「やってみなきゃわかんないじゃん」と考える方ではありますが、それが地球規模になるとさすがに「やってみなきゃわかんないんじゃやめた方がいいんじゃ?」と消極的になってしまいますね…。
炭素汚染(地球温暖化)問題を解決するために残された時間はあと10年と言われています。もしも失敗するようなことがあれば、人類の繁栄を支えてきた気候を守る機会を失ってしまいます。そんなことになったら、世界のリーダーたちやならず者の億万長者が極端な手段で太陽をさえぎって地球を冷やそうなんてことをやりはじめちゃうかもしれません。とはいえ、これはスーパーマンに出てくる悪役、レックス・ルーサーの極悪非道なアイデアなんかじゃなく、科学者たちが積極的に研究していることなので、別に私たちが地球を使ったイチかバチかの実験を行なうというわけでもありません。
太陽放射管理(オタク路線をいくならSRMと呼べばいいかも)として知られるこの方法は地球工学に分類されて、広範囲におよぶその影響などがまだよくわかっていない気候変動対策で、もっとも急激に人工的な変化を地球に加えます。どんな方法なのかというと、粒子を地球の成層圏にまいて、太陽光を反射させるのだそうです。この説明だけだと超簡単そうですよね。テック好きな元大統領候補は、超巨大な反射鏡を設置するなんて言っちゃってましたけど。
魅力的なアイデアではあるんですよね。まず、安いんです(反射鏡は置いといて)。テストはまだ行なわれていませんが、科学者が火山の研究から学んだことを基にすれば、間違いなく状況は改善されるでしょう。
しかし、地球工学によって気候のある要素に影響を与えた場合、他の要素にどんな影響が出るのかはよくわかっていませんし、はじめたらどんな影響が出ても止められないかもしれないなど、多くの問題があるようです。そんなのヤバいじゃん。
年間数十億ドル(数千億円)というコストが高いかどうかというと、たとえば、スキンヘッドの億万長者が新型コロナ大流行中だけで280億ドル(3兆円)を稼げるくらいなので、コスト面は問題なさそうですね。また、熱帯に位置する一部の国には恩恵がありそうですが、恐ろしいことに国際的なルールはありません。まるでリアル西部劇じゃないですかこれ…。
でもまあ、専門的な内容なので私も半信半疑。ということで、Eartherは専門家たちに連絡をとって、太陽放射の管理について、「いったい何が夜も眠れないほど問題なのか」を尋ねてみました。彼らの回答は以下のとおりです。なお、内容をわかりやすくするために少し編集してあります。
Paulo Artaxo(サンパウロ大学物理学研究所)
太陽地球工学は、気候に影響を与えるという点で大きな危険をはらんでいます。この技術が応用できるかどうかや、どのような悪影響があるかを知るために、まだ10年以上の良質な科学調査が必要です。一部の地域では、必ず水循環や生態系の機能に大きな変化が起こります。政治的に分断した世界では、ガバナンスの問題にも大きな疑問が残りますね。
太陽放射管理の実行とプロセスの監督は誰が行なうのでしょう?そこに発展途上国はどのように関わるのでしょうか?地球工学は、豊かな国と貧しい国の貧富の差をさらに広げるために利用されるのでしょうか?何か問題が起きた場合、誰が責任をとるのでしょうか?科学的な問題以外にも、未解決のままになっている疑問がこんなにあります。
Kate Marvel(米航空宇宙局(NASA)ゴッダード宇宙研究所/コロンビア大学)
気候については多くのことがわかっていますが(一部の地域が高温または低温である理由や湿潤または乾燥している理由、大気組成が気温と降雨にどのように影響するかなど)、この複雑なシステムについて完璧な知識があるわけではありません。二酸化炭素の大量排出が地球の複雑なシステムに影響を与えていることはもちろん理解していますが、太陽放射管理は避けるべきだと思います。
また、太陽をさえぎることで平均気温は下げられると思いますが、問題は地球の平均気温だけなんでしょうか?計画的な地球工学が地域の降水パターンに影響すると考えられていますが、野生植物と作物の成長(これらは日光を好む傾向があります)への影響は十分に理解されていません。
そして、私が本当に恐れているのは、こういう疑問が無意味かもしれないことです。地球工学は比較的安価なので、ひとつの国が単独で行なうことも可能です。億万長者がひとりで実行することもできるでしょう。そしてそれが問題を引き起こすかもしれないんです。もしもA国が地球工学をはじめて、B国が気象災害を経験したとします。B国がA国の責任を追及するときに、A国が行なった太陽放射管理が原因でB国の気象災害が起こったという明確な科学的根拠を示せないかもしれません。
Andy Parker(SRM Governance Initiative and University of Bristol)
答えは「すべて」です。太陽光を弱める仕組みについて理解しているならいいかもしれませんが、もしもわかっていないとすれば、いったい何をやろうとしているのかも、なぜやろうと考えているのかすらもわかっていないはずです。
太陽放射管理は地球全体の気候システムに介入することになると思われます。その影響を予測できますか?副作用についてはどうですか?いったい誰が管理するんですか?特定の国が他国に断りもなく一方的に利用したらどうなりますか?気候への介入が気候紛争につながってしまう可能性は?
「リスクが大きすぎるので、やっぱりやめた方がいいな」と考えたくなるかもしれませんが、太陽放射管理が世界の気温を迅速に下げる唯一の方法で、どうしても必要であることがわかるかもしれません。ひょっとしたら気温上昇を1.5度以下に保つにはこの方法しか残されていないかもしれません。
恐ろしくて危険なので、その代替になる手段がもっと悪いものでもない限り、正気な人は考えもしないと思います。こんなことをやる方がやらないよりもマシかもしれない世界に生きているという事実と向かいあえば、眠れない夜の原因がわかるんじゃないですかね。
Gernot Wagner(ニューヨーク大学)
私を眠れなくさせている最大の原因は、ほとんど準備をしないままで世界が地球工学に移行しようとしていることです。これは科学だけの問題じゃありません。特に政策づくりとそのための政治的議論は困難を極めると思います。まだ何も決まっていない地球工学を生産的で望ましい方向に導くには、賢明で積極的な政策が必要です。
訳者が米大学院で地球科学を学んでいた6年ほど前には、地球工学が話題にのぼることはあっても、気候変動対策の主要なオプションとして議論されることはありませんでした。むしろ「人類が存続するための最後の手段になるまでやっちゃいけないこと」と考えられていた気がします。それが、いまではこんな風に議論されるようになっちゃったことが、気候危機の深刻さを物語っていると思います。
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2020-05-22 11:00:00Z
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