自作PC
Q8T1 シーケンシャルリード2541.49 MB/s2537.72 MB/s1877.23 MB/s
Q8T1 シーケンシャルライト1275.09 MB/s1266.06 MB/s1701.47 MB/s
Q1T1 シーケンシャルリード1754.31 MB/s1744.62 MB/s1524.04 MB/s
Q1T1 シーケンシャルライト1252.85 MB/s1230.48 MB/s561.32 MB/s
Q32T16 4Kランダムリード556.5 MB/s500.18 MB/s558.3 MB/s
Q32T16 4K ランダムライト408.79 MB/s380.98 MB/s422.14 MB/s
Q1T1 4Kランダムリード52.58 MB/s59.02 MB/s50.99 MB/s
Q1T1 4K ランダムライト169.68 MB/s207.03 MB/s108.14 MB/s

置き場所に困らない高性能なデスクトップPC

 各種ベンチマークテストの結果からも分かる通り、ノートPC向けAPUを搭載する小型PCとは思えない、すさまじい性能を示すEliteMini HX90。ディスプレイ出力端子も充実しており、あらゆる用途で縦横無尽に活躍してくれることは間違いない。

 コンパクトなので、置き場所にも困らない。液晶ディスプレイの下に置いてもいいし、付属のマウンタを利用すれば液晶ディスプレイの裏に設置することも可能だ。2.5Gigabit EthernetやWi-Fi 6にも対応するので、環境を整えればファイルのやり取りも高速に行なえる。

 こうした性能を考えれば、価格もかなり安く感じる。最近は新しい小型PCをレビューするたびに言っているような気もするのだが、本当にスゴイ時代が来たものだ。

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2021-09-05 21:50:00Z
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