ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(左)と、ハッブル宇宙望遠鏡(右)。
NASA/Chris Gunn; NASA
アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、宇宙初期にできた銀河のこれまでに見たことのない姿を捉えた。
JWSTは最近、「MACS0647-JD」と呼ばれる天体に焦点を当てた。この天体は非常に遠くにあり、光がやってくるのに時間がかかるため、このような天体を観測することは時間をさかのぼることでもある。MACS0647-JDは、ビッグバンから約4億3000万年後、今から約133億7000万年前の天体だと考えられている。
JWSTなどを運用する宇宙望遠鏡科学研究所の研究者、ダン・コー(Dan Coe)は、10年前、それまでNASAで最も強力な宇宙観測機だったハッブル宇宙望遠鏡(HST)で初めてこの天体を発見した。
2022年10月26日に公開されたNASAのブログで、コーは次のように述べている。
「ハッブル宇宙望遠鏡で見ると、この銀河はただのぼんやりとした赤い点で、宇宙発生から最初の4億年の間にできた小さな銀河だと考えられていた。今、ウェッブで見ると、これが2つの天体であることが分かった」
JWSTはHSTの100倍の性能を持ち、赤外線カメラを用いて深宇宙や遠い過去をより深く観測することができる。JWSTで撮影された新しい画像とハッブル望遠鏡で以前撮影された画像を比較したところ、観測史上最も古い銀河の1つであるMACS0647-JDに新たな特徴があることが分かった。
HSTとJWSTで撮影したMACS0647-JDを比較したアニメーション。左側の画像の中で、白い四角に囲まれているのがMACS0647-JD。手前にある巨大な銀河団MACS J0647+7015の重力レンズ効果によってJD1、JD2、JD3の3つに見えている。
SCIENCE: NASA, ESA, CSA, STScI, and Tiger Hsiao (Johns Hopkins University) IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)
HSTとJWSTは、ともに重力レンズ効果を利用して、この初期宇宙を観測している。重力レンズとは、銀河団などの巨大な質量によって時空が歪み、その背後にある遠方の銀河からの光が曲げられてしまう現象のことを言う。そうやって分裂した光が我々観測者のもとに届いている。
そのため、MACS0647-JDの姿は上の画像のように3カ所に現れている。右側に示された拡大図を見ると、JWSTの画像は2つの異なる天体をはっきりと写し出しており、いかに鮮明であるかが分かる。
JWSTが撮影した、重力レンズ効果で3つに分裂したMACS0647-JDの像のうちの1つ。
SCIENCE: NASA, ESA, CSA, Dan Coe (STScI), Rebecca Larson (UT), Yu-Yang Hsiao (JHU) IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)
「我々は、これが2つの銀河なのか、それとも銀河の中に星の塊が2つあるのかということについて活発に議論している。まだ分からないが、このような疑問を解くためにウェッブが設計されたのだ」とコーは述べている。
この研究結果はまだ発表されていないが、HSTとJWSTの画像の差は歴然としている。
JWSTは銀河の合体といった初期宇宙での未知の現象を明らかにする可能性がある
「VV 191」と呼ばれるペアの銀河。JWSTの近赤外線データと、HSTの紫外線と可視光のデータを組み合わせて作成された。
NASA, ESA, CSA, Rogier Windhorst (ASU), William Keel (University of Alabama), Stuart Wyithe (University of Melbourne), JWST PEARLS Team, Alyssa Pagan (STScI)
MACS0647-JDの2つの塊のうち、一方はより青く、比較的若い星が形成されていることを示している。もう一方はより赤く、形成されてから時間が経っており、塵が多く含まれていることを示している。
「我々は、極めて初期の宇宙における銀河の合体を目撃しているのかもしれない。もしこれが最も遠い銀河の合体であれば、天にも昇る気持ちになるだろう」と、コーと共に画像を研究した博士課程の学生、タイガー・ユーヤン・シャオ(Tiger Yu-Yang Hsiao)はNASAのブログで述べている。
HSTが捉えたペアの銀河「Arp 143」。2つの銀河が衝突し、合体している。
NASA, ESA, STScI, Julianne Dalcanton (Center for Computational Astrophysics / Flatiron Inst. and University of Washington); Joseph DePasquale (STScI)
JWSTは宇宙が始まったころの、より遠くにある銀河について明らかにしていくだろう。そして、宇宙の始まりから4億年という、これまで欠けていた歴史の解明につながることが期待されている。
「これまで宇宙初期の銀河は詳しく研究することができず、ウェッブ以前には数十個しか見つかっていなかった。これらを研究することで、銀河がどのように進化し、今我々が暮らすような銀河になったのか、さらに、宇宙が時間の経過とともにどのように進化してきたのかについて理解できるようになるだろう」と、この画像を研究したもう1人の博士課程学生、レベッカ・ラーソン(Rebecca Larson)は、NASAのブログで述べている。
彼女は、JWSTの新しい画像に写っている小さな点の1つ1つが、すべて遠くの銀河であることを指摘した。
JWSTで撮影された銀河団MACS J0647+7015と初期宇宙の銀河とみられる天体MACS0647-JD。
SCIENCE: NASA, ESA, CSA, Dan Coe (STScI), Rebecca Larson (UT), Yu-Yang Hsiao (JHU) IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)
「これまで見えなかった多くの情報を得ていることに驚いている」と彼女は言う。
「しかも、これは最深の宇宙(ディープフィールド)でもなければ、長時間露光したわけでもない。この望遠鏡で1カ所を長い時間をかけて見ようとしたことはない。これはまだ始まりに過ぎないのだ」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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2022-11-10 10:00:00Z
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