新型コロナウイルスの流行により、自宅にいる時間が増えてから注目を集めているのが「ゲーム(ビデオゲーム)」です。もともとゲームが好きな人はもちろん、コロナ禍を機に始めたという人も多いのではないでしょうか。
ギズモード編集部にも、結構ヘビーなゲーマーが数人います。最近はどのゲーミングPCを買うか悩んでいる人もいますね。
また別方向で悩んでいる人もいます。それは編集長の尾田。この機会にゲームを始めようと思って数タイトルプレイしてみたものの、あまり長続きしなかったようです。
ゲームが下手なのか…、それとももっと自分にあったゲームがあるのではないだろうか…、そもそも初心者にはどんなゲームがいいんだろうか…。
「そうだ、ゲームの専門家に話を聞いてみよう!」
ということで、ゲーム専門メディア「IGN Japan」の副編集長である今井晋さん(通称「教授」と言われている)にオンラインインタビューしました。ゲーム業界の今、初心者向けのゲームはどんなものか、そのほかゲームにまつわる興味深い話をいろいろお聞きしました。
ゲーム業界全体にポジティブな雰囲気が生まれた
──新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が増えて、ゲームをプレイする人の数が増えた気がします。
今井さん:そうですね。世界的にゲームをする人の数は増えていますね。調査データも出ています。
──コロナ以前に比べ、ゲーム業界全体で大きく変わったところはありますか?
今井さん:ゲーマーと呼ばれている人たちは、一番生活スタイルが変わらないですね(笑)。ただ社会全般の風向きとして、ゲームに対してポジティブに受け取られるようになったのがうれしいというか、大きな変化だと思います。WHO(世界保健機関)が離れていっしょにゲームを遊ぼうという「PlayApartTogether」キャンペーンを始めましたし、ゲーム業界の主要なパブリッシャーやプラットフォーマーもキャンペーンを数多くやっていました。
今まではどちらかというと家から出ないことがネガティブに見られていた面があったのですが、家にいることが非常にポジティブになったのが印象的ですね。
──プレイされているゲームのタイトルに変化はありましたか?
今井さん:これはたまたまなんですが、ちょうどコロナ禍に入るタイミングで任天堂の『あつまれ どうぶつの森』が発売されました。この機会にゲームにはまった人にとっては、すごくまったりできるゲームですし、友達などとコミュニケーションができるのもよかったんじゃないでしょうか。
以前からのゲーマーにとっては、家でゲームをするのが日常なので、あまりプレイするゲームなどは変わっていないと思います。どちらかというと、周りが変わったという印象が強いですね。単純にゲームをやる人が増えただけではなくて、ライフスタイルとしてみんながゲーマー寄りになってきました。
オンラインでのコミュニケーションはゲーマーが一歩先を行っていた
今井さん:Zoomなどを使ってビデオ会話をすることが流行ってますけれども、ゲーマーのなかではゲーマー向けに作られた「Discord」というコミュニケーションツールがとても普及しています。これはゲーマー向けに作られたものなんですよ。だからゲーマーはかなり以前から使っていたんですが、一般の方がDiscordを使ってチャットや会話をすることも増えたり、これを機にDiscordが一般の方向けにプロモーションを始めたりしています。
「Zoom飲み」なんて言葉も聞くようになりましたが、MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game、多人数が同時参加してプレイするオンラインRPG)をプレイしている人などは、10年前20年前からそういうことをしてきていたので、ゲーマー的には「なんか最近始めた人もいるみたいね」という印象です。
──ゲームコミュニティのほうが一歩先の未来を行っていたわけですね。
今井さん:この点に関しては完全に進んでいたと言っていいですね。オンライン経由で遠隔地とコミュニケーションをすることや、それにまつわるテクノロジーに関しては長けていると思います。コロナ禍の影響で、オンラインでコミュニケーションをすることが増えたし、リアルで会うことも減ってきて、ゲーマーとしては生きやすい世の中になっています。これからもずっとゲーマーフレンドリーな社会になってくれればいいなと思いますね(笑)。
──『リングフィットアドベンチャー』のような、室内で身体を動かすゲームが流行っていますね。
今井さん:それに関しても偶然なんですけど、たしかに『リングフィットアドベンチャー』は身体を動かすのにちょうどいいし、ゲームとして非常によくできているんですよ。いわゆるゲーミフィケーションとか、ゲームをプレイするモチベーションを保つという意味ですごくよくできています。
ちょっとマニアックな世界になると、自転車を使ったゲームというかシミュレーターがあるんです。自転車って室内でローラーを使って運転できるじゃないですか。あれをそのままゲームの中に同期させる『Zwift(ズイフト)』というタイトルがあるんですよ。実際に自分がペダルを漕ぐ速度に合わせて画面内のアバターが動くので、オンラインでツーリングが楽しめます。
ゲーム上のサイバースペースが個々に現れる世界
──トラヴィス・スコットが『フォートナイト』でライブをやるなど(※その後、日本では米津玄師さんのライブも発表されました!)、コミュニケーションの場として、メタバース的な文脈が注目されていますが、従来のゲームファンが戸惑っていることはあるのでしょうか。
今井さん:ここまで大きな流れになるのは不思議なことではありますね。『フォートナイト』は今やゲームというか、プラットフォームなんですよね。『フォートナイト』内でもちろんゲームをプレイしますが、コミュニケーションをしたり、ライブを見たりすることが普通になってきたので。大流行したゲームはそういう使われ方をするんですよ。たとえば『マインクラフト』も同じくらいユーザーがいて、マインクラフトの中で実際の図書館を作って古文書を管理する謎の企画とかやっていたりしますし(笑)。
──卒業式をやっていた小学生もいましたよね。
今井さん:そういうことが珍しくないんですよ。オンラインゲームはユーザーが遊び方を作っていけるので。最終的にメタバース的になっていくんです。『セカンドライフ』がそういう世界観だったんですが、最初から自由すぎて、みんなが何をすればいいんだよという感じでした。『マインクラフト』や『フォートナイト』は、やることが決まっているんですけど、ユーザーが増えて人が集まったときに違った遊び方が生まれるのは自然な流れだと思います。
コンテンツ提供側もそれを利用して、ライブをやったら人が集まるんじゃないかとか考えるわけです。『FF14』はオンラインRPGなのに、なぜかみんなで普通の麻雀をするのが流行っていました(笑)。ほんと、普通の麻雀をアバターでやってるんですよ。
これは完全にユーザーの規模の問題なんですよね。どんなゲームでもできるかというとできませんが、規模が大きくなればできるんです。『どうぶつの森』もそういう現象が起きていて、みんなが変なものを作るのは珍しくありません。
日本で影響力が高いゲームといえば『スプラトゥーン』ですね。『スプラトゥーン』は定期的にフェスを開催しています。コンテンツ提供側としては狙ってやっているけれど、ユーザーが勝ち負けにあまりこだわらない形で遊んでいます。多元的なゲームジャンルは今後もそういう路線は強くなってくるし、ゲームを使ってゲーム以外のことをやる動きは増えてくるでしょう。『どうぶつの森』に関しては香港でデモのツールとして使われたくらいなんで。今後インターネットというサイバースペースとは別に、ゲーム上のサイバースペースが個々に現れる世界は普通にあり得ると思います。
無料ゲームはゲームに関係ないもので収益を得る
──今後流行るゲームは、メタバース的な視点は絶対必要になるのでしょうか。
今井さん:こればかりは狙ってできるものではないと思います。ユーザーの規模が重要なので。ある意味SNSと一緒ですね。最初はとにかく人を集める必要があるけれど、そのためにはそもそもコンテンツ自体がおもしろくないといけないわけです。
仮にユーザー数が増えてトップレベルのゲームになったとき、『フォートナイト』などがいい例ですが、基本無料じゃないですか。なので、そこからビジネスモデルとしてどうやってお客さんを楽しませて、お金を払ってもらうかと考えたときに、ゲームをプレイしてもらうことじゃないと気付いたんですよ。
実際『フォートナイト』のようなFree-to-playのゲームは何を売っているかというと、スキン(キャラクターのコスチュームなど)とかエモート(感情を表すダンスなど)を販売しています。基本的にゲームには関係ないものを売っている世界なんですよ。
じゃあゲーム内では何をするかというと、アーティストのライブをやる。お金の面は、アーティストにプロモーション代として払ってもらうか、オーディエンスにチケット代を払ってもらうビジネスモデルになってきていて。これは一時期のFacebookとかTwitterなどのSNSのビジネスモデルと似ています。
いったん無料で人を集めて、それから次のビジネスモデルを考えればいいのですが、ゲームをプレイするのはSNSよりもハードルは高いので、まずはおもしろいゲームを作るのが前提ですよね。
これからのゲームはデザインやブランドを売っていく
──これから発売されるゲームはそういったことを意識されていたりするんですか。
今井さん:そこまで高度な、ゲーム以外のコンテンツというのは意識していないと思います。最近のFPSとかマルチプレイのeスポーツ的なタイトルの場合、販売するもののほとんどはブランドやデザインですね。一般的にスキンと呼ばれていますけれど、自分のアバターを飾り付けたり、自分の銃をかっこいいものにしたり。同じ性能の銃でも見た目がかっこいい銃だと売れるんですよ。
──性能は関係ないんですね。
今井さん:性能は変えちゃいけないんです。ゲームバランスが崩れてしまうので。性能を変えずに付加価値を付けるとなると、結局見た目になるんですね。これは予想ですが、今後アパレルブランドが進出すると思います。ナイキとかアディダスとかのウェアをゲーム内で買うとか。そしてそれと同じものをリアルでも販売するのはあり得ると思いますよ。ゲーマーはデジタルのコスチュームにお金を払うことに関してまったく抵抗はないので。
──人と違うコスチュームを着ているだけで、ゲーム内でトップレベルの人だと思われるわけですか。
今井さん:そうですね。ごく一部のスキンは、特別な大会でいい成績を収めたらもらえるものなので、自分の実力を示すことになります。あとはコラボものとかもあります。FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)だと、あるeスポーツゲームのコラボスキンが販売されています。それを着ていると、そのゲームをリスペクトしていることがわかりますよね。また、友達が発見しやすいというメリットもあります。ファッションの世界と変わりません。スキンの販売ビジネスはここ10年くらい続いています。ここから先は、リアル寄りになっていくでしょうね。
ゲームとリアルブランドのコラボレーション
──その辺りに、ファッションブランドが気付き始めている感じですか。
今井さん:『リーグ・オブ・レジェンド』という世界的なeスポーツタイトルがあるんですけど。あのゲームはeスポーツのなかでも価値が一番高いと言われていまして。この前ルイ・ヴィトンとコラボして、リーグ・オブ・レジェンドの世界観の洋服やバッグなどを発売したら、即売り切れましたね(笑)。ゲームからリアルへの展開ですよね。
なので、ゲームのデザインからアパレルへの転用もあるし、アパレルのデザインがゲームの世界に入ってくることも、今後あると思います。
──どんどんバーチャルとリアルの境目がなくなってくる感じがしますね。
今井さん:そうですね。その辺りの文化では、バーチャルでのファッションのあり方はリアルとの差がありません。要するに、Twitterのアイコンにみんなが気を配るのと同じだと思います。
逆に言うと、ゲームのカルチャーの認知度がある程度上がったら、それを利用して現実でも自分がゲーマーであることをアイデンティティにするというライフスタイルになってきてます。日本ではまだまだ弱いですけどね。海外ではゲームをモデルにしたスニーカーとかかなりありますよ。プロゲーマーの商売と方法としても、そういったアパレル商品を作ることはかなり重要視されていると思います。
──リアルとゲームの境目がなくなりつつあるという話をさっきしましたが、これだけリアルの価値観がゲーム内に入ってきていると、ゲームの中だけの価値観で生きていくというような可能性はあると思いますか?
今井さん:どこまでできるかは難しいですけど、ある種エクストリームな人たちはそういう生き方を強調していますね。海外だとファッションのなかで、髪の毛の色は自由度がかなり高くなっているじゃないですか。赤とか青とか当たり前みたいな(笑)。そういう価値観はゲームの影響が大きいと思います。
もともと、ゲームの世界観はリアルな自分の肌の色とか髪の色とか関係ない世界です。だから、ある種サイバーパンクみたいな価値観ですけど、自分のキャラクターとか自分の身体の一部を自分で決定する自由があるっていう文化が基本なので、(現実世界でも)髪の毛の色くらい当然変えるし、ゲーマーの中ではタトゥーを入れる人も増えています。
海外ではそういう人は珍しくありません。特に北米ではゲームに影響を受けたファッションが生まれつつあります。日本の場合はアニメとか漫画の影響があり、コスプレの文化が強いんです。
ゲームにおける人権問題
──ゲーム上で人種問題などあったりするんでしょうか。
今井さん:これは結構ホットな話題ですね。基本的にゲーム自体は白人向けのものが多かったんですけど、80年代から90年代と年代を重ねるごとに、有色人種や黒人のプレーヤーもものすごく増えてきたし、実際にかなりの数がいるんですよ。そうなるとキャラクターメイクのときに、肌の色が白だけだったら絶対に問題になりますね。
肌の色に関しては世界中の人の肌の色はすべて入れる。髪型に関してもバリエーションを作らないといけないという風になっています。キャラクターメイキングができないゲームの場合は、グローバルで販売するタイトルならば必ず全世界の民族などをある程度リファレンスしたり、リプレゼンテーションするようなキャラクターが必要になります。
典型的な例では、『オーバーウォッチ』というFPSでは、各地方とか各文化から一人ずつ参戦しています。アジア人がいれば黒人もいるし、エジプトやブラジルのキャラクターもいます。そういうことはマーケティングレベルで意識しています。
それは単純に、ゲームはグローバルなカルチャーだから、誰でも遊ぶしどんな民族の人も自分のアイデンティティにあうキャラクターがほしいという要望が強いからなんです。
Black Lives Matterに関しても、ほとんどのゲーム会社は公式のTwitterで賛同の意思を表明しています。映画や音楽などの海外のエンターテインメント業界はほぼ同じ動きです。グローバルでのエンターテインメント業界としては、Black Lives Matterの問題は解決しなきゃいけないという意識はほぼ共有されている感じです。
──僕、スキー理論というのをずっと提唱しているんですよ。スキー場でスキーが上手な人はもてるじゃないですか。通常の生活とは違ったヒエラルキーがある状態をスキー理論って呼んでるんですけど、ゲームの世界が一般の人にも広がってきて、もともとゲームの上手な人たちはモテてる感はあるのでしょうか?
今井さん:(笑)。それは現実世界ではほぼ感じられないくらいの誤差でしかないと思いますよ。ただ先ほど言ったとおり、この状況下で自分がゲーマーであることに対してあまりネガティブにならない状況も生まれていますし、価値観のヒエラルキーが変わった印象はあります。ただすべての人がそうというわけではありません。
特にeスポーツの世界は、ゲームが上手いことが唯一で一番重要な価値なんです。eスポーツのトップレーヤーって、意外かもしれませんがかなりの数がアジア人なんです。昔は韓国が強豪でしたし、今は中国が強い。
ゲームがうまいということで、人種関係なく、ちゃんとヒーローとして扱われることは、ほかの世界では見ることができないようなヒエラルキーがあるなと感じますね。
eスポーツ界でも個性を重視する傾向へ
──日本のプロゲーマーなどは、ユニフォームを着ていることが多いですね。スポンサーの意向だとは思うんですが。
今井さん:ユニフォームは、プロチームはだいたいありますね。しかし、「それ自体が定型化している」という意見が出てきています。最近はeスポーツでユニフォームをやめようという雰囲気も出てきました。
ヨーロッパのeスポーツの文化の基本は、サッカーチームにあるんです。都市を代表して、その都市の名前がユニフォームに入っていることが重要だったりするんですよ。だからユニフォームという文化は根強いんですけど、そうすると全部同じような見た目になってしまって、あまりおもしろくない。もう一人ずつ個性的な格好にしようというような、多様性は最近意識されてきています。
ゲーマーというスタイル、eスポーツというスタイルが今まで固定されつつあったから、もう少し自由になろうという雰囲気は結構あります。
ゲーム初心者はどんなゲームが向いているのか?
──こういうご時世になって、ちょっとゲームでも始めてみようかなという人は増えていると思うんですが、ゲーム初心者は最初どんなゲームから始めたらいいのかなという質問なんですが(笑)。
今井さん:それは簡単なようで一番難しい話ですね(笑)。本人が一番興味を持っているものがあれば、それから始めるのがいいと思います。それほど熱中しているものがなければ、自分の隣接領域から始めるのがいいのかなと思いますね。
スポーツが好きだったらスポーツゲームをやればいいし、クルマが好きだったらレースゲーム、映画が好きだったらアドベンチャーゲームという感じで。あまりアクションがなくストーリー中心のゲームもあるので、一般にこれがいいとかはなかなか言えないですね。
──その人の趣味に近いものを選ぶのがいいと。
今井さん:そのほうが入りやすいと思います。ただ、異次元を体現したい人にとっては、現実世界に似すぎてもしょうがないと思いますし、普段インドアな人がサバイバルゲームをするのも別にいいとは思うんです。ただ、オススメしづらいのは事実なので、クルマ好きならば実車がたくさん出てくるゲームはいっぱいありますから、やりやすいのかなと思います。
──周りの友達がやっているゲームもいいかもしれないですね。
今井さん:それは比較的やりやすいと思います。一緒にプレイできますし、教えてもらえます。ただ逆に、ゲームの中と現実世界の人間関係が一緒だとおもしろくないという人もいるので、バーチャルの中では別のコミュニティに属したいというものありなのかなと思います。
ゲームをしなくてもゲームを楽しむ方法
── 一通り『マインクラフト』や『フォートナイト』などやってみたんですが、最初にくじけちゃうんですよね(笑)。向いてないのかなと思ったんですけど、ゲームに向いてないような人でもすんなり入れるようなものってないんでしょうか。
今井さん:尾田さんの趣味はなんですか?
──音楽とかガジェットですかね。
今井さん:ゲームの世界でも、あまりゲームをやらずにPC周りのゲーミングガジェット類を集めている人もいますね。ゲーミングPCを自作する人も珍しくありません。そういう付き合い方もありますよね。
ゲーミングPCを作る人は性能にこだわるので、プレイするゲームはハイスペックじゃないとできないフライトシミュレーターとかやってますね(笑)。そうなると、非常に高価な航空管制用のコントローラーとか買い揃えるとか。
あとはレースゲームにこだわっている人は、ハンドルコントローラーやシフトレバー、イスなど一式揃えて、モニターを3面にしている人もいます。めちゃくちゃお金がかかりますが、スーパーカーを買うことに比べたら安いもんですからね。最近では実際のカーメーカーがゲーム用のシフトレバーを作っています。
ガジェット好きな人はゲームにはまらなくても、そういうところでお金を使ってもらえればいいと思います(笑)。
映画とか音楽とか、文化系のジャンルが好きな人は無理にスポーツ的なゲームをすることはないと思います。一人でやって楽しめるゲームとかいいんじゃないですかね。大作だったら『グランド・セフト・オート』(GTA)とか。そんなに難しいゲームではないと思いますので。
GTAだったらアメリカのギャングスターになったような雰囲気を味わったり。『レッド・デッド・リデンプション』というゲームなら、西部劇の世界に入って楽しむこともできます。
手軽に楽しめるインディーゲームもオススメ
今井さん:もっと手軽にゲームがしたいというのなら、インディーゲームがいいですかね。インディーゲームはストーリーがおもしろいゲームがたくさんあるんですよ。しかも2時間や3時間で終わるものもあるので、そういうゲームから始めるのもいいと思います。
最近話題になったゲームに、『風ノ旅ビト』というタイトルがあります。PS版やPC版も出ています。3時間くらいで終わるゲームなんですが、あまり人を選びません。感覚とかUIの気持ちよさがメインのゲームなので。たとえばiPhoneのアプリケーションが好きというようなデザイナーさんにオススメだし、環境音楽みたいなインタラクション性のある音楽が聴けるので音楽好きにもいいと思います。
もっとゲームでしか味わえない体験がしたいのでれば『Return of the Obra Dinn』というゲームがあります。
これは3D空間だけどドット絵みたいな形で描かれた空間の中で、ある船の中で起こった殺人事件の犯人を捜すゲームです。すごく変わった推理ゲームです。
押井守監督がハマっているゲームは『フォールアウト4』
──それ、おもしろそうですね! 推理小説好きだからやってみようかな(笑)。個人的な興味なんですが、『攻殻機動隊』の押井守監督が、あるときから「ゲームのほうがアニメや実写映画よりもストーリーがすごい」というようなことを言い出して。優れた人材がゲームに集まっていると言っているんですが、監督が言っているゲームってなんでしょう?
今井さん:これはゲーマーや押井守ファンには有名なんですけど、監督が一番ハマっているのが『フォールアウト4(Fallout 4)』っていうゲームです。オープンワールドのゲームで、核戦争後のポストアポカリプスの世界でサバイバルしながらミュータントみたいになった敵を倒すというものです。監督は他のキャラクターとコミュニケーションをとらないまま過ごしているという話ですけど。映画のような短いストーリーをがっつり楽しむタイプではなく、世界観を楽しむのがメインのゲームですね。
普段の生活は、実際に自分が体験した些細なことの積み重ねですよね。『フォールアウト4』でも同じで、今日は敵と戦闘してうまくいったとか、今日はアイテムが発見できなかったとか、そういう一日一日の些細な変化を楽しむのもゲームの特徴となっています。異世界で日常を楽しむのも、ゲームのおもしろいところだと思うんです。
逆に映画は事件がなかったら映画にならないじゃないですか。フランスや海外の映画ですごく淡々としたものもありますけど、基本ハリウッド映画のように、何か事件が起こるじゃないですか。ゲームはある種その束縛から離れたところで表現ができるんです。
『GTA』でドンパチやっている場合があれば、「1日ドライブしてたわ」という人も珍しくないんですよ。
『レッド・デッド・リデンプション』だって、ずっと馬を走らせて西部の自然を見たり、ひたすら薬草だけ摘んでいる人がいたり、そういうプレーヤーもたくさんいるのがゲームの多様性につながっています。
逆にそういうシナリオ作りという意味では、映画の世界はまだまだ強い。2時間3時間のなかですごく充実したシナリオを作るのは映画の領分ですね。ただ、ゲームでも短くて濃厚なストーリーを楽しませるものも徐々に出てきています。
──押井監督は事件が起きないところも好みだったのかもしれないですね。
今井さん:多分、世界観とか日常みたいなものを表現するところですかね。押井監督の映画はドラマティックな部分だけではなく、ちょっとしたシーンの細かい描写が魅力な部分もありますから。ディテールに凝るという意味ではゲームが一番できるんです。空間を作ってしまえば、隅から隅まで歩けるのはゲームの特徴ですよね。
ゲーミングアクセサリーのコスパが高いのはマーケットが確立されているから
──ちょっと話は変わりますが、リモートワークに使えるアクセサリーはありますか?
今井さん:よく使われているのはヘッドセットマイクですよね。ゲーマー向けのヘッドセットマイクはたくさんあるんですよ。ぶっちゃけ、真っ先に買ってもいいと思います。
というのは、PCのオーディオ環境はよほどこだわっている人以外は、あまり気にしていませんよね。ということは、スピーカーとマイクはかなり性能が悪いんですよ。ゲーミング製品のメリットは、お手頃な価格で高品質なものが揃っていること。ゲーミングヘッドセットなら、1万円くらいのものを買えば、音声通話の質がグッと上がります。
──1万円くらいでいいんですか?
今井さん:そこら辺は好み次第かと思うんですが、1万円くらいで大丈夫ですよ。ほぼ間違いありません。
ただ、製品ごとに特徴は結構あります。方向性としては、いわゆる疑似サラウンドに力を入れているブランドがあれば、シンプルにFPSとかで勝つための音響に設定されているものもあるので、そこは自分の好みに合わせて決めていただければと思います。
──僕もゲーミングヘッドセットを買って使っているんですが、とてもスペックは高いのにお手頃価格のものが多くて、しかも品切れがない。なぜ高コスパの製品が実現できているのでしょう?
今井さん:ユーザー数がある程度わかっていて、ターゲットが決まっているから価格設定がしやすいのではないでしょうか。
ゲーマーはある程度のお金は出すけれど、コスパも気にします。学生も多いですし。なので、マーケットとしての確立度が高いんですよね。それ以外なら、オーディオマニアかチープなやつでいいやという二極化してしまうんですが、ゲーミングのジャンルはターゲットがハッキリしているんです。
最近では音響メーカーもゲーミングブランドをどんどん投下してますね。オーディオテクニカとかオーディオ専門だったメーカーが参入してきていますし。今はゲーミングというマーケットが攻めやすいのでしょう。
ぶっちゃけて言うと、ほかの周辺機器もゲーミングで揃えてもいいかなと思いますね。特にマウスはビジネスでも十分使えると思います。
──ゲーミングマウスってボタンがいっぱい付いててすごいですよね(笑)。
今井さん:ゲーミングマウスは、センサーの解像度であるDPIが高いので、イラストレーターとか細かい作業をするときでもいいと思います。適宜DPIの調整もできますし。ボタンが多い機種なら、ボタンごとにショートカットをアサインすれば、コピー&ペーストもワンクリックでいけます。その上値段も手が届きやすいものが多いので、マウスには投資してもいいと思います。
逆にキーボードはややエッジーかなと思います。メカニカルキーボードにこだわる傾向があるので、打鍵音がうるさくなる場合があります。
──ピカピカ光るものも多いですよね。
今井さん:そうそう、光ります。これはよく知られていることかもしれませんが、ゲーマーの悪いクセで光るほうが偉いみたいなところがあるんですよ(笑)。
ゲーミングの周辺機器の文化って、アメリカとか北欧とかが発祥なんです。改造していかに自分のマシンをかっこよく見せるかというものなんですよ。その場合、光らせるのはひとつわかりやすい方法だったんですね。それがゲーミングブランドに流れて、今は既製品でも普通に光ります。
それが派手でイヤだなという人向けに、大人しいデザインのものも最近は流行っていますね。ゲーミングといっても、派手一辺倒じゃダメじゃんっていうところもあるので。多様性ですよね。
ただ、ゲーマーの本質としてはシンプルすぎるとちょっと味気ないかなという気持ちは正直あります。
──個人的にちょっと不思議に思ってるんですが、ピカピカ光ってプレイ中にジャマにならないのかなと。
今井さん:プレイ中はあまり気にならないんですよね。寝るときとかは気になりますけど(笑)。基本的に制御できるので、状況に合わせてどう光らせるかは変えられます。音楽に合わせて変えることもできますし。パーティグッズみたいなものですよ(笑)。
ゲーマーが多様化した結果白いゲーミングPCが増えてきた
──最近はゲーミングPCでも、白いカラーリングのものが出ていますけど、そういうクリーンなものを好む人が増えてきているんですか?
今井さん:やはりゲーマーが多様化してきた結果、女性も増えて、感覚が違う人も増えました。どこのメーカーも白をテーマにした製品を出すようになっています。そこは白物家電と黒もの家電みたいなイメージがあるんでしょうね。機械といえば黒みたいなところがあったけれど、白で少しソフトなイメージにするとか。
性能としてはほぼほぼ統一されているんです。テクノロジーとしては上限まで来ている感じです。スニーカーみたいな世界なんですよ。みんなエアとか言ってても、必要ないじゃんと思うじゃないですか。でも、機能性によってブランド価値を高めるのは重要だから、そういう機能を持たせるんですけれども。結果的には街で履く分には一緒じゃんみたいな。
みんなそんなエクストリームなゲーマーじゃないけれど、やっぱりこだわりたいという気持ちはあるから、スニーカーを買うのと同じ感覚で、マウスとかそれほど高いわけではないので、1カ月に1個くらい買っても別にいいと思います。
──メーカーごとの特徴などありますか?
今井さん:どのメーカーも特徴がありますね。デザインにフォーカスしているのはRazerです。ゲーマー以外のファンも多いと思います。Krakenというヘッドセットマイクがあるんですが、昔からかなりブランド力があります。今は全部ピンクのモデルもありますね。これは完全に女性ストリーマーをターゲットに作っていて。Razerは常にファッション性では最先端を走っています。
Lenovoが作っているLegionというブランドは、比較的大人しいデザインで、見た目はビジネスユースでも使えそうな感じなんですが、中身はゲーミングPCという。Lenovoというブランドイメージと合っていますよね。
ほかにはDellのAlianwareやHPのOMENがあります。Alianwareは伝統的な一番古くからあるゲーミングのメーカーですけど、名前がAlianwareというくらいなのでちょっと未来的で、UFOとかエイリアンみたいなデザインをしています。OMENはちょっとゴツいんですよね。黒と白と赤が基本で、西海岸っぽい、ゴシックとかヒッピーっぽい雰囲気がありますね。
──最近さまざまなメーカーがゲーミングPCを出していますよね。
ゲーミングPCは売れ線なんです。どのメーカーも狙っていると思います。逆に言うと、性能さえある程度あれば、そこからはイメージで勝負できるという領域なんです。
楽しみ方は人それぞれ! 自分にあった方法でゲームを楽しもう
今井さんにお話を伺ってみたら、ゲームの世界は僕らが想像していたよりも多様化が進んでいました。「ゲームは1日1時間!」と親に言われてきた世代からすれば、夢のような世界ですね。
家にいる時間が増えて、映画も読書も飽きちゃった人は、ゲームを始めてみると新しい体験ができるかもしれません。また、リモートワークに使う機材をゲーミングアクセサリーから選ぶのも選択肢が広がって楽しそう。
もはやゲームは、生活の一部になりつつあると言ってもいいのかもしれませんね。
ところで、編集長の尾田は何かゲームを始めたのでしょうか? そのうちゲームプレイ日記なんか書いてくれないかなー。
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2020-08-07 10:00:00Z
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