スマホともデジタルカメラとも一線を画す、ザ・一生モノ。
ここ1〜2年で急激に囁かれるようになった「デジタルカメラの買い疲れ」ですが、それは無理もありません。なにしろ高価な製品にも関わらず、製品サイクルが早く値崩れが激しい分野です。しかも、製品の高性能化が進むにつれ、徐々に技術の進歩も体感しづらくなってきていますからね。
今回紹介するのは、そうした流れと対極にあるカメラです。なにしろ、そもそもデジタルじゃありません。そして、電気を一切使いません。
Leica M-A
これは何?:ライカの完全機械式フィルムカメラ。2015年発売の現行品。
いくら?:63万8000円(税込)
好きなところ:精巧な作り。カメラの原理に触れられる完全機械式。どこにもロゴが入らないステルスデザイン。
好きじゃないところ:ファインダー倍率がもう少し高ければ…。
電池がいらない“極限のフィルムカメラ”。操作はすべてマニュアル
そもそも機械式カメラとは、電子部品が使われていないカメラのこと。
厳密には露出計を内蔵している機械式カメラもあるのですが、このライカM-Aはそんな露出計すらない完全な機械式。電池不要。純粋にバネやゼンマイで動くんです。高級な腕時計と同じですね。
そして、このライカM-Aでできることは、フルマニュアルでの写真撮影。それだけです。絞り優先AEやシャッタースピード優先AEなんてありません。
被写体に対するベストアングルまで移動し、被写体がどれくらいの明るさかを判断し、フォーカスを合わせ、シャッターを切る。そしてフィルムを巻き上げる。
これらのすべてを自分の目と手と足で行ないます。
そんな写真撮影の原点に立ち返れるカメラが、現行品として新品購入できる。それがライカM-Aの大きな魅力です。
なぜなら、2020年現在、新品で買えるフィルムカメラはほとんどありません(ニコン「F6」や、ライカ「MP」くらいのもの)。中古で購入するにしても、ライカM-Aは2015年発売のため、中古品も程度が良いものばかりな印象です。
「露出計なしで大丈夫?」結論:どうにかなる
このライカM-Aですが、露出計なしという現代からすると極限の設計のせいか、ちょっと触って諦めたっぽい新品同様の中古も珍しくありません。
そんなことからも「フルマニュアルはともかく、露出計なしに引っかかる」という方も多いはず。
正直、自分も最初の頃は「これは修行だな」と思っていました。シャッターチャンスに出会うたび「ここの明るさは何EVだろうか?」と計測し、そこからフィルム感度と合わせ、絞りやシャッタースピードを計算しなければならないからです。
でも、“晴れの日の順光”など大方のシチュエーションである程度の基準はありますし、慣れてしまえば自分の中の露出計的感覚が鍛えられます。
それにネガフィルムは現像時に補正できる幅が広いので、大外しすることはほとんどありません。
しかし、明暗さが激しい場面や、ポジフィルムを使っているなどで厳密に露出を合わせたい場合に便利なのが、露出計アプリ。
ポケットからiPhoneを取り出して被写体をフレーミングすればすぐに明るさの計測が行えます。ストロボを使う場合でなければ、わざわざ単体露出計を用意しなくても、これで十分です。
そんな感じでライカM-Aは不便な反面、カメラの基本原理から操作方法までが一通り学べるプロダクトとも言えます。
このカメラを使えるようにさえなれば、あとはどんなカメラを使ってもそのテクニックや知識が応用できるはずです。
伝説のライカレンズ、その宇宙が広がる。しかも結構安い
M型ライカを手にすると眼前に広がるのが、ライカレンズの宇宙。
名だたる写真家が名作を生み出してきた銘レンズから、最新の超高性能レンズまで、古今のL39マウント(要変換リング)やMマウントのレンズが使えるようになります。
デジタルのM型ライカの場合、一部のレンズでは沈胴できないなど機能制限があるのですが、フィルムではそうした心配はありません。フルにライカレンズの宇宙を楽しめます。
しかも、オールドレンズの多くは、ライカ銘にも関わらず10万円以下で購入できるものも少なくありません。
さらにライカレンズは値崩れすることがないどころか上昇傾向にあるため、売却まで見越せばむしろ割安とさえ言えるかもしれません。
新旧のライカレンズとフィルムで2020年現在を撮る。それは一見懐古的なようでいて、リアルタイマーも経験できなかった、現代らしい写真の楽しみ方の一つではないでしょうか。
ちなみにライカは、この2020年にフィルムカメラであるライカM6を使っている写真家をフィーチャーしたムービーも制作。最近のAppleもそうですが、新製品ではない自社プロダクトを大切にする姿勢はブランドとして理想的ではないでしょうか。
フィルムを入れ替えれば「モノクロ専用機」
そしてフィルムカメラならではの楽しみが、使うフィルムによって変わる描写。
モノクロフィルムを挿れれば、モノクロ専用機。もはや「ライカM10モノクローム」気分です。
デジタルカメラのモノクロモード(ベイヤーフィルターを通した写真をモノクロに変換するもの)とは違う、受光するフィルムがモノクロ専用だからこその階調表現が楽しめます。
モノクロでしか撮れないカメラを持っていると、世界の見え方が少し変わります。
鮮やかな色ではなく、光と影のコントラストや豊かなトーンに目が向きます。
こんなカメラ自体が変身する感覚はフィルム機ならでは。
しかも、モノクロフィルムだって何種類もありますからね。
高いメンテナンス性による安心感
そして機械式カメラのメリットは、高いメンテナンス性にあります。
電子部品がないので、半永久的に修理可能。しかもこのライカM-Aには壊れやすい露出計が内蔵されていません。
デジタルカメラがもっと好きになる、フィルムカメラ
フィルムを詰めて、露出を合わせ、フォーカスを合わせてシャッターを切る。それだけ。でもそれがすべて。そして、妥協のない素材を使い、高精度な設計により、メンテナンスさえすれば末長く使える一生モノ。ライカM-Aはそんなカメラです。
デジタル時代における「新製品が出るにつれ、どんどん旧型の価値が落ちてしまう」という現象は、もはや宿命です。しかし、そんな世界において、こうした自分の一生に寄り添ってくれるタイムレスな製品は一つのお守りのような存在かもしれません。
そして、このカメラを使った後にデジタルのM型を使うと「使い勝手は同じなのに、すぐに撮った写真を確認できる!」と当たり前のことに感動してしまいます。
「そうか、デジタルは、フィルムがセンサーになっただけなのか」って。
写真の原理や基本、そして進化を体感できる、ひとつの究極を体現したカメラだと思います。
まとめ
・デジタル要素ゼロ。極限までアナログな完全機械式カメラ
・職人技を感じさせる、堅牢かつ精巧な筐体
・電池?そんなのいりません
・写真撮影の基本がここにあり
・伝説的なライカレンズの数々がネイティブ対応
・なんと新品で買える現行品
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2020-04-21 09:00:00Z
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