Kamis, 14 Mei 2020

物理学の最大の謎を解く装置たち - GIZMODO JAPAN

時空が織りなす宇宙のタペストリー。どんな法則にしたがって紡がれているのか、まだ見ぬダークマターとはどのようなものなのか。

物理学は、わたしたちの宇宙の根本的な原理を解き明かし、その姿を見せてくれます。

「物理学」と聞くと、マッドサイエンティストがぽつんと黒板に向かって数式を展開しているイメージがありますが、現代における物理学上の発見はむしろ大がかりな装置を使った大勢の科学者たちによる共同作業の賜物。スケールの大きい、何十億円もの費用がかかる実験装置が、宇宙の謎を解き明かすべく世界中の僻地に点在しています。

過去100年間の物理学の進展はめざましいものでした。びっくりするほど多くの謎を解いてきたと同時に、同じぐらい多くの謎を生み出してきました。そして、数々のブレークスルーの中でも特筆すべきは素粒子物理学の発展です。

ヒッグス粒子の発見から約8年

わたしたちが知っているかぎりのすべての物質は素粒子という極小の粒からできていて、素粒子物理学の標準モデルという理論によって大体のことを説明できます。標準モデルは素粒子をクォークかレプトン(電子やニュートリノなど)に分けています。そして素粒子すべてには質量は同じだけど逆の電荷を持つ、鏡像みたいな反粒子が存在している、ということになっています。

これら素粒子や反粒子は「ボソン(ボース粒子)」に媒介される力によって相互作用しています。ヒッグス粒子はどこかで聞いたことがあるかもしれませんが、これもボソンの一種。素粒子に質量を与えると考えられています。ヒッグス粒子の存在は素粒子物理学の標準モデルによって提唱されていたものの、長きにわたって観測されずじまいでした。

それが、ついに2012年、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)がヒッグス粒子の存在を確認したのです。素粒子物理学の分野に大きな勝利をもたらしたこの大発見は、LHCのような巨額の研究費が注ぎ込まれているプロジェクトの意義が認められた瞬間でもありました。しかし、それ以降、様々な興味深い実験が世界中で行なわれているのにもかかわらず、ヒッグス粒子の発見に匹敵するほど大きな発見はありません。

まだまだ、宇宙は謎だらけです。標準モデルの限界もあって、宇宙がどのように始まったのかはまだ解き明かされていません。現在の宇宙になぜ反物質よりも物質のほうが多いのかも、ダークマターの存在も、まだ謎に包まれたままです。宇宙の膨張がなぜ加速しているのか(ダークエネルギーのせいではないかと言われているのですが)も解明されていません。

これらの宇宙の根本的な謎を解き明かすために、物理学者たちはスケールが大きすぎて気が遠くなりそうな装置を作り出してきました。以下、世界有数の装置とともに最先端の物理学実験をご紹介していきます。

大型ハドロン衝突型加速器(LHC)

Photo: Claudia Marcelloni/CERN via Gizmodo US
LHCの実験装置のひとつ、ATLAS検出器を上から見たところ。

世界一パワフルな陽子衝突マシン、ラージ・ハドロン・コライダー(LHC)。

スイス・ジュネーブ郊外にある欧州原子核研究機構(CERN)の地下に、フランスとの国境をまたいで全周約27キロにおよぶ二連の交差するトンネルが設置されています。

LHCは線形加速器やシンクロトロンであらかじめ加速された陽子(または原子核まるごと)を受け取って、超伝導電磁石とRF空洞によってさらに加速させてから、陽子と陽子を正面衝突させます。上の画像のATLAS検出器は二本の陽子ビームが衝突する場所のひとつ。ATLAS検出器自体が建物ぐらいの大きさです。

最近のLHCの研究では、B中間子(Bメソン)と呼ばれる粒子の挙動が標準モデルの予測と矛盾していることを突き止めています。

XENON1T(キセノン1トン)実験

Photo: The XENON Experiment via Gizmodo US
地下深くに設置されているXENON1Tの実験装置。左が水タンク、みぎが三階建てのメンテナンス用ビル。下方に写る人影から、装置の巨大さがわかる。

見ることも、触れることもできないダークマターを求めて、物理学者たちは地下深くまでもぐってXENON1T(キセノン1トン)のような実験を試みています。

その名のとおり、「XENON1T」とは1トン分の液体キセノンが入ったタンクを使ってダークマターを検知しようというもの。地下深くに建設したのは、感度の高いセンサーを放射線などのノイズから隔離するためです。ダークマターの有力候補とされているWIMP(Weakly Interacting Massive Particle)がキセノンの原子核にぶつかったときに発するであろう小さな光を、ただひたすら待ち構えています。

XENON1Tやほかの類似した実験からは、残念ながらまだダークマターのしっぽをつかめていません。それでも、いくつか可能性として挙げられていた仮説を排除することには成功しています。XENON1Tは今後XENONnTへと変貌を遂げ、8トン分の液体キセノンへとさらにスケールアップする予定です。

アルファ磁気分光器

Photo: NASA via Gizmodo US
スペースシャトルのエンデバー号に搭載されたアルファ磁気分光器。

地上で見つからないなら、宇宙から。

2011年にローンチされたアルファ磁気分光器は、国際宇宙ステーションから高エネルギー粒子を観測し続けています。宇宙で現在進行中の実験としては珍しく、電子よりもその反物質である陽電子を多く観測したほか、中国の衛星「悟空」が観測した高エネルギー粒子の妙な減少効果も観測しており、今後さらなる活動を経てダークマターの正体をつかめるかもと期待されています。

スーパーカミオカンデ

Photo: The Institute for Cosmic Ray Research of the University of Tokyo via Gizmodo US
スーパーカミオカンデの内部を点検する研究者たち。

ニュートリノとはなんともふしぎな素粒子で、ほかの物質とほとんど干渉せずに透過してしまう性質を持っているだけに、科学者たちは検出を試みて様々な実験装置を開発してきました。

スーパーカミオカンデは、言ってしまえば5万トンの純水をたたえた大きな器。岐阜県飛騨市神岡町にある池ノ山のふもとに位置しており、ニュートリノが水と反応した時に発する微弱な光を感知するための1万1000本の光電子増倍管がタンクの内壁にびっしりと敷き詰められています。

ほかの巨大な容器のような実験装置と同じように、狙いをつけた素粒子が飛んでくるのをただ待ちます。スーパーカミオカンデの場合は、太陽、または深宇宙から飛んでくるニュートリノ、それか295キロメートル離れた大強度陽子加速器施設(J-PARC)から打ち込まれるニュートリノビームを検知するのに長けています。

スーパーカミオカンデは「ニュートリノ振動現象」を初めて観測した功績が挙げられるほか、最近では95%の信頼度でニュートリノと反ニュートリノのCP対称性の破れを示唆して世界中で大ニュースになりました。もしこれが100%証明できたら、なぜ宇宙には反物質よりも物質のほうが多いのかを説明する足がかりとなります。

アイスキューブ・ニュートリノ観測所

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Photo: Felipe Pedreros, IceCube/NSF via Gizmodo US
南極のアムンゼン・スコット基地にあるアイスキューブ・ニュートリノ観測所。

ニュートリノを検知するために作られた大型装置はいろいろありますが、デザインが大幅に異なります。なかでも一番ショッキングなのは、南極にあるアイスキューブ ・ニュートリノ観測所でしょう。

デザイン、という点ではスーパーカミオカンデと基本的に同じなのですが、こちらは凍っています。凍てついた南極の土壌を約1,400〜2,400メートル掘り下げて、その穴に86本の「ストリング」と呼ばれる線状に並んだ60個の光電子検知器を垂らしてニュートリノを探す、というしくみになっています。稀にニュートリノが南極の氷にぶつかった場合に反応してできる電子、または陽電子によるリング状の微弱光を観測しています。

極寒の地で運営していくには維持費がハンパないことが想像できますが、アイスキューブはすでに深宇宙から飛来してきたニュートリノの観測に何度も成功しており、また最近では地球に降り注ぐ高エネルギー宇宙線の出所を探り当てているとのことで、なかなか活躍しているようです。

ミューオンg-2

Photo: Reidar Hahn (Fermilab) via Gizmodo US
ミューオンg-2実験に使われる巨大な磁石。

素粒子物理学の標準モデルを使って多くのことを説明できるものの、宇宙で観測するすべての事柄が解けるわけではありません。ですから、物理学者は常に標準モデルが間違っていることを証明しようとしています

アメリカ・イリノイ州にあるフェルミラボで行なわれているミューオンg-2実験は、そんなアンチな活躍を期待されています。予備実験の段階ですでに標準モデルと実際のデータが矛盾するような傾向が出ているそうで、今後の結果がきになるところです。

ミューオン(ミュー粒子)は電子と同じレプトンですが、電子よりも質量を持っています。ミューオンの「g因子」(ざっくりいえば外部磁場でのふるまいをあらわす数値)は2に近いと言われています。そこで、ブルックヘブン国立研究所の科学者は巨大なリング状の磁石を建設し、ミューオンを通過させてみました。

すると、2であるはずのミューオンのg因子から2を引いた数値が、標準モデルが予測する数値と微妙に異なることがわかったそうです。いま、ブルックヘブンの研究者とフェルミラボとのさらなる共同研究が進められており、さらにたくさんのミューオンで試しているそうです。最新のg-2数値は、もうすぐ発表される予定です。

ヴェラ・ルービン天文台

Photo: LSST Project/NSF/AURA via Gizmodo US
チリで建設中のヴェラ・ルービン天文台。

宇宙は膨張しており、膨張するスピードも加速しています。加速させているのはダークエネルギーという得体の知れないものだと考えられています。天文学者の計算によれば、ダークエネルギーはこの宇宙のエネルギーと物質のうち66%をも占めているらしいものの、その実体はいまだ明らかにされていません。

もうすぐ完成するヴェラ・ルービン天文台(大型シノプティック・サーベイ望遠鏡:Large Synoptic Survey Telescopeとも) は、数日間に一回の頻度で全天球の半分を詳細にマッピングすることが可能。マップを重ねていけば、いずれ宇宙のコマ撮り映画が完成します。これを頼りに、天文学者たちはダークエネルギーがもたらしている影響を視覚的に確認できるし、宇宙がこれからどのように変化していくのかも予測できるようになるかもしれません。ヴェラ・ルービン天文台は2023年に本格始動する予定です。

LIGO(レーザー干渉計重力波観測所)

Photo: Umptanum (Wikimedia Commons) via Gizmodo US
米ワシントン州にあるLIGO観測所のノーザンレッグ。

2016年。ふたつのブラックホールが衝突した結果、その衝撃が波のようにうねりながら光速で時空を駆けていく現象が初めて観測されました。アインシュタインが1916年に予言した重力波の直接観測でした。

初めて重力波を捉えた実験装置こそがLIGOです。全長4kmのトンネル2本がL字型に構成されており、レーザーが分割されて同時に2本のトンネルに打ち込まれ、また一緒になった時に生じたひずみを干渉計で図ります。宇宙からの重力波が通過すると、レーザービームがお互いの波長に同調したりしなかったりするので、そのパターンから重力波の波形を読みとっていきます。

アメリカにあるふたつのLIGO観測所に加えて、イタリアのVirgo観測所でも重力波を計測し続けており、中性子星が衝突した際には重力波と共に閃光も確認されたそうです。これらの観測が蓄積されていけば、将来的には宇宙の膨張のスピードや、もしかしたらダークマターの真の姿も解明されるかもしれません。

イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)

Photo: NRAQ/AUI/NSF via Gizmodo US
パラボラアンテナ66台を結合したアルマ望遠鏡の中心部。EHTにおいて重要な役割を果たした。

宇宙に無数に存在する天体の中でも、ブラックホールほどわたしたちを魅了するものはありません。理解の限界を超えているだけではありません。あまりにも極端な重力のせいで、一般相対性理論の限界をも超え、小規模な量子力が作用してくる場所でもあります。

望遠鏡は口径が大きければ大きいほど宇宙の遠くまで見ることができます。そこで、ブラックホールを見るために世界の8ヶ所に点在する観測所を「干渉計」という仕組みでつなげて、地球をまるっとひとつの巨大な望遠鏡に仕立て上げたのがイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)。そしてそのEHTが人類に初めて見せてくれたのが、ブラックホールの姿ーー正確にはM87銀河の中心にあるブラックホールが作りだした影の姿でした。

EHTの活躍はまだまだ続きます。今後は銀河系の中心に存在しているブラックホールの画像、もしかしたら動画さえも見れるようになるかもしれません。

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2020-05-14 22:01:18Z
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