フンボルチンは、鉄と炭素と酸素からなる含水鉱物で、産出地は世界でわずか30カ所しか知られておらず、ドイツ、ブラジル、英国、カナダ、米国、ハンガリー、チェコ、イタリアにある採石場や鉱山などに限られている。まれに微小な結晶を形成するが、黄色い非晶質の塊として見つかることが最も多い。炭素化合物と酸化鉄が水と反応して形成され、結晶構造内で炭素と他の元素が結合する数少ない有機鉱物の1つだ。
フンボルチンは、ドイツ人鉱物学者のアウグスト・ブライトハウプトが、チェコのモスト郡コロズルキ村近郊の風化亜炭鉱で最初に発見した。1821年にペルー人地質学者のマリアーノ・エドゥアルド・デ・リベロ・イ・ウスタリスが科学文献に記載し、19世紀ドイツの博物学者で探検家のアレクサンダー・フォン・フンボルトにちなんだ名前を命名した。鉱山技師をしていたフォン・フンボルト自身も、熱心な鉱物収集家だった。
2023年、LfUに保管されている記録文書のデジタル化作業中に、ある炭鉱の所有者から同局宛に送られた手紙が見つかった。手紙には、バイエルン州内にあるMatthiaszeche炭層に、フンボルチンが存在することが記されている。場所は、同州東部のオーバープファルツ行政管区を流れるナープ川の畔の町シュワンドルフの近くだ。LfUは、この発見を裏づけるために、追加的な分析に用いるサンプルを送るよう依頼している。だが、その後の経緯に関する文書は存在しないようだ。
この手紙に興味をそそられたLfUの地質学部門を統括するローランド・アイヒホルンと同僚らは、同局の地下室に保管されている、長年にわたって集められた鉱物の膨大な収集品を調べてみることにした。その数、岩石と鉱物の標本が13万点以上だ。サンプルが本当に送られてきたのなら、まだここにあるかもしれない。体系的に整理された収集品の引き出しの中には、化学組成の順に鉱物が並べられている。そこでアイヒホルンらのチームは「Oxalit」というラベルが付いた、まだ古い紙箱に入ったままの黄色い鉱物のかけらをいくつか見つけた。Oxalitはドイツ語で有機化合物の意味だ。ラベルには、手紙に書かれていた産出地からサンプルが送られてきたことも記載されていた。
最新の化学分析の結果、75年前の発見が間違いではなかったことが確認された。6個のかけらは、最大のものでもナッツくらいの大きさしかないが、確かにフンボルチンだった。他のサンプルと合わせると、これまでに知られているフンボルチンの総量がこれで2倍になる。
アイヒホルンによると、これはラッキーな発見だったが、鉱物コレクターにとって悪い知らせもある。発見地のMatthiaszecheは、露天掘りの炭鉱だったが1966年に閉鎖され、その後に浸水したため、この産出地からはこれ以上フンボルチンを手に入れることができなくなってしまった。
追加資料とインタビューは、バイエルン州環境局と独ニュース週刊誌シュピーゲルから提供された。
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2024-01-27 06:00:06Z
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