アメリカ航空宇宙局(NASA)は3月23日(現地時間、以下同様)、火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」に搭載されている小型ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」の飛行が4月8日以降に実施される予定であることを明らかにしました。飛行に成功した場合、Ingenuityは地球以外の天体で飛行した初の回転翼機として歴史に名を残すことになります。
■火星での動力飛行実証を目的とした小さなヘリコプター
Ingenuityは重量1.8kgの小さなヘリコプターです。高さは49cmで、幅1.2mのカーボンファイバー製ローター(二重反転式)を備えています。ローターの上には太陽電池が取り付けられていて、Ingenuity単体でバッテリーを再充電することが可能です。Ingenuityによる最初の飛行では、高度3mを最大30秒間ホバリングすることが計画されています。
火星に降り立った初期の探査機は着陸地点から動くことができませんでしたが、1997年7月に着陸した火星探査機「マーズ・パスファインダー」に搭載されていた小型探査車「ソジャーナー」によって火星の地表を移動できることが証明されたことで、探査方法に変革がもたらされました。日本時間2021年2月19日朝に火星のジェゼロ・クレータへの着陸に成功したPerseveranceは、ソジャーナーの後に送り込まれたNASAの探査車としては4台目にあたります。
火星地表の重力は地球と比べて約3分の1と小さいものの、大気の濃さは地球の約1パーセントと希薄です。地表に届く太陽エネルギーは地球の約半分で、時には摂氏マイナス90度まで下がる夜の寒さによって保護されていない電子部品が破損することもあり得るといいます。Ingenuityは地球よりも厳しい環境の火星における動力飛行の実証を目的としており、将来の火星探査に活動範囲の拡大や空中からの視点という新たな変革をもたらすことが期待されています。
NASAによると、Perseveranceの下部に搭載されているIngenuityは6ソル(※)ほどの期間をかけて地表に降ろされます。Ingenuityは4本の着陸脚を畳み横に90度傾いた状態で格納されているため、まずは水平になるよう回転させつつ着陸脚を展開する作業が行われます。
※…1ソル=火星での1太陽日、約24時間40分
Perseveranceの電源を利用してバッテリーの充電を終えた後に地表へ降ろされたIngenuityは、着陸脚の接地状態やPerseveranceとの距離および通信状態を確認した後に、数ソルかけて搭載機器のチェックやローターの回転テストなどを行います。
すべての準備が整った段階で実施されるIngenuity初飛行の様子は、Perseveranceのマストに搭載されている各種カメラによって静止画や動画で撮影される予定です。史上初めて火星の空を動力飛行するIngenuityの姿を見るのが今から楽しみです。
関連:NASA探査車「Perseverance」火星で初の走行テストを実施、着陸地点に命名も
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
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2021-03-24 13:32:00Z
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