これは来年にかけて、またApple Watchユーザーが一気に爆発しそうだな──これがApple Watch発表会を見ての筆者の感想だ。Apple Watchは、既に世界で最も売れている腕時計だ。しかも、拡大の勢いは衰えず、現在でも購入している人の半数以上は初めての購入者だという。
まだApple Watchを持っておらず、どんなことができるかを知りたい人には、ぜひとも4月に書いた5周年を振り返る記事を参考にしてもらえればと思う(5つの視点で振り返る「Apple Watch」のすごさ)。
この記事の後半で触れているが、Apple Watchは利用者の心身の健康を促進し、時には命すら守ってくれるのが大きな特徴だ。あえて「心身」と心にも触れたのは、この製品が「スマートフォン依存」や「情報中毒」など、デジタル時代特有の心の病にも切り込んだ製品だからだ(先の記事を参照して欲しい)。
そう考えるとコロナ禍の2020年は、健康促進というだけでApple Watchへの関心が高まっている部分がある。実際、筆者の親しい友達も、このコロナ禍で突然ランニングを始め、iPhoneを持って走るくらいならApple Watchを買った方がいいと同僚に勧められ、今回の発表を待っていたようだ。
これに加えて、新製品の「Apple Watch series 6」には「血中酸素濃度」測定などのハードウェア機能、新OSのwatchOS 7では、質の高い睡眠を促す「睡眠」アプリや「手洗い」を補助する機能など、まさにコロナ禍での健康促進を見越していたような機能も搭載されている。
これに加えて、iPhoneを持たない子供やシニアも他の家族のiPhoneを使ってApple Watchを設定できる「ファミリー共有設定」機能が搭載されるなど、購入のハードルを下げる新機能も用意された。
さて、そんな注目のApple Watch series 6とApple Watch SEの貸し出しを受けたので、さっそくファーストインプレッションをお届けしようと思う。
差別化はパッケージから始まっている
Appleが、この両モデルをどのように差別化するのかは気になっていたポイントだが、差別化は既にパッケージから始まっていた。
SEは、Apple Watchの最新の魅力をより手頃な価格(税別2万9800円〜)で提供する新しい製品だが、実は本体そのものだけでなく製品パッケージなども簡略化し低コスト化に貢献しているようだ。2製品のパッケージを比較して、改めて通常のApple Watchのパッケージは表層のエンボス加工など、非常に手の込んだ立派なパッケージだと改めて気付かされた。
パッケージを開けると、発表会で伝えられていた通りUSB電源アダプターは入っていなかった。これは既に多くの家庭で余っているUSB電源アダプターはあえて付属せず、環境負荷を減らそうというグリーン企業のAppleらしい姿勢の表れだ。
もちろん、充電用のUSBケーブルは付属しているので、これをPCなり、iPhoneに付属していた電源アダプターなりのUSBポートにつないでApple Watchを充電できる。
実はこの充電は、Apple Watch series 6の大きな魅力になっており、約1.5時間でフル充電が完了する。仕事やTV、お風呂の時間などに充電しておけば、それで翌日も使える計算だ。
watchOS 7からは「睡眠」の記録なども取れるようになる。身につけている時間が増えるだけに、これはありがたい変更だ。なお、Apple Watch SEはこれまでのApple Watch同様、約2.5時間でフル充電という仕様だ。
今回、Apple Watch series 6は新色「ブルー」のアルミケースモデルを、そしてApple Watch SEは「スペースグレイ」のモデル、そしてそれとは別に、新設計のバンド「ブレイデッドソロループ」の「インバネスグリーン(緑)」を借りた。
バックルのような機構がなく、まるでアームバンドのように引っ張って伸ばして、中に腕をくぐらせてはめる「ソロループ」系バンドは、「コロンブスの卵」的で面白いだけでなく、実際、手にはめていて快適だ(ただし、あらかじめ採寸して自分の腕にピッタリのサイズを選んでおく必要がある)。既にApple Watchを持っている人も、1本持っておいて損はないバンドだろう。
スペースグレイのApple Watch SE本体は、正直、これまでのスペースグレイのApple Watchと見た目が全く変わりなく、視覚的な面白さはない。
一方で「ブルー」のアルミケースは、買うときの勇気が試される気がした。Apple Watchの魅力は自由にバンドを変えられることだが、シルバーやグレー、ゴールドのケースならともかく、ケースにそれ以外の色がついていると、色合わせの難易度が一気に上がる気がした。
これは(PRODUCT)REDモデルも同様ではないかと思う。ただ、そもそもあまりバンドを変えなさそうな人で、赤や青が好きな人には、その分、大きな魅力を持つケースかもしれない。
Apple Watchといえば、ずっとアルミ、ステンレス、チタニウムといった素材の違いで選ばせるところがあったが、今回、SEも同じ形のアルミケースということで、軽量なアルミケースながら、「これはseries 6だ」という静かな主張をしたい人にも、こういった色付きケースはうれしい選択肢となるだろう。
注目のseries 6のみとなる限定機能
そのようなApple Watch series 6で、何といっても注目なのが血中酸素ウェルネス機能だ。血液中のヘモグロビンによって全身に送られる酸素の量を測り、呼吸器系の健康状態を探る手がかりになると目されている。
実際に測ってみると、1回目だけ腕を机の上など静かな場所に置くように計測時の注意が表示される。これを読んで計測を実行をすると、15秒の計測アニメーションに続いて「%」表示で計測値が出てくる。
1日使ってみたが、心拍数以上に数値の変化が激しい指標のようだが、健康な状態であれば95〜100%の間に収まっているとのことで、筆者も半日測った数値は最低95%、最高100%だった。
この数値が極端に下がるとどのような影響が出るのかは、発表会の記事でも書いた通り、現在まだ調査中だが、健康機器に詳しい多くの人が、身体がフィットネスで受ける影響などを測る目的で、この計測機能を渇望しているようだ。他社製品の同機能が日本で使えない中、Appleが先駆けて機能を提供したことも大きな話題となっている。
最初はおもしろくて何度か連続で測ってしまったが、それなりにバッテリー消費の大きい機能のようなので注意が必要だ。なお、この数値はアプリを起動しなくても、腕をあまり動かしていないタイミングで定期的に記録される。睡眠中も計測対象だが、寝ている間、激しく動く人は計測回数が減ってしまうようだ。
Apple Watch series 6ならではとなる、もう1つの特徴が明るい常時点灯のディスプレイだ。太陽光の下でseries 5やSEと比べたところ、他の2機種もなかなか健闘はしているが、確かにseries 6の方がハッキリと明るく盤面を読み取ることができた。
さらに、Apple Watch series 6はパフォーマンスも大幅に向上しており、アプリの起動なども従来モデルより20%ほど速いということだが、正直、Apple Watch用アプリで、そこまで起動に時間がかかるアプリがないので、ここはなかなか実感できなかったが、今後、高速プロセッサを生かして、この小さな時計の上で、より複雑な処理をこなすアプリが登場してくるのかもしれないと考えると、少し期待が膨らむ。
実は処理能力の速さ以上に大きな恩恵を受けたのが、5GHzのWi-Fiに対応したことで、アプリのインストール時間は、これまでのApple Watchと比べてかなり速くなった印象だ。
また、試すことはできていないが、Apple Watch series 6には、これまでiPhone 11 Proなどにしか搭載されていなかったU1チップが搭載されており、物の位置や方向を測位できるUWB(Ultra Wide Band)という通信技術を利用できる。現在、明かされている使い道はメルセデスベンツなどの1部の車種でApple Watchを鍵代わりにする、という使い方だけだ。
ただ、「血中酸素濃度」も「高速なプロセッサ」も「U1チップ」も、どちらかというと今すぐよりかは、これから先に新たな可能性を見せてくれそうな将来に向けた技術だ。そういう意味では、Apple Watch series 6には最新技術を真っ先に体験したい人や、技術の発展に寄与する余裕がある人がターゲットと言えそうだ(約1.5時間の充電は、すぐに得られる恩恵だが)。
もう1つは、この製品をファッションアイテムとして楽しめる人たちだろう。そうした人たちのためには、他の素材でできたケースや魅力的なNike、エルメスとのコラボモデルも用意されている。
Apple Watch SEでも十分に魅力的
新登場のApple Watch SEは、初めてApple Watchを買う人に大きな魅力を提供する機種だ。
これまで述べてきたseries 6の専用機能は利用できないし、画面は節電のためしばらく使っていないと消えてしまう(時計をのぞきこもうとすると自動的に画面がオンになる)。だが、転んで意識を失った時に自動的に救援を呼ぶ転倒検出や、海外における緊急電話、ファミリー共有設定、コンパスや高度計などApple Watchの昨年までの注目機能は全て搭載している。
ケースはアルミ素材だけ、色の選択肢も3種類だけと、本体を選ぶ楽しみこそ減るが、Apple Watchの豊富なバンドはNikeやエルメス用も含めて全て使え、十分に満足がいく体験を1万3000円近くも安い価格(Apple Watch series 6は4万2800円〜)で提供している。
血中酸素濃度や(まだ日本では使えないが、今後使えるようになる可能性がないとも言えない)「ECGM(心電図)」といった機能を聞いて、「欲しい!」と思う人以外は、ほとんどの人が、機能的にはこの「Apple Watch SE」で満足できるのではないかと思う。
Apple Watchのファッション性に注目するなら、得した差額の分を、良いバンドに投資するといった買い方もできるだろう。
通知を受けたり、ちょっとしたアプリを利用したり、ランニングやエクササイズ、日々の生活の中での運動を記録したりといった基本機能しか使わなさそうなユーザーであれば、このApple Watch SEどころか、さらに手ごろなseries 3(1万9800円〜)でも十分かもしれない。
併売される3年前のモデルとなるseries 3は、Wi-Fi通信専用でセルラーモデルがなく、画面面積も小さく、転倒検出やコンパス、騒音による耳へのダメージを計る騒音のモニタリング機能もないが、先にあげたようなApple Watchの基礎となる機能は一通り対応している(ただし、個人的にはやはりSE以上を勧めたい)。
ちなみに3年も前のモデルが現役製品として認められている点も、寿命が短くすぐに価値が半減してしまう他社製品に対するApple Watchの大きな魅力の1つと言えるだろう。
価格的にも、ファミリー共有設定などの初期設定の条件にしても、より買いやすくなったApple Watch、来年に向けてさらに爆発的に利用者が増える可能性が大きいが、それだけにどの本体、どのバンドでコーディネートするか、さらにはどのフェース(盤面)でコーディネートするかのセンスは問われるようになってくると言えるだろう。
幸いにもApple Watchのバンドは最近、ビジネスとしても拡大しており、他社製のバンドもかなり種類が増えてきている。
フェースについては、watchOS 7でさらに種類が増えてきたが、個人的にはイラストレーターのジェフ・マクフェトリッジ(Geoff McFetridge)さんがデザインしたアーティストフェースと呼ばれる盤面が好き過ぎて、なかなか他のフェースに切り替えができなくなってしまったが、筆者は夕暮れの光で写真を撮るのが好きなので、「Lumy」という光のきれいなゴールデンアワーが何時から始まり、何時まで続くかを教えてくれるアプリのコンプリケーションを入れたフェースも用意し、必要に応じて切り替えて使っている。
世界中に数億人のユーザーがいるiPhoneが1台1台、インストールされているアプリも画面の設定も異なるように、Apple Watchも使う人の仕事や趣味趣向によって、千差万別にカスタマイズできる製品だ。
1度、買って自分だけのカスタマイズをしたら、なかなか手放せなくなってしまうので、その点だけは覚悟した方が良い。
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2020-09-17 13:00:00Z
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