2020年7月に行われたお披露目の時点では,ROG Phone 3が日本の技術基準適合証明(以下,技適)を取得していなかったので,外観と機能の概要を紹介できただけだった。しかし今回は,国内向けモデルによる製品の詳しい紹介や性能テスト,および専用周辺機器のハンズオンをお届けしたい。
最大リフレッシュレート144Hz表示に対応したディスプレイパネルを採用
本製品は,ディスプレイに約6.59インチサイズで,解像度1080×2340ドット,横持ち時のアスペクト比がアスペクト比 9:19.5の有機ELパネルを採用する大きめのスマートフォンだ。ディスプレイ周囲のベゼルは細く,インカメラや前面装備のセンサーは,本体上部のベゼル部分にまとめている。そのおかげで,ゲーム画面では邪魔になるノッチ(切り欠け)がなく,ディスプレイ全体を表示領域として利用できる。
ディスプレイの最大リフレッシュレートは144Hzである。リフレッシュレートは,ランチャーと設定ユーティリティを兼ねた「Armoury Crate」から,60Hz,90Hz,120Hz,144Hzの4段階で切り替え可能だ。また,表示するコンテンツに応じて,自動でリフレッシュレートを変更する設定もある。ゲーム側の表示設定を切り替えたときに,追従してくれるので,端末側の設定をいちいち変更しなくて済むのは実用的で評価できる。
そこで,ザウルスが販売する連射装置「SMATCH」を使い,連射測定アプリケーション「ぺしぺしIkina」を使ってディスプレイの応答速度を計測してみた。SMATCHの連打設定を,1秒間に20回として試したところ,途中でカウントが止まることなく,10秒間で200回という結果となった。SMATCHの設定は,1秒間に20回が最高であるため,これ以上の計測はできない。このくらいの応答性能があれば,連打が求められるゲームや,とっさの操作にも十分に対応できるだろう。
X ModeはCPUの動作クロックなども調整可能に
ROG Phone 3では,ゲーム向けの最適化モードである「X mode」を利用して,Snapdragon 865 Plusの性能を,最大限まで引き出すことが可能だ。ROG Phone IIまでのX Modeは,バックグラウンドアプリの使っていたメモリを解放してゲームに割り当てるものだった。それに対してROG Phone 3のX Modeは,Armoury Crateの設定を一部取り込んで,CPUの動作クロックやディスプレイのリフレッシュレート,タッチサンプリングレート,ネットワークの設定をゲーム向けに調整できるようになった。
また,X Modeでは,CPUの最低動作クロックや最大動作クロックなど,50項目を上回るハードウェアのパラメーターを自分で調整することも可能だ。ただし,PC用マザーボードのオーバークロック設定のように,ある程度の知識が必要となるため,基本的にはプリセットを利用するので十分と思える。
ROG Phone 3の性能をベンチマークテストで検証
ROG Phone 3が採用するSnapdragon 865 Plusは,Qualcommが2019年12月に発表した「Snapdragon 865」をベースとして,CPUの動作クロックを,最大2.84GHzから最大3.1GHzへと引き上げたクロックアップモデルとなる。Qualcommによると,Snapdragon 865 Plusは,Snapdragon 865と比べて,CPU性能およびGPU性能が10%向上したそうだ。。
Snapdragon 865 PlusがQualcommが主張するような性能向上を実現しているか,ベンチマークテストで確かめてみよう。今回は,比較対象としてSnapdragon 865を搭載したゲーマー向けスマートフォン「RedMagic 5」を用意した。RedMagic 5は,CPUおよびGPUの動作クロックを引き上げる「Game Enhancement」機能を備えているので,ROG Phone 3は通常時とX Mode有効時,RedMagic 5も通常時とGame Enhancement有効時で,それぞれテストした。さらにROG Phone 3のX Modeは,Lv2とLv3に分けて検証を行っている。
まず総合テストである「AnTuTu Benchmark v8.4.3」の結果から,総合スコア(Overall)とCPU,GPU,MEM,UXの4項目をまとめたものがグラフ1となる。いずれも総合スコアは60万を越え,優れた性能がうかがえるのだが,通常時のROG Phone 3とRedMagic 5の間では,スコアの差はほとんどない。
X Modeを有効にすると,通常時のROG Phone 3およびRedMagic 5と比べて,7%ほど性能が向上していることが分かる。特にGPUテストで,有意なスコアの向上を確認しており,それが総合スコアに反映されたのだろう。なお,X ModeのLvがスコアに与える影響は確認できなかった。
続いて,定番の3Dグラフィックスベンチマークアプリである「3DMark」から,Sling Shot Extremeテストの結果をまとめたものがグラフ2となる。なお,RedMagic 5のテストレポート(関連記事)で行った検証と同じく,Vulkan APIベースのテストが完走しなかったため,OpenGL ES 3.1ベースのテスト結果のみとしている。
ROG Phone 3は,RedMagic 5と比べて,総合スコアとGraphics Scoreで,およそ10%の性能向上が確認できた。一方,X Modeの有効/無効でスコアの差はない。こちらでもX ModeのLvによるスコアの差は確認できなかった。
すると,AeroActive Cooler 3を装着した場合では33.8℃,はずした場合では36.4℃となり,空冷ファンによる冷却効果を確認できた。ただし,30分や1時間にわたって高負荷のテストを実行すると,AeroActive Cooler 3を装着していても,SoC温度はかなり上がるので,過信は禁物だ。
側面タッチセンサー「AirTrigger」がより多機能に
ROG Phoneシリーズは,横持ちしたときに,ゲームパッドのショルダーボタンのような感覚でゲームを操作できる側面タッチセンサー「AirTrigger」を備えるのが特徴だ。ROG Phone 3では,これが「AirTrigger 3」に強化されており,より多彩な操作が行えるようになった。
従来は,単純なタッチ操作や横方向へのスライド操作が可能だったのだが,AirTrigger 3では,新たにスワイプ操作や長押しでの連射機能,センサーが反応する領域を2つに分けて,それぞれに対して異なる操作を割り当てられる「デュアルパーティションボタン設定」にも対応している。
実際に試してみたところ,連打機能は間違いなく便利だ。ジャンルを問わず,さまざまなゲームで利用できるだろう。また,デュアルパーティションボタン設定も,単純に操作を割り当てられるボタン数が増えるので,幅広い用途で利用できそうだ。
ただし,センサーが反応する領域を2つに分けると,1つ当たりの領域が狭くなり,誤タッチする可能性が増す。どの操作を割り当てるのか吟味が必要になる。
また,これらの機能は,ゲームによってはハードウェアチートになりうるため,事前に各ゲームの利用規約を確認することをオススメする。
「Game Genie」にも新機能が追加
ゲームプレイ中でも呼び出せる設定パネルの「Game Genie」にも,新しい機能が追加された。
ROG Phone 3のGame Genieでは,以下のようなゲーム向け機能をまとめて設定可能なのだが,このうち赤字で表示するのが新機能である。
- アラートなし:ゲームプレイ中の通知を制限
- 着信拒否:ゲームプレイ中の着信を拒否
- 明るさを固定:ディスプレイの輝度を固定
- リアルタイム情報:CPUやGPUの使用率,システム温度,バッテリー残量,ディスプレイのフレームレートを表示
- ナビブロック:画面上部をスワイプしての設定画面呼び出しを制限
- ショートクリップ:あらかじめ設定した秒数の短いプレイ動画を録画
- リフレッシュレート:ディスプレイのリフレッシュレートを自動,60Hz,90Hz,144Hzの4段階で切り替える。
- データのみ:音声通話を制限
- 最適化:ゲーム以外のアプリが使用中のメモリ領域を開放する
- AirTriggers:プレイ中のゲーム内におけるAirTriggers 3の動作モードを設定
- キーマッピング:ゲームパッドのボタン割り当てを行う(ゲームパッド接続時のみ表示)
- マクロ:マクロを設定する
- 録画:プレイ動画を録画する
- クロスヘア:画面中央に照準を表示
- ライブ:ゲーム動画を配信する
- ロックタッチ:アプリの動作を継続しつつ,画面をロックする
- フローティングウインドウ:ゲームの画面内に別アプリの画面を表示する
新機能のうち,とくに面白いのはフローティングウインドウ機能だろう。これは,あらかじめ設定したアプリの画面を,プレイ中のゲーム画面にPicture in Picture(PiP)の形で表示するものだ。ゲームをプレイ中にWebブラウザで調べ物をしたり,YouTubeやTwitchなどで動画を視聴できる。
FPSのようなゲームは別として,たとえば,周回プレイがメインのRPGを,SNSや動画を見ながら,遊ぶこともあるだろう。そういうときに1台のデバイスで完結できるのは,意外に便利だ。フローティングウインドウ機能で,表示可能なアプリ数は最大4つまで設定可能だ。
現時点ではPUBG MOBILEの90fps表示に対応せず
実際のゲームにおける動作の検証として,「PUBG MOBILE」をプレイした。
前世代モデルのROG Phone IIは,画質設定の「クオリティ」で「HDR」にしたときでも,「フレーム設定」で60fps表示の「極限」を選択できたのだが,ROG Phone 3では,画質設定を「標準」以上にすると,40fps表示の「ウルトラ」までしか選択できない。極限でプレイするには,画質設定を「スムーズ」にしなければならなかった。
また,PUBG Mobileは,2020年9月8日に提供を開始した最新バージョンにおいて,90fps表示に対応した。RedMagic 5など一部の対応スマートフォンでは,すでに90fps表示によるプレイが可能なのだが,ROG Phone 3は,前述のとおり,スムーズでも60fpsまでに留まっている。
ASUSはこの件について確認を行っているようで,ユーザーフォーラムの書き込み(関連リンク(英語))によると,端末に問題はなく,近いうちに90fps表示に対応するとのことだ。おそらく,ゲーム側での検証が済み次第,高フレームレートでのプレイが可能になると思われる。
この点以外の問題はなく,タッチ操作の応答性もよく,端末上でプレイ動画を録画しながらでも,コマ落ちすることなく快適にプレイできた。とくに気に入ったのは,本体の内蔵スピーカーだ。出力が高く,音量設定を下げた状態でも,ある程度の音量が確保できる。さらに,スピーカー孔が本体の側面ではなく,ディスプレイ面にあるため,指でふさいでしまうことがないのも好印象だった。
また,ROG Phone 3はROG Phone IIと同じ容量6000mAhのバッテリーを内蔵している。スムーズおよび極限という設定で,30分ほどプレイしても6〜7%のバッテリー消費で済んでおり,バッテリー駆動時でも数時間は余裕でプレイ可能だろう。
周辺機器もROG Phone 3対応に刷新
ROG Phone 3の国内発売に合わせて,専用の周辺機器も発売となる。今回はこのうち,2画面ゲーム機化する専用ドック「TwinView Dock 3」と,本体に取り付けられるゲームパッド「ROG Kunai 3 GamePad」(以下,Kunai 3 GamePad)を実際に試した。
なお,TwinView Dock 3は,ROG Phone 3と同日の9月26日,Kunai 3は10月以降の発売を予定しており,メーカー想定売価は順に,2万6800円(税込2万9480円),1万980円(税込1万2078円)となっている。
TwinView Dock 3は,ROG Phone 3と同じ約6.59インチ,解像度1080×2340ドットのディスプレイを搭載したドックだ。ROG Phone 3を下側にはめ込むと,ドック側のディスプレイは上側に来るスタイルは,既存の「TwinView Dock II」を踏襲している。
最大リフレッシュレートを120Hzから144Hzへと強化した以外,従来製品との違いはない。
「Asphalt 9:Legends」のような対応ゲームタイトルでは,レース中の画面とコースの見取り図を,それぞれのディスプレイに表示可能だ。また,Androidのマルチウインドウ機能によって,複数のアプリを表示できる。例えばゲームとSNS,ゲームと動画配信サービスを同時に利用するときは,TwinView Dock 3と組み合わせた方が,Game Genieのフローティングウインドウよりも快適だろう。
一方のKunai 3 GamePadは,前世代の「ROG Kunai GamePad」から,アナログスティックとボタンのレイアウトを変更した。従来は,スティックをパッド正面の上部に配置していたが,Kunai 3では,右パッドのスティックが正面下部に移動して,Xbox純正ゲームパッドのような非対称配置になった。
なお,ROG Phone IIでも,TwinView Dock 3とKunai 3 GamePadは,利用できる。ただし,その場合のリフレッシュレートは,ROG Phone IIと同じ120Hzに制限されるという。
機能面の充実が光るROG Phone 3
ROG Phone 3は,前世代製品からSoCやディスプレイといったハードウェアが大きく進化しており,競合のゲーマー向けスマートフォンと比べても,1歩抜きん出たスペックを備えている。しかしそれ以上に注目すべきは,ソフトウェアを中心とする機能面の強化と言えよう。
たとえば,現在のゲーマー向けスマートフォンにおいて,本体側面のトリガーボタンは標準的な機能だが,競合製品が単純なタッチ操作のみなのに対して,ROG Phone 3は,タッチやスライド,スワイプなどの操作にも対応している。また,フローティングウインドウといった機能もユニークだ。
中にはどんな場面で使えるか,すぐには思いつかないものもあるのだが,とにかくハイエンドスマートフォンとして,あらゆる機能を盛り込もうという気持ちが伝わってくる。
見どころは間違いなく豊富な一方で,価格面のハードルは極めて高いように思う。スペックや機能は上回るとはいえ,競合製品がおよそ税込約7万円程度で購入できる状況にあって,下位モデルでも税込13万円を超えるROG Phone 3の価格設定は,熱心なゲーマーといえども手が出しにくい。
ASUSが,価格面での不利を巻き返せるような価値を提案できるか。引き続き注目したい。
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2020-09-23 10:09:29Z
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