2023年創立100周年を迎えたワーナー・ブラザース。映画のほかテレビシリーズやアニメーション、ゲームの製作からIP(知的財産)のライセンスなど、あらゆる側面で業界をリードし、「最高のストーリーテラーを目指し続ける」同社の戦略を、日本代表の高橋雅美氏に聞く。後編では、6月オープンの目玉事業「スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」を実現させた経緯から、ローカルプロダクション、配信事業まで、日本独自の展開を掘り下げていく。
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高橋雅美(たかはし・まさみ)氏
ワーナー ブラザース ジャパン合同会社 社長 兼 日本代表
1959年生まれ、東京都出身。広告会社、コカ・コーラを経て、2000年からエンターテインメントビジネスに従事。ディズニー時代はスタジオマーケティングのヘッドとして『アナと雪の女王』『ベイマックス』などのディズニーアニメーションビジネスの再構築をリード。2015年、ワーナーブラザースジャパンに参加。16年に社長兼日本代表に就任。360度ビジネスを標榜し、『ハリー・ポッター/魔法ワールド』等のフランチャイズビジネスの構築、邦画、アニメを含むローカルコンテンツ制作の強化、ハリー・ポッタースタジオツアーによるエクスペリエンスビジネスの立ち上げ、ゲームやデジタルビジネスの強化などに取り組んでいる。(写真/藤本和史)
――創立100周年の目玉である世界で2番目のスタジオツアー「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」は、よりダイレクトに映画につながる、新たな体験エンターテインメントとして注目を集めています。どのような戦略のもとに、この企画を進めたのでしょうか。
「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 ‐ メイキング・オブ・ハリー・ポッター」
2023年6月16日(金)にオープン。ロンドンに次いで全世界2番目となる。映画『ハリー・ポッター』や『ファンタスティック・ビースト』シリーズの制作の裏側を学びながら、数々の素晴らしいセットが楽しめる。‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and (c)Warner Bros. Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights (c)J.K. Rowling.
高橋雅美氏(以下、高橋) この「スタジオツアー東京」の体験を説明するのはなかなか難しいのですが、他にない類のものであることは間違いありません。このツアーは、『ハリー・ポッター』や『ファンタスティック・ビースト』がどのように作られているのかを学べる場所でもある。知的好奇心をかき立てて満足させてくれる一方で、行ってみると純粋にディズニーランドなどのような楽しさもあるんですね。この両方を楽しめるところはなかなかないと思います。このユニークな楽しさは、確実に新しい体験と言えるものです。
企画が始まったのは5~6年前で、準備期間は長くかかりました。ワーナー・ブラザース創立100周年に向けて、みんなで何が必要だろう、どういうものをやりたいかということを考え、ぜひこれまでにない体験型ビジネス「スタジオツアー ロンドン」を日本でやりたいと。本社でも、どの国でやろうかと考えていたと思うのですが、最終的に日本となったのは、日本にはファンが多い、今後のインバウンドが期待できるなどの理由はありますが、やはり個々の日本のスタッフの熱意、パッションがあってのこと。中長期的にフランチャイズを成長させたいというビジョンもあってこそ、これほど大きな企画を持ってくることがかなったのだと思います。
そもそも我々がこの企画を進めた理由の1つには、映画もそうですが、これからは体験ビジネスが大事だと考えているからです。体験することで、その世界がさらに好きになる。その意味では「スタジオツアー東京」は絶対に必要なものだと思いました。
例えば、23年2月に発売されたゲーム『ホグワーツ・レガシー』は、世界で1500万本以上売り上げを記録、日本でも大ヒットしています。実際みんなどうやって遊んでいるかというと、ホグワーツのお城の中を探検して歩いて謎解きをする没入感の高いRPG(ロール・プレイング・ゲーム)なんですね。ゲームで『ハリー・ポッター』の世界を体験することによって、きっと多くのファンがスタジオツアーに行きたくなるでしょう。そしてスタジオツアーに行くと、今度はまたゲームをやりたくなる。あるいは映画を見ればスタジオツアーに行きたくなるし、スタジオツアーで映画の裏側を知れば、今度は映画だけでなくまた原作を読み返したくなるかもしれない。
実際に舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』やゲームがあることで、22年末からNetflixの見放題に出した『ハリー・ポッター』シリーズが、日本の映画ランキングトップ10を独占するという日が続きました。僕らはこうした展開を「360度ビジネス」と言っているのですが、『ハリー・ポッター』は本や映画、ゲーム、舞台、テレビ放送などの相乗効果によって、まだまだ伸びるIP、フランチャイズ・ビジネスなのです。同時に、この相互の行き来、循環を途切れさせないということが『ハリー・ポッター』のビジネスをもう一段上に持っていくためには重要で、その意味でも「スタジオツアー東京」が必要だと考えました。
――世界で2番目となる「スタジオツアー」に東京が選ばれたこともそうですが、世界から見たワーナー・ブラザースにおけるジャパンの立ち位置としては、何が期待されているのでしょうか。ローカルコンテンツ部門の邦画、アニメーション作品について、どのような試みや展開を考えていらっしゃいますか?
高橋 先にもお話ししたように、ワーナー ブラザース ジャパンのユニークなところはディストリビューターであると同時にプロデューサーでもあることです。もちろん、ビジネスモデル的に言えば米国に本社がある会社ですから、米国で作ったものをマーケティングして世界で大きく広げる、マネタイズしていくことの一翼を我々は担っているわけですが、それだけではなく、日本で作ったもので世界に向けてビジネスをしていく、つくることと売ることの両方をやっているというのが大きい。戦略としては、バランス的につくるほうを、もっともっと上げていきたいなと考えています。
実際のところ、今もアニメーションに関しては収益的には海外の方が多いんですよ。ですから、これからの展望としては、やはり海外でヒットする、海外の多くのお客様にも見ていただける実写作品をつくっていきたいです。
ご存じのように映画『THE FIRST SLAM DUNK』が中国などでも大ヒットしていますが、10年前はいくら日本のアニメーションが人気だといっても、世界ではまだまだ一部の日本好きが中心の、ニッチなマーケットだったと思います。でも今は、それがメインストリームになってきている。これに続いて、次は日本の実写作品が世界でメインストリームになったら素晴らしいことだと思います。
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2023-05-31 15:00:00Z
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