すばる望遠鏡などの観測により土星の衛星が新たに63個発見され、総数が146個となった。
【2023年5月29日 ブリティッシュコロンビア大学/すばる望遠鏡】
今月上旬から、国際天文学連合小惑星センターの小惑星電子回報で土星の新衛星の発見が相次いで報告された。3日の6個を皮切りに、5日(3個)、6日(7個)、7日(5個)、8日(10個)、9日(3個)、10日(7個)、15日(17個)、16日(4個)と毎日のように報告が続き、23日(1個)まで計63個の発見が公表された。これで土星の既知の衛星数は146個となり、昨年末から今年2月にかけて15個増えて95個になったばかりの木星の衛星数を大きく上回った。
今回公表された土星の新衛星の約半数は、米・カーネギー研究所のScott Sheppardさんたちの研究チームが2004年、2005年、2006年、2007年に米・ハワイのすばる望遠鏡に搭載されている超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam」で撮影したデータから発見し、2019年と2021年にハワイのカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)による観測で確認されたものだ。残り半分は、台湾中央研究院天文及天体物理研究所のEdward Ashtonさんたちの研究チームが、同じくCFHTを使って2019年から2021年に取得した観測データから発見した。
新衛星は26等程度と非常に暗く、大きさは推定2km程度ととても小さい。大きな親衛星が他の天体と衝突し破壊されてできたものとみられており、今でも破壊される前の親衛星と同じような軌道を保っている。その軌道をもとにした推測から、親衛星の数は少なくとも5~8個だったと考えられる。見つかった衛星のほとんどが逆行衛星(土星の自転と逆方向に公転している衛星)で、過去1億年の間という天文学的には比較的最近に形成されたとAshtonさんたちは考えている。
「私たちの観測では、土星の衛星については直径約3kmのものまで、地球により近い木星については、さらに小さな約2kmのものまでを、それぞれ完全にとらえていると考えています。土星の周りでは木星より多くの衛星が見つかりましたが、まだ完全には見つかっていない直径約3km以下の小さな衛星が数多く存在している可能性があります。実際、土星の周りには他にもたくさんの小天体が検出されていますが、その確認にはさらに観測が必要です」(Sheppardさん)。
将来の土星探査計画で、巨大な惑星に取り込まれた天体の生き残りである衛星を間近に観測できれば、惑星を作る材料となった始原的な物質の理解につながる重要な情報が得られるかもしれない。「それが、土星の衛星をもっと見つけたい理由の一つです。十分な数が見つかって、どれかが探査機が飛行する軌道近くに位置していれば、探査機が土星系の外側から内側を通過する間に、その姿をクローズアップで撮影できます」(Sheppardさん)。
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2023-05-29 12:12:41Z
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