「EOS R5」である。キヤノンのミラーレス一眼主力機、というより「新世代の主力EOS」といっちゃっていいと思う。1週間ほどしか使ってないけれども、予想以上の完成度で現代のカメラとしてめちゃ魅力的だったのだ。
初代「EOS R」は、「主力EOS」というよりは「傍流EOS」「カジュアルEOS」という感じで、一眼レフEOSを置き換えようという迫力は感じなかった。でも「EOS R5」はそれとは全然違う、ガチで置き換えにきた感がある。
グリップ感や操作感もすごくしっかりしてるし、カメラとしての完成度に加えて、ミラーレス一眼ならではの良さをきっちり取り入れてきてるのである。一気にここまで完成度を上げてきたか、とちょっと驚いたくらいだ。
やっぱりボディ内手ブレ補正は素晴らしい
とりあえず基本的なところからざっくりいくと、イメージセンサーは新開発のデュアルピクセルCMOSセンサーで4500万画素。映像エンジンは新バージョンの「DIGIC X」。これらとRFレンズとの組み合わせで、「EOS最高解像性能」らしい(つまり、約5000万画素のEOS 5Dsより解像性能は上ということだ)。
いつものガスタンク作例だけど、確かに解像感は高い。
もちろんRFマウント。電源をオフにしたときはシャッターが閉まるというEOS Rと同じ仕様だ(設定で閉まらないようにもできる)。
センサー周りで注目はなんといってもボディ内手ブレ補正。レンズ内手ブレ補正と合わせて最高で8段分というのだからかなりすごい数字を出してきたもんだと思う。
ではボディ内手ブレ補正だけだと何段分なのか、となるとこれがちょっとややこしい。レンズによって手ブレ補正段数が変わるからだ。例えばハイエンド標準ズームといえる「RF24-105mm F4 L」だと8段。でも「RF15-35mm F2.8L」だと7段。高倍率ズームの「RF24-240mm F4-6.3」だと6.5段と差がある。レンズの詳細はWebサイトにあるので気になる人は要チェックである。
で、実際に撮ってみると確かによく“止まる”。これは快適。
暗い古民家に昔のキャッシュレジスターが置いてあったので105mmの望遠で撮ったものがこちら。少しずつセッティングを変えながら撮ってみたところ、シャッタースピードは1/15秒で止まった。これより遅くするとちょっと微妙だ。
暗所でのAFはすこぶる優秀で(これはEOS Rから優秀だった)、手ブレ補正も効くなると素晴らしい。
ただ、広角でもシャッタースピード1秒となると手持ちだと難しい感じ。手ブレの特性は諸条件で変わってくるわけで、テスト条件では8段分補正が効くからといって実際の現場で常にそれが発揮できるとは限らないのだ。だから数字の大きさにとらわれず、もうちょっと大雑把(おおざっぱ)に捉えた方がいい。
個人的な感覚では、業界でトップとまではいかないけど、広角で1/2秒ならいけそうだ。
ISO1000まで上げたけど、夜の街をF11まで絞って手持ちで撮れるわけでこれは良い。
なお、シャッターは電子先幕を使用。
メカシャッター・電子先幕・電子シャッターの3つから選べ、デフォルトは「電子先幕」だ。なお、電子シャッター時もシャッタースピードの上限は1/8000秒。電子シャッターにしてもシャッタースピードを上げられるわけじゃない。
ISO感度は拡張ISO感度でISO102400までいける。
実際にはどうなのか常用ISO感度の最高値、ISO51200でうちの猫を撮ってみた。
室内でおもちゃで遊んでる猫を高速シャッターで撮るというミッション。ISO51200までめいっぱい上げて室内で1/1000秒である。
見事。クオリティー重視ならISO6400までかなあと思うけど、こういうカットならISO51200でもいける。
ちなみに、左手で孫の手をひらひらさせて猫の気を引きながら右手でカメラを握って撮ってる。AFは完全にカメラ任せだ。
AFの設定は「サーボAF」で、「瞳AF」は「動物優先」だ。つまりコンティニアスAFで猫の目にフォーカスを合わせつつ撮れるのでこちらは構図とタイミングだけ見てればいいのである。
このAFは素晴らしいぞ。
とうとうキヤノンも「動物AF」に対応
というわけでAFの話である。
とうとうキヤノンも「動物AF」に対応したのだ。それも実用レベルが超高い。
顔検出や瞳検出は従来通りAFモードを「顔検出+自動追尾AF」にしたときのみオンになる。そして顔検出の検出する被写体として「人物/動物優先/優先なし」の3つから選べるのだ。
ちなみに「動物優先」にすると人と動物の両方があるとき動物を優先するというだけで、人物もちゃんと捉えてくれるので普段はこれで大丈夫かと思う。
そうすると人間も猫も犬も鳥(!)も、瞳が見えていれば瞳を、そうじゃなければ顔を、そうじゃなければ全体を見つけてくれるのだ。
さらに、複数の候補があるときはスティックを左右に動かせばいい。
さらに動物。先ほどのうちの猫は猫瞳AFで捉えたものだ。
こちらもうちの猫。15-35mm F2.8で狙ってみた。
時には瞳ではなく、まぶたにフォーカスが来ることもあったが、このあたりはどんどん精度も上がっていくだろう。
さらに、犬と猫に加えて鳥もOKというのはすごい。
というわけで、600mm F11の新しく発売されるお手軽超望遠レンズで鳥を撮ってみた。
このように伸ばして使う沈胴式である。
なお注意事項として、このレンズ(同時に発売される800mmもそうだが)に限っては、ボディ内手ブレ補正が効かずレンズ側のみとなる。もともと手ブレしやすい焦点距離なだけにシャッタースピードには注意すること。
で、地面をとことこあるいてるムクドリ(たぶん、ムクドリの幼鳥。間違ってたらすまん)を狙ってみたら、これだけ小さいのにちゃんと「瞳を認識」したではないか。
わたしは「顔検出+自動追尾」で「サーボAF」にしただけで他は何もしてない。ただシャッターを切っただけである。でも手前の草でも背景でもなく、鳥にフォーカスが来てる。
素晴らしい。これは人間が堕落するAFだわ。
実際に鳥を追いつつ画面を撮影するのは難しかったので、うちにあるフィギュアで試してみたところ、このようにちゃんと目を捕まえてくれた。
ついでにこの600mmで撮ったハスの花もどうぞ。
F11固定なので昼間でもISO感度はあがっちゃうけど、このコンパクトさと軽さで600mmを楽しめるのは素晴らしいし、F11でも難なくAFが効くのも楽しい。ちなみにこれにテレコンを付けたF22でもAFが効くそうである。
EOS R5のオートAFはけっこう賢くて高い確率で撮りたい被写体に合ってくれるが、撮影者の意図と合わないことも当然ある。
そういうときは、タッチAFを使って被写体を指定するか、レバーをクリックする(そうすると中央にAFポイントがきて追尾AFが始まる)のでそれを使うと素早く変更できる。顔検出と追尾AFが必ずセットになるのはどうかと思うけれども。
連写は電子シャッターで秒20コマ(もちろんAF/AE追従)。
使い勝手はEOSの操作系にミラーレス機のテイストを加えた感じ
続いて操作系の話。
初代EOS Rやその後のRPと比べるとすごくEOSである。背面を見ると、EOSの象徴ともいえるサブ電子ダイヤルがあるし、マルチコントローラーは親指を持って行きやすい、良い位置にある。AFスタートボタンと並んでるという配置がいい。
EOSはこうじゃないとね、と思ってる人いっぱいいると思う。
上面からみると、EOS Rで採用された「MODE」ボタンがある。
ただ、MODEダイヤル周りのサブ電子ダイヤル2のおかげで電子ダイヤルが3つに増えたのでその分使い勝手はあげられそうだ。
撮影モードを静止画と動画で切り替えるときはINFOボタンを押す。
動画は4Kのハイスピード撮影(120fps)や8Kに対応したハイエンド仕様となっている。今回は8K動画を記録できるメディアが手元になかったのでそれについては試せてない。残念。
基本的には一眼レフのEOSを受け継ぎつつ、EOS MやEOS Rのミラーレス機ならではの操作系を加えてきた感じで、EOS R/RPに比べると完成度はぐっと上がってると思う。
バッテリーはファインダーの設定次第。「なめらかさ優先」でフレームレートをあげると約220枚。「省電力優先」にしてエコモードにすると約700枚。かなり違う。
ただ、USB PD電源があればその場で充電できる(USB PD対応じゃないモバイルバッテリーだとダメなので注意)。
使った感じ、ミラーレス機としてはバッテリーの持ちは悪くない(一眼レフと比べてはさすがにダメだけど)。
メディアはCF ExpressとSDカードのデュアルスロットとなっている。
で、このEOS R5だけど、今までEOSを使ってた人なら買い換えに走っちゃっていいんじゃないかと思う。強力なボディ内手ブレ補正といい速くて賢いAFといい、一眼レフより取り回しやすいボディといい実に素晴らしい。EOSユーザーじゃないわたしでも欲しくなるくらい。特に使ってると堕落しそうなAFがたまらんのである。さすがにR5は高い、という人にはR6もあるしね。
(モデル:長谷川実紗)
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2020-08-07 07:29:00Z
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