宇宙大国の復権へ、米国は大きな足がかりをつかんだといえそうだ。飛行士が乗る宇宙船の打ち上げに9年ぶりに成功し、有人宇宙飛行の再開を果たした。
米国は戦後、月面着陸や国際宇宙ステーションの建設など宇宙開発競争の先頭に立ってきたが、2011年、スペースシャトルが退役。自国から人を宇宙に送り出せなくなっていた。
今回、成功したのは新型の宇宙船「クルードラゴン」。フロリダ州のケネディ宇宙センターからファルコン9ロケットで打ち上げられ、国際宇宙ステーションに到着した。
スペースシャトル時代との大きな違いは宇宙船もロケットも米宇宙企業スペースXが開発し、打ち上げたことだ。米航空宇宙局(NASA)が発注していた。
民間の有人宇宙船が宇宙ステーション入りしたのは初めてという。宇宙飛行の新たな時代の幕開けを印象付けるものであり、コロナ禍で世界が意気消沈する中、夢のあるニュースとなった。
宇宙飛行の民間移行はコスト削減などを狙い、各国で進んでいる。特に米国は宇宙ベンチャーが相次いで誕生し、宇宙ステーションへの無人輸送や人工衛星の商業打ち上げなどに成功してきた。
高い安全性が問われる有人宇宙船は慎重な開発や実験が続けられていたが、スペースX社が実現。同社は上空で切り離したロケットの1段目を地上に着陸させる技術も確立しており、ロケットを使い捨てにせず再利用すれば、さらなるコスト削減が期待できるという。
気になるのは米国が今後、宇宙開発をどのように進めるかだ。
米政府は24年に有人の月面着陸、その先に月の軌道上への宇宙基地建設、有人の火星探査も計画している。トランプ米大統領は「宇宙で1番になる」と宣言し、有人宇宙飛行などに力を入れる中国に強い対抗心を見せている。
国際宇宙ステーションは米国を中心にロシア、欧州、日本などが連携し維持管理や研究に当たっている。冷戦時代、激しい宇宙技術競争を繰り広げた米国とロシア(旧ソ連)が手を携えたことは、平和な宇宙開発の象徴ともいえよう。
トランプ氏にはこうした連携を後退させないよう望みたい。中国も独自の宇宙開発を進めるが、宇宙の探求や利用の独占は許されまい。米中も連携を目指していくべきだ。
宇宙開発は経費が莫大(ばくだい)になる。民間技術でコスト削減が進めば、各国も連携しやすくなる。民間移行の効果は一層の国際連携にもつながるものでありたい。
今回の打ち上げは試験機で、米国は8月にも運用段階の1号機を打ち上げる。早速、日本人の野口聡一飛行士が搭乗予定であるのは心強い。
スペースX社の成功が刺激になり、各国の宇宙企業も開発に力が入ることだろう。日本の宇宙ベンチャーにもさらなる奮闘を望みたい。
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2020-06-07 23:00:00Z
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