いま注目のFPSゲーム「Tarkov」
オンラインFPS/TPSといえば、バトルロイヤル系というジャンルを築いた「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」や建築+アクションという新要素で人気を集めた「Fortnite」、さらにミリタリー要素を濃くした「Call of Duty」や「Battlefield」系のタイトルが思い浮かぶ。こうしたゲームにおけるプレイヤーのデスペナルティーは、おおむね参加しているマッチから脱落する程度に抑えられている。その意味では気楽に遊べるのが売りだが、何か物足りないと考えているプレイヤーもいるだろう。
そんななか、Battlestate Gamesが開発中のFPS「Escape from Tarkov」は、前述のタイトルよりもサバイバルとリアリティーに寄せたゲームデザインで話題を呼んでいる。
舞台は無秩序が支配する架空の都市「Tarkov(タルコフ)」。プレイヤーはPMC(いわゆる“民間軍事会社”)とSCAV(武装集団。Scavenger)のどちらかの陣営からスタートするが、目的はTarkovから戦利品を回収し無事に脱出すること。ここまでならただの宝探しだが、Escape from Tarkovでの死は装備の剥奪を意味する。
また銃をリロードしたらフル装填されたマガジンに交換されるのが一般的なFPS/TPS系ゲームのお約束だが、Escape from Tarkovではマガジンにあらかじめ銃弾を込めておかねばならない。腰だめ射撃はほぼ役に立たず、しっかりADS(Aim Down Sight:照準を覗いて撃つ)を使わないとダメなど、銃器の扱いもかなり現実に寄せている。持ち帰った戦利品で買い物をして装備を集めるとか、隠れ家をグレードアップするなどのRPG要素もあるので、生き残るために全力で頭を働かせるゲームとなっている。
ただ、海外発のゲームで、日本語化されていないなどもあり、このゲームを快適に動かすのに必要なスペックについて、まだ情報が少ない。そこで今回はパソコン工房が販売する「iiyama PC」のゲーミングPC「LEVEL∞」をベースに、Escape from TarkovがどのCPUとGPUの組み合わせならある程度快適に楽しめるのか検証してみたい。ベンチマークに費やしたセッション数約400回で見えてきたEscape from Tarkovを快適に楽しめるPCスペック選定のコツを伝授しよう。
Intel & AMDプラットフォームそれぞれで検証
ゲームの紹介はこの程度にして、早速検証の内容について解説したい。今回は原稿執筆時点におけるゲーミングPC向けCPU 6種類とGPU 10種類をどう組み合わせたら、Escape from Tarkovのフレームレートがどの程度出せるかを調べる。検証のベースとしてユニットコムが販売するゲーミングPCから、Intel製CPUベースの「LEVEL-R040-i7-RJR」とAMD製CPUベースの「LEVEL-R0X5-R73X-DXR」をお借りし、パーツはそこに組み込んで検証している。Escape from Tarkovプレイ時はメインメモリが9GB程度消費されるので、標準搭載のメモリ(8GB)ではなく、16GB(8GB×2)構成とした。
検証のキモとなるCPUとGPUは以下のとおりだ。GPUは同社のBTOで使われるカードを中心に集めたため、単体パーツとして国内では売られていないモデルも多数含まれている点に注意したい。
- Core i9-9900K(8C16T、最大5GHz)
- Core i7-9700K(8C8T、最大4.9GHz)
- Core i5-9600K(6C6T、最大4.6GHz)
- Ryzen 9 3900X(12C24T、最大4.6GHz)
- Ryzen 7 3700X(8C16T、最大4.4GHz)
- Ryzen 5 3600X(6C12T、最大4.4GHz)
今回利用するCPU
- GeForce RTX 2080 Ti(MSI「GeForce RTX2080 Ti AERO GP」)
- GeForce RTX 2080 SUPER(MSI「GeForce RTX2080 SUPER AERO 8G」)
- GeForce RTX 2070 SUPER(型番不明)
- GeForce RTX 2060 SUPER(ZOTAC「ZT-T20610A-10B」)
- GeForce GTX 1660 Ti(MSI「GeForce GTX 1660Ti AERO ITX 6G OC」)
- GeForce GTX 1660 SUPER(MSI「GeForce GTX 1660 SUPER AERO ITX OC」)
- GeForce GTX 1650 SUPER(MSI「GeForce GTX 1650 SUPER VENTUS XS OC」)
- Radeon RX 5700XT(MSI「Radeon RX 5700XT MECH OC」)
- Radeon RX 5700(MSI「Radeon RX 5700 MECH GP OC」)
- Radeon RX 5500XT(MSI「Radeon RX 5500XT MECH 8G OC」)
今回利用するGPU
「LEVEL-R040-i7-RJR」(Intel環境)のスペック | |
---|---|
CPU | Core i7-9700 |
チップセット | Intel Z390 |
メモリ | DDR4-2666 8GB×2(標準構成から変更) |
GPU | GeForce GTX 1660 SUPER |
ストレージ | SSD 240GB+HDD 1TB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 10 Home 64bit版 |
税別価格 | 126,960円(標準構成時122,980円) |
「LEVEL-R0X5-R73X-DXR」(AMD環境)のスペック | |
---|---|
CPU | Ryzen 7 3700X |
チップセット | AMD X570 |
メモリ | DDR4-2666 8GB×2(標準構成から変更) |
GPU | Radeon RX 5700 XT |
ストレージ | SSD 240GB+HDD 1TB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 10 Home 64bit版 |
税別価格 | 166,960円(標準構成時161,980円) |
検証方法は?
Escape from Tarkovはまだ開発中のゲームだけに、まだこなれていない部分も多々ある。とくにフレームレートを見る上では計測するマップや天候の影響を受けやすい。そして雨天の場合は、晴天時よりも10fps程度下がることもめずらしくない(プレイヤーの視界に落ちる水滴表現が関連していると思われる)。
そこで今回は、計測条件をやや厳密に設定した。具体的にはマップ「The Reserve」を使用、天候は晴天もしくは曇天時のみ、ゲーム内時間で10時~17時、この条件を満たせた時のみ検証している。本来ならば戦闘時のフレームレートも見たいが、Escape from Tarkovは一度死ぬと強制クールダウン(20分)が挟まるため、敵の出現しないオフラインモードを使用した。
検証方法は一定のコースを移動した時のフレームレートを計測するというものだが、Escape from Tarkov内蔵のフレームレート計測機能は使わずに「CapFrameX」を利用して計測している。
画質「Medium」だと選択の幅がかなり広がる
続いては画質「Medium」設定で同様のテストを行なった時のフレームレートを見てみよう。
画質を2段階下げただけで平均120fpsのハードルが一気に下がることがわかる。フルHD環境ならGeForce RTX 2060 SUPER以上で確実だが、平均118fps出せたGeForce GTX 1660TiとGeForce GTX 1660 SUPERも十分合格点が出せるだろう(GTX 1660Tiと1660 SUPERの差がほとんどないのは割と見られる現象)。
RadeonだとRX 5700以上であれば確実だ。そしてWQHD環境でもGeForce RTX 2080 SUPER以上なら平均120fpsに到達できると考えてよい。CPUがCore i5-9600Kになると微妙に平均フレームレートも下がるが、基本的な傾向は変わらない。
Ryzen環境だと平均fpsが117fpsあたりで頭打ちになる。これが数カ所だけならたまたま天候や時間帯がフレームレートの出にくい組み合わせになった可能性もあるが、これだけデータが集まるとRyzenではややフレームレートが下がる傾向にある、と言い切ってよいだろう。Ryzen 9 3900XよりもRyzen 7 3700Xのほうがわずかに平均フレームレートが高いのも前の結果の傾向と合致している。
だが少しPCに詳しい人ならば、今回テストに使ったAMD環境のベースマシンに使われているメモリがDDR4-2666であるのが原因だ、と考えるはずだ。Ryzenの内部バス(Infinity Fabric)のクロックはメモリクロックと同期するため、Ryzenは高クロックメモリを使うのが性能を引き出す秘訣だからだ。そう考えると、今回検証に使った構成はRyzenに不利な条件といえるかもしれない。
そこで筆者の手持ちのDDR4-3200メモリ(G.Skill製「F4-3200C16D-16GTZRX」)と交換し、XMPで第3世代Ryzenが正式に対応する上限値、つまりDDR4-3200動作にした時にフレームレートが上がるか調べてみた。時間の都合上CPUはRyzen 9 3900X、フルHD環境とし、GPUはGeForce RTX 2080 Ti/RTX 2060 SUPER/GTX 1650 SUPERの3つを使った。
確かにDDR4-3200にするとEscape from Tarkovのフレームレートは上昇する。だがGPU性能が低いとメモリクロックを上げても目に見えるような差は出ない。上の検証ではGeForce GTX 1650 SUPERはほぼ差がなく、GeForce RTX 2060 SUPERで微差、GeForce RTX 2080 Tiだとハッキリとした効果が得られた。もちろんRyzen環境におけるメモリクロックはゲーム以外の処理でも活躍するためメモリは高クロック品を選んで損はないが、ことEscape from Tarkovに関していえば、GPUのグレードを下げるなら無理にメモリもクロックを上げる必要はないということがわかる。
超ハイエンドよりもバランスのよい構成が必要
今回の検証ではCPU 6モデル+GPU 10モデルを総当たり形式で検証したが、Escape from Tarkov側のフレームレート上限が120fpsであるため、極端なハイエンド構成は必ずしも必要としないことがわかったはずだ。
Escape from Tarkovが開発中のゲームなので今後どうなるかはわからないが、現時点ではCPUは物理8コアで十分、GPUはUltra設定ならRTX 2070 SUPER、Medium設定ならGTX 1660 SUPERやRX 5700以上であれば高リフレッシュレート液晶を活かしたフレームレートで楽しめる。RyzenよりもCore i7/i9のほうがわずかに有利だが、それは個人の好みで良いだろう。
そういった観点から、Escape from Tarkovを楽しむうえで、IntelモデルのLEVEL-R040-i7-RJR [Windows 10 Home]はフルHDのSuper画質でも平均80fpsとなっており、60Hzの一般的なディスプレイなら十分な性能を出せる。144Hzディスプレイを持っており、平均100fps以上がほしいなら、画質をMediumに落とすか、BTOでGPUをGeForce RTX 2060以上に変更すればSuperでも対応できる。
一方、AMDモデルのLEVEL-R0X5-R73X-DXRは、Intelモデルより価格が4万円高いだけあり、フルHDのSuper画質で平均110fpsを超えており、144Hzディスプレイをじゅうぶん活かせる性能となっている。
同作品を視野に入れてゲーミングPCを購入しようと考えているなら、この情報を参考にしていただきたい。
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2020-06-04 00:55:00Z
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