「Xbox Series X」発表の際,そのネーミングになんとなく違和感を覚えたゲーマーは少なくなかったように思う。しかし,この次世代コンシューマ機に複数の「シリーズ」があると考えるなら納得もいく。Microsoftが隠し玉の1つにしているという「Xbox Series S」の噂が最近,あちこちから聞こえてくるが,今週は,そんな廉価版次世代機の存在と,そこから垣間見える欧米ゲーム市場の現状を合わせて紹介してみたい。
で,「Xbox Series S」って何?
2020年11月の発売がアナウンスされたMicrosoftの「Xbox Series X」だが,この次世代コンシューマ機に「弟分が存在しているらしい」と聞いたことはあるだろうか? 正式名称が発表される前,まだ「Project Scarlett」というコードネームで呼ばれていた頃,ゲームデベロッパに送られた次世代Xboxの「開発の参考にすべきスペック」がリークするという出来事があった。スペックは1つでなく2つあり,それぞれ「Anaconda」と「Lockhart」という別のコードネームで呼ばれていたのだが,そのうちの「Anaconda」のスペックが,後に正式発表された「Xbox Series X」とほぼ同じだったため,情報の信憑性が高くなり,必然的に「Lockhart」にも注目が集まるようになったのだ。
8月9日頃から複数のネットユーザーが,「Xbox Series Xのコントローラを入手した」という書き込みと共に真偽不明の写真をアップし始めた。そのパッケージには対応機種として「Xbox Series X|S」と記されており,これらのことから,「Lockhart」の正式名称が「Xbox Series S」になるのではないかと囁かれ始めたのだ。MicrosoftのXbox部門を率いるフィル・スペンサー(Phil Spencer)氏は以前,「単にXboxというブランド名で呼んでほしい」と語っていた。その意味するところは当時よく分からなかったのだが,もし複数のシリーズが予定されているとすれば,うなずける発言だ。
さて,ここで「Xbox Series S」の噂をまとめてみよう。まずCPU/GPUだが,AMDのZen 2とRDNA 2アーキテクチャをベースにしたカスタムプロセッサで12テラフロップスの処理速度を叩き出す「Xbox Series X」に対して,「Xbox Series S」は詳細不明ながらも4テラフロップス程度に留まるとされている。これは,現行の「Xbox One X」の6テラフロップスよりも低い数字で,レイトレーシングについてもサポートはするものの,4K解像度ではなく,1440p/60fpsに固定されるようだ。メモリは,「Xbox Series X」のDDR6 16GBをダウングレードしたDDR6 10GBで,「Xbox Velocityアーキテクチャ」をサポートしたSSDは搭載されるが,Blu-rayドライブの付かないダウンロード専用機になるとされている。
繰り返すが,以上は噂話で,記事執筆時点での正式発表は行われておらず,「Xbox Series X」と同時に発売されるかどうかも分からない。それでも“Series S”というモデル名は,いかにもありそうで,ダウンロードオンリーで,例えば「Minecraft」や「Fortnite」といった特定の人気タイトルしかプレイしない層をターゲットにした,価格を抑えたハードウェアという意味合いも理解しやすい。
次世代コンシューマ機はオーバースペック?
参考程度の情報なのだが,北米のテレビ購入動向のデータを見ると,4Kテレビの一般家庭への普及率は2020年内に50%に達するとされており,世界全体では3分の1に及ぶという。スポーツイベントやNetflixのドラマ,YouTubeに投稿される映像などで4Kコンテンツを楽しめる機会は確かに増えているものの,その一方,従来型のテレビが今後も主流にあり続けるという見方も根強い。
次世代コンシューマ機の最新ゲームを最適な環境で遊ぼうと思えば,HDMI2.1に対応した最新の4Kテレビに加えて,画面から「適性距離」を確保できる部屋など,かなりの出費を覚悟しなければならない。すでに万全の用意をして待っている人もいるだろうが,「Xbox Series S」があれば,4Kテレビを所有しない層でも最新のゲームが遊べるわけだ。
言うまでもないが,「Xbox Series X」や「PlayStation 5」が4Kテレビ専用というわけではなく,グラフィックス以外の,例えばロード時間の短縮といった新機能の恩恵を受けた最新のゲームでも普通のテレビで十分に満喫できる。HDMI 2.1も現行のHDMI2.0bと互換性があるので,古いモデルの4Kテレビでも(リフレッシュレートの上限は60hzになるだろうが),普通にプレイはできる。
しかし,現在,表舞台に出ている次世代コンシューマ機は,数年後の未来をターゲットにした,ややオーバースペックなデバイスであることは間違いないだろう。プラットフォームホルダーが先を見据えた設計を行うのはきわめて当然のことだが,ここに,削れる部分をすべて削り落とした廉価な「Xbox Series S」の存在価値はあると思える。北米経済の停滞から,安価な新型コンシューマ機に対する需要はさらに高まってくるはずだ。実在するかどうかも分からない「Xbox Series S」ではあるが,もし登場すればダークホース的なヒット商品になるかもしれない。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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2020-08-30 15:00:00Z
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