日本のデベロッパーとしては初!
先日発表された2021年 Apple Design Awardsのファイナリストに「らくがきAR」が選ばれました。Apple Design Awardsは、デザインにおいて卓越したイノベーションとアイデアを実現し、技術面での成果を達成したアプリやゲームに毎年表彰されています。
空想を具現化してくれるアプリ
「らくがきAR」は、ノートやホワイトボードに落書きされた絵をスマホのカメラでスキャンすると、とたんに絵がノートの表面からむっくり起き上がってバーチャル空間を歩き出すという、シンプルだからこそ幅広い年齢層が楽しめるアプリです。
自分が描いたキャラが手足をシャカシャカ動かしながら移動していく様子は、どんくさくて愛らしいのなんの。
らくがきは最大8体まで同一のAR空間に存在させることができます。ごはんをあげたり、つっついたり、色々ちょっかいを出せるのもおもしろいところ。ごはんをあげすぎると「おみやげ」を落としていくので要注意です〜(子どもは喜びますけど)!
子どものほうがよっぽど「らくがきAR」を直感的に使いこなしていたのもまたおもしろいところでした。わたしは「まず落書きしなきゃ」と思い込んでましたが、 息子はそこらへんにあるものを手当たり次第に「生き物化」していて、 なんか直感的な遊び方だなーと。
自分で描いた落書きじゃなくてもOK。植物図鑑に描かれたキノコたちもこんなふうにニョキニョキ生えてきてちょっとシュールでした。
「どんなものでも生き物にしてあげたい」
「らくがきAR」の生みの親は、東京をベースに世界で活躍するクリエイティブスタジオ、Whatever inc. です。インタビューする機会があったので、プロデューサー の関 賢一(せき・けんいち)さん、クリエイティブ・ディレクターの宗 佳広(そう・よしひろ)さん、そしてプログラマーの岡田 隆志(おかだ・たかし)さんにお話を伺いました。
2020年8月といえば、コロナ禍まっ最中。そう、「らくがきAR」は、コロナ禍で身動きが取れない大人たち、子どもたちに向けてリリースされたという背景があったんですね。
当のWhatever Inc.のデベロッパーチームも、関わっていたプロジェクトが感染拡大予防のため中止に追い込まれていく中で、時間的な余裕ができたからこそ「らくがきAR」の開発に手を回せた実情もあったようです。
ARというとデジタルなイメージがありますが、「らくがきAR」を楽しむ最初のステップはあくまで「手描き」。このデジタルなご時世において自分で作り出したアナログなものに「触れる」ことで、手作りの温もりを忘れてほしくなかったという思いが込められています。
遺志を受け継ぎ3年をかけてリリース
2017年にiPhone/iPadのAR機能「ARKit」がリリースされたのをきっかけに開発がスタートした「らくがきAR」でしたが、途中、メインで開発を担当していたプログラマーの山田純也さんが早逝されました。
山田さんには、「どんなものでも生き物にしてあげたい」というクリエイターとしてのこだわりがあったそうです。その山田さんの意思を受け継いでの開発は、いかに生き物っぽい動き方を再現するかに力点を置くものに。そのキモとなったのが、画像データに「ボーン(骨)」を入れこむ独自の技術でした。
そして、2020年8月。「らくがきAR」がアップルのApp Storeから配信が開始されるやいなや、遊んでいる様子をSNS上で公開する漫画家やイラストレーターが続出してそこからバズったそうです。リリース後の5日間だけで50万回ダウンロードされたとか…!主にアジア圏での人気が根強く、今でもジワジワとファンを増やしているようです。
この喜び、天に届け
さて、2021年 Apple Design Awardsのファイナリストに選ばれたと聞いて、「らくがきAR」のデベロッパーチームの反応はいかようなものだったのでしょうか。
Appleからノミネートの連絡が来たとき、プロデューサーの関さんは「めちゃめちゃビビった」そうです。いつの間にやらノミネートされていて、まさかファイナリストになるなんて。とても光栄です、ともおっしゃっていました。
アップルフリークだったという故・山田さんにも、この喜ばしい知らせはきっと届いているはずです。
Whatever inc.が大事にしているアプリと技術だからこそ、これからも自社でのアプリリリースに徹するそうです。どんなアップデートを遂げるかはわかりませんが、たとえば対戦機能が実装される可能性もあるかも? あなたのらくがきと、わたしのらくがきが死闘を繰り広げる日が、待ち遠しいかぎりです。
Reference: Apple Design Awards, Whatever inc.
Photo: 山田ちとら
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2021-06-18 11:30:00Z
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