Minggu, 10 November 2019

金星という“地獄”のような惑星に、NASAは探査機を送り込む|WIRED.jp - WIRED.jp

地球に最も近い惑星であると同時に、太陽系で最も解明されていない惑星のひとつでもある金星。鉛を溶かすほどの高温や深海のような高気圧、吹き荒れる嵐に硫酸の厚い雲といった“地獄”を思わせる環境のこの惑星に、NASAが探査機を送り込もうと開発を進めている。

WIRED(US)

Venus

PHOTOGRAPH BY NASA

月のみならず、いずれは火星にも人類を送るという話が出るとき、月や火星以外にも探査に値する惑星があることは忘れられがちだ。しかし、米航空宇宙局(NASA)の研究チームは、人類を送る惑星として金星に照準を定めた。金星は地球に最も近い惑星であると同時に、太陽系で最も解明されていない惑星でもある。

ソ連の探査機が1966年、金星に最初の着陸(衝突による不時着)をなしとげて以来、宇宙船が金星の地表の環境に耐えたのは計数時間にすぎない。だが、NASAが開発した新たな探査機は、最長で60日間は金星の過酷な地表で耐えられるように設計されている。その探査機「Long-Lived In-Situ Solar System Explorer(LLISSE)」の部品は、どれも地獄のような環境の惑星、すなわち金星の特徴である高温、高圧、反応性雰囲気に耐えられるように特別につくられている。

金星が地球の“悪魔の双子”と呼ばれるのは言いえて妙だ。ふたつの惑星は質量も大きさもほぼ等しいため、科学者たちは金星がかつては水の豊富な天国のような惑星で、原初の生物が存在していた可能性があると考えている。

まるで“地獄”のような金星の環境

ところが現在、金星の表面はまさしく地獄の様相を呈している。気温は鉛の塊をどろどろに溶かしてしまうほど高く、気圧は水深900mの深海と同じくらい高い。さらにはトルネード級のすさまじい強風が高速で金星を循環し、日中は硫酸の厚い雲が太陽を隠す。ひとたび夜になると、地球の時間で100日以上も続く。

現時点での通説によると、かつて金星には液体の水に満ちた広くて浅い海があったが、太陽が海水を沸騰させてしまった。海が蒸発し、水素が宇宙に放出され、二酸化炭素を多く含む大気が温室効果ガスの排出を促し、金星はわたしたちがいま見ている通りの地獄のような景観になったのだ。

金星には厚い大気があるので、宇宙船が金星の軌道を周回したり、金星のそばを飛行したりすることによって収集しうる情報量は限られている。地球の近くの惑星で起こっていることを知るためには、科学者たちは金星の表面に着陸しなければならないのだ。

そこでNASAは、金星の探査に新たな発想で乗り出すことにした。その中心人物は、オハイオ州にあるNASAのグレン研究センターで宇宙科学計画室(SSPO)を率いるティボー・クレミックである。

NASAが火星に着陸させたローヴァーがクルマほどの大きさであるのとは対照的に、LLISSEは小型だ。というのも、地球の隣の惑星に向かう宇宙船に乗せてもらわなくてはならないからである。LLISSEは1辺が10インチ(約25cm)に満たない立方体で、金星の大気から地質まですべてを調査するための複数の機器が詰め込まれている。

探査機づくりは難問だらけ

LLISSEを金星の過酷な環境に耐えうるようにするのは、苦労が多い作業だ。金星の大気には大量の二酸化炭素と微量の硫黄が含まれているので、通常の電子部品だとその上にすぐに水晶ができてしまう。

そこでクレミックとLLISSEチームは、紙やすりや人工ダイヤモンドに使われる合成素材、炭化ケイ素を用いて硬いチップを設計、作成した。探査機のすべてのセンサーもこのチップと同様に硬くなければならない。

もちろんLLISSEの大きさに制限があるからといって、ほかの宇宙船に搭載されている道具、例えばカメラを運べないわけではない。「LLISSEにカメラを搭載する方法があれば必ず試してみますが、そのカメラは小型になるでしょう」とクレミックは話す。

クレミックいわく最大の難問は、60日間も探査機に動力を与える方法を見つけることだ。深宇宙に向かう多くのミッションでは小型原子炉によって動力を生み出しているが、LLISSEではミサイルに搭載されているものと同種の加熱によって活性化される熱電池を使用する。この電池がすぐに切れないように消費電力を制限することが、目下の工学的な課題である。

クレミックのチームは探査機の部品を組み立てる際に、金星の環境を正確に再現した室内に各部品を2カ月も入れて入念にテストする。探査機を長もちさせて、金星の夜から昼への移行を観測できるようにするのが狙いという。

金星の1日は地球の約4カ月に相当する。金星の1日の遅い時間帯に着陸するなら、探査機のバッテリーは夜から昼への移行を確認するうえで必要な分はもつと、クレミックらは考えている。「金星の環境が昼から夜にかけてどう変わるのか、まったくデータがありません。可能な限り多くのデータを収集しようとしているところです」とクレミックは言う。

ミッション延期でも飛行は実現するか

クレミックによると、LLISSEはロシア連邦宇宙局とNASAの共同プログラム「ヴェネラ-D」のミッションに向けて開発中である。このミッションには金星の周回衛星のほか、大型で長もちしない探査機、小型で長もちする探査機が含まれることになっている。ロシア側が周回衛星や大型の探査機を、NASAが長期間持続する探査機をつくる。

ただし、ヴェネラ-Dのミッションは先行きが不透明だ。当初の目標としていた発射時期は2013年だったが、2026年以降に延期されている。

米国とロシア共同のヴェネラ-Dチームは今年1月、フェイズ2のレポートを公表した。それは長期間耐久する探査機が金星で作動する仕組みの詳細についての報告書だ。10月初めのロシアでのワークショップでは、金星で着陸できる可能性のある場所に関して検討がなされた。

2023年にはLLISSEの製造およびテストが完了すると、クレミックは言う。その時点までこのプロジェクトを進めるとNASAが決定すれば、この探査機は実際の飛行に使う部品を搭載してつくり直されることになる。

とはいえ、歴史上最も耐久性のある宇宙探査機が飛行する保証はない。それでも惑星科学者たちは、金星の表面で長期間探査する宇宙船を送ることが願い事リストのトップにあることを明らかにしている。そしていま、わたしたちはその願いをかなえる技術をとうとう手に入れたのである。

※『WIRED』による宇宙関連の記事はこちら

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https://wired.jp/2019/11/10/nasa-wants-to-send-a-probe-to-the-hellish-surface-of-venus/

2019-11-10 08:00:00Z
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