2023年1月19日の記事を編集して再掲載しています。
NASAは、今後の宇宙探査をサポートするSFのような壮大なアイデアを幅広く募っています。そのためにあるのが、採択した初期段階にある研究に対して、技術の実現可能性の検証をするための資金を提供するというNASAの革新的先進概念(NIAC)プログラム。同プログラムが2023年のフェーズIの対象となる技術概念を選びました。
NASAは2023年のフェーズIに採択された14の研究チームに、それぞれの技術概念を発展させる資金として17万5000ドル(約2250万円)を提供すると発表しています。14組のうち、NIAC初受領となったのは10組。フェーズI研究は準備段階的なもので、9カ月間の研究期間で終えなくてはなりません。
NIACプログラム高官のMichael LaPointe氏は、プレスリリースにてこう語っています。
「初期のフェーズI NIAC研究は、このような未来的な構想が今後の宇宙探査のケイパビリティの土台となって素晴らしい新ミッションを可能にするかどうかをNASAが決定する際に役立ちます」
フェーズIで成功した技術概念のいくつかはフェーズIIに進み、研究者たちはさらなる研究資金と2年間の研究期間が与えられ、野心的な構想をさらに発展させていきます。フェーズIIIまでたどり着けるのはほんの一握りだけ。
NIACの助成金は宇宙を中心とした興味の対象を幅広く網羅しているもので、2023年もその点に変わりはありません。地球及び宇宙科学、宇宙探査、そして同局にとって特に重要なアルテミス計画(NASAが持続可能で長期的な月の再訪を目指す)のスケジュールを進めることとのバランスが取られています。いくつか見てみましょう。
TitanAir
このとき採択された技術概念の中でも特に人目を引いたのが、Planet Enterprises社の惑星科学者Quinn Morley氏によるTitanAirプロジェクトです。土星の衛星タイタンを探査する構想は以前からいろいろと提案されており、NASAは既にドラゴンフライミッションを準備しているところです。しかし、自律型のTitanAirは悠々とタイタンの厚い大気を飛び、メタンの湖を滑走できる“空飛ぶボート”ということで、レベルの違う発想となっています。
TitanAirは水上機から航空機へとシームレスに変化するはずで、Morley氏は毎日飛ばすことを想定します。タイタンの複雑な大気の試料採取に加え、液体のサンプル収集・分析も行なうそう。タイタンには前生物的有機化学があるかもしれないため、宇宙生物学的な関心の的となっています。油っぽい湖は問題となるかもしれませんが、その対策も考えられているとのこと。
メガコンステレーションによる巨大天文台
NASAは、マサチューセッツ工科大学のMary Knapp氏が提案した長波長のための巨大天文台(Great Observatory for Long Wavelengths、GO-LoW)コンセプトにも興味を持ったようです。この宇宙天文台は、太陽−地球系のラグランジュ点(L5)で稼働する数千の同一衛星で構成される模様。100kHz~15MHzの電波を検出することで、衛星の大群は遠方にある太陽系外惑星の磁場の研究し、地球と似ている系外惑星の発見につながるかもしれません。
「SpaceXや打ち上げ用ロケット市場への新規参入企業たちが、メガコンステレーションの背後にある製造のイノベーションと経済の規模を通して、市場の低コスト化を推し進めた」というKnapp氏。「この早く失敗、安く失敗のアプローチはこれまでの慣例からの思い切った脱却」だと説明しています。
ペレットビーム推進
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の機械工学・航空宇宙工学のArtur Davoyan助教が提案したのは、重量のある宇宙機を太陽系の全域、さらには星間空間にあるターゲットへと輸送するペレットビーム推進システムという技術概念。レーザーアブレーションで生み出される微細な超高速粒子のビーム“ペレットビーム”を用いて、宇宙機を目的地へと推進させます。他の技術概念とは異なり、ペレットビームでは重量のある宇宙機の輸送を可能にするので、Davoyan氏いわく「可能なミッションの範囲を大幅に増やす」とのこと。
ペレットビーム推進でなら、ペイロードを外惑星へは1年足らず、天文単位(au)の100倍の距離へは3年ほど輸送できると同氏は主張。今回の研究では、ペレットビームで1トンのペイロードを500au先へと20年未満で移動できるかという有用性を調べます。参考までに冥王星は地球から35.6auほどで、45年前に打ち上げられたNASAのボイジャー2号は今や地球からおよそ133au離れているそう。
月の南極に酸素パイプライン
NASAのアルテミス計画における優先事項は、月上での持続可能な駐留拠点の維持で、月のレゴリス(土壌)から酸素を抽出するなど、現地で入手可能な資源で打開できそうな課題です。ヒューストンにあるLunar Resources社のPeter Curreri氏も同じ考えですが、NASAの現在の計画は気に入ってないようで、こう説明しています。
現在出資されている現地での酸素抽出の試みは、酸素を圧縮ガスタンクへ充填、もしくは液化してデュワー瓶への貯蔵で成り立ってます。使用するにはどちらのアプローチも、タンクやデュワー瓶をさまざまな施設へとトラックで運ぶ必要があります。この酸素を月面車で輸送するプロセスの方が、抽出するプロセスよりもエネルギーを大量に消費します。それに資源抽出エリアが人間の居住地や液化プラントから遠く離れている点からしても、月面で使われる現地調達酸素の入手における最も費用がかさむ面だと考えられています。
代わりにCurreri氏が提案するのは月のパイプラインで、酸素を抽出できる資源のある月の南極に建設されるそう。このコンセプトがNASAの目に留まり、フェーズIの研究助成金を得ました。
このパイプラインは、居住者が貴重な酸素を常時入手できるようにし、点在する居住地をつなげます。「推し進められたことのない月のパイプラインが、アルテミス計画の月面オペレーションに革命を起こし、コストとリスクを削減する」とCurreri氏はコメントしています。
火星でレンガを作るプロジェクト
NASAは火星も視野に入れているので、ネブラスカ大学リンカーン校のエンジニアCongrui Grace Jin氏による、レンガを地球から輸入するのではなく火星で作るというアイデアも採択しました。確かに入植者たちは火星で建造物を建てる必要がありますが、それには別のミッションで資材を打ち上げなくてならず、コストも膨らみます。Jin氏の研究はもっと実用的で、「既成の仕上げ用部品を火星に輸送するのではなく、藍藻や菌類を建築用接着として使った現地での建設工事で住居の仕上げを行なえると提案」しています。
上記の微生物が生成するバイオミネラルとバイオポリマーで火星の土壌をくっつけて建築レンガを作るそう。「このような自己成長する建築レンガでのちに床、壁、間仕切り、家具などさまざまな建造物を組み立てられる」とJin氏は書いています。
これらはNASAが2023年のNIACで資金提供した14ある技術概念のほんの一部で、残りの研究提案の詳細はこのページに掲載されています。NASAの正式なミッションというわけではないので、全部のアイデアが実を結ばずに終わるかもしれませんが、できればこういった構想が実現する未来であってほしいですね。
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2024-02-20 07:35:00Z
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