グーグルの「Pixel 4」と「Pixel 4 XL」は、いま購入できる最高のスマートフォンのひとつである。ほかのどの製品よりもグーグルのヴィジョンを体現しているが、決して「ベストな選択」というわけではない──。『WIRED』US版によるレヴュー。
TEXT BY JEFFREY VAN CAMP
TRANSLATION BY TAKU SATO/GALILEO
グーグルの「Pixel」シリーズは、以前から『WIRED』US版のスタッフの間で人気のスマートフォンだ。過去のレヴュー記事では「Pixel 3」を高く評価しており、実際このモデルは2018年に最も高く評価した製品のひとつだった。
また、廉価版となる「Pixel 3a」は、19年のランキングでトップに輝いている。だからこそ、「Pixel 4」でどのような「グーグルらしさ」を体験できるのか、大いに楽しみにしていた。
このほどテストしたのは、画面サイズが6.3インチでオレンジ色の「Pixel 4 XL」(標準モデルのPixel 4は5.7インチ)である。実際に使ってみたところ、これが実に素晴らしくグーグルらしい製品だった。過去のPixelのレヴュー記事と同じように「とても気に入った」のだ。
グーグル純正モデルゆえの利点
カメラの出来栄えは驚くほどである。最新プロセッサーのおかげで動作はスピーディーで、内蔵アプリや機能も素晴らしい(やや微妙な機能もあるが)。さらに、Pixelが何より優れているのは、他社のスマートフォンならしばらく待たなければいけないAndroid OSのアップデートが、公開後すぐに適用されることだろう。
グーグルはAndroidの新ヴァージョンを毎年公開している。Pixelは、その新ヴァージョンを公開後すぐに入手できる数少ないデヴァイスのひとつだ。Pixelを除けば、米国でAndroidをすぐにアップデートできる機種は、OnePlusやNokiaの一部のモデルだけ。そのほかのスマートフォンでは、アップデートされるとしても数カ月先になる。セキュリティアップデートの適用も、Pixelのほうが早い。
これらはグーグルにとっては簡単なことだ。そしてそれだけで、ガジェットを評価する人々やハイテク好きのユーザーから高い評価を得られる。グーグルは自らの製品を、常に安全で最新の状態に保っているのだ。
だから何らかの不具合があったとしても、すぐにアップデートで修正することを表明するだけでいい。たとえ新しい顔認証技術において「目を閉じていてもロックが解除されてしまう」といった指摘があったとしてもだ。
高機能かつ安全性の高い顔認証
寝ている間にロックが解除されてしまう問題を別にすれば、Pixel 4の顔認証は、これまで見たなかで最もiPhoneの「Face ID」に近いレヴェルにある。スマートフォンを手にとって画面を見るだけで、ほぼ瞬時にロックが解除されるのだ。
実際、グーグルはこの技術に自信をもっているらしい。アップルと同じように、バックアップ用の指紋センサーは搭載せず、顔認証機能にすべてを託したからだ。パスコードを除けば、顔認証以外にPixel 4のロックを解除する手段はない(多少の手間が問題にならない人にとって、パスコードは悪い手段ではない)。
また、美しい有機ELディスプレイの上部にあったノッチも取り除かれた。代わりにディスプレイ上部のベゼルが太くなり(ベゼルはここにしかない)、懐中電灯で照らさなければ気づかないほど小さな前面カメラやセンサーが組み込まれている。センサーのひとつはいわば超小型のレーダーで、ユーザーの手が近づいたことを察知して、そのユーザーの顔をスキャンする準備をする。
なお、顔のスキャンはローカルで実行される。このため、自分の顔が警察で撮影される逮捕写真のように写っていたとしても、そのデータがグーグルの広大なクラウドに送信されることはない。
顔のデータは専用チップに安全に保管される。このチップは「Titan M」という強そうな名前からもわかるように、安全性が高い。ちなみに、ギリシア神話の巨神タイタン(Titan)から名付けられた金属「チタン(titanium)」も頑丈なものだ。同じように名付けられた「タイタニック号」のことを思い浮かべない限り、セキュリティが非常に強固である印象を与えてくれる。
アップルがFace IDの安全性の高さを訴えているように、グーグルは自社の顔認証機能を極めて安全だと主張している。これまで使った限りでは、指紋認証と同じくらいの安全性はあるようだ。
つまり、家に鍵をかけて泥棒に入られにくくすることはできるが、頭のいい泥棒に別の侵入経路を発見される可能性は残っている。このため、自分を狙う犯罪者が賢い人ではないことを願うしかない。
ジェスチャー機能の実力は?
顔認証機能で活躍するレーダーセンサーには、別の役割もある。それは、手の動きを検出することだ。Pixel 4はハンドジェスチャーで操作できるので、料理中などに手で画面を触りたくない場合は特に便利だ。
ディスプレイの前で手を左右に振ると、Spotifyなどの音楽アプリで楽曲を切り替えられるし、アラームをオフにすることもできる。あるいは、ピカチュウの壁紙に手を振って、「たまごっち」のようにピカチュウと遊ぶことも可能だという。
ところが数日ほど試した限りでは確実に機能しないことがあり、結局は使うのをやめてしまった。グーグルが「Motion Sense(モーションセンス)」と呼ぶこのジェスチャー機能は、いまのところは話題先行と言える。将来、グーグルがこの機能を改良することに期待したい。
話題先行というわけではない新機能もある。例えば「Google マップ」の使用中にはPixel 3aと同様に、拡張現実(AR)で歩く方向を示してくれる。歩きながらPixel 4のカメラで前方を見ると、画面内に大きな矢印が現れて、行くべき方向を示してくれるのだ。クルマにとってのカーナビと同じように、都会を歩く人たちにとって革新的な技術と言っていい。あらゆるスマートフォンに、この機能を早く搭載してほしいものだ。
文字起こし機能の素晴らしさ
新しい「レコーダー」アプリも素晴らしい。人の声を満足できる音質で録音するだけでなく、信じられないほどの正確さで文字に起こしてくれる。ただし、複数の人の声を聞き分けられないので、話し手が1人の場合にしか使えない[編註:日本語には非対応]。
『WIRED』US版のスタッフなら、誰もがこの機能を気に入るだろう。講義を録音している学生や、聴力に問題を抱えている人にとっても役立つはずだ。それ以外の人は、それほど頻繁には利用しないかもしれない。
有料のアプリや文字起こしサーヴィスを利用せずにリアルタイムで文字起こしができるアプリは、これが初めてだった。レコーダーはローカルで動作するので、機内モードでも利用できる。
文字起こし機能の素晴らしさは、レコーダー以外でも活用されている。音量調節ボタンを押すと、音量の下に新しいアイコンが表示される。これは「自動字幕起こし(Live Caption)」と呼ばれる、なかなか楽しい機能だ。
この機能をオンにすると、Pixelで音を再生していると自動的に(英語のテレビで見かけるような)字幕を表示してくれる。動画を視聴しているときや何かを聞いているときに、その音声を文字として読めるようになるのだ。字幕の大きさや表示場所を変えることもできる。
ただし、音楽を再生したときの歌の字幕表示はうまくいかないようだ。普通は、単に「[音楽]」と表示されるが、ときどき歌詞の一部がばらばらに表示される。何を言っているのかわからないポスト・マローンの歌では表示されなかったが、フィルターがかけられた彼の歌声は十分にグーグル的とは言えないだろう。
このような文字起こし機能によって、テック企業がアクセシビリティの向上に多少なりとも力を入れていることは喜ばしい。これがきっかけとなって、さらに取り組みが進むことを期待したい。
「Android 10」ならではの機能が充実
次にPixel 4ならではの機能以外に目を向けてみよう。Pixel 4には「Android 10」がプリインストールされており、いくつかの興味深い機能を利用できる(このOSで注目すべき5つの新機能については、を参照してほしい)。
そのひとつが、ボタンの代わりにフルスクリーンで操作できるインターフェースだ。これは「戻る」ボタンをタップするという従来の操作を、画面を左から右にスワイプする操作に置き換えてくれる。ホーム画面を表示するには、iPhoneと同じように画面を下から上にスワイプする。スワイプを途中で止めれば、マルチタスクメニューが表示される。
ダークモードも用意された。なぜこれほど多くの人がダークモードを求めるのかは個人的にはよくわからないが、とにかく搭載されたので、ぜひ使ってみてほしい。
カメラの機能は期待通りに素晴らしい
Pixel 4のカメラは、「新しいPixel」に期待された通りに素晴らしい。光学ズーム用の望遠レンズが追加され、グーグルが自社で開発した高性能のデジタルズームフィルターが搭載されている。
8倍ズームで何枚か写真を撮ってみたところ、このくらいの倍率にするときにたいてい見られる粗さが軽減され、鑑賞にたえうる写真になっていた。目に見えてわかるような多くのノイズが発生することもない。これはすごいことだ。
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1/10Pixel 4のカメラは、クローズアップで撮影してもディテールを再現できる。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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2/10Pixel 4 XLの標準モードで撮影。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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3/10Pixel 4 XLのポートレートモードで撮影。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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4/10Pixel 4 XLのポートレートモードで撮影。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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5/10Pixel 4 XLの8倍デジタルズームで撮影。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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6/10OnePlus 7Tの8倍デジタルズームで撮影。悪くはないが、コントラストが損なわれたり画質が荒くなってたりしている場所が見られる。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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7/10Pixel 4 XLで撮影。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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8/10OnePlus 7Tの広角レンズのほうが、より広い範囲を撮影できる。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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9/10Pixel 4 XLの標準モードで撮影。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
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10/10Pixel 4 XLの標準モードで撮影。PHOTOGRAPH BY JEFFREY VAN CAMP
気に入ったのは、画面をタップすることでカメラの明るさを切り替えられる機能だ。「ポートレート」モードも、以前より正確に被写体の輪郭を認識し、適切な領域を背景としてぼかせるようになった。ただし、縮れた髪の毛のような複雑な輪郭の被写体は、やはり難しいようだ。
また、設定の「自撮り写真をプレビュー表示のとおりに保存」によって、左右が逆になった顔写真が保存されないようにすることもできる。実際の見た目通りの顔写真を存分に撮ることができるわけだ。
「夜景モード」も、これまで通りに素晴らしい。1年前なら暗くぼやけた写真しか撮れなかったような薄暗い部屋でも、クリアに撮影してくれる。必要な情報がすべてキャプチャーされるまで数秒間じっとしていなければならないが、そうする価値が十分にある写真を撮影できる。
Pixel 4のカメラには天体撮影モードもある。実際に試そうとしたところ、人工光が少なくて星がよく見える場所が見つけられなかった。グーグルによると、このモードを使えば夜空を細部まで捉えた写真を撮影できるという。機会があれば、自然の豊かな場所でテストしてみたい。
ディスプレイは美しく見やすい
基本的なスペックの話がまだ出てこないことを不満に思っている人のために、ひと通りの説明をしておこう。ご想像の通り、Pixel 4はとても持ちやすい。電源ボタンと音量ボタンも、わかりやすい場所にある。IPX8等級の防水性能を備えているので、短時間なら浴室でも使えるだろう(とはいえ決してお勧めはしない)。
本体のフレームは高品質なプラスチック製にも見えるが、実際は黒く塗装されたアルミニウムのようだ。背面はマットガラスのため、どうしてもひびが入りやすい(ケースを買っておこう)。だが、ガラスであるおかげでワイヤレス充電を利用できるうえ、指紋がつきにくい。また、圧力センサーが搭載されていることで、強く握るだけで「Google アシスタント」を起動できる。この機能が不要ならオフにすることも可能だ。
本体の内部には「Snapdragon 855」プロセッサーと6GBのRAM、そして64GBのストレージが搭載されている(128GBも選べる)。microSDカードスロットはないので、自分でストレージ容量を増やすことはできない。
基本のストレージ容量が64GBというのは、最安価格が799ドル〔日本では89,980円)のスマートフォンにしては期待はずれと言える(「iPhone 11」のほうが10,000円以上安い)。「OnePlus 7T」と比べると、さらに分が悪くなる。こちらは128GBのストレージと高速な「Snapdragon 855+」プロセッサーを搭載し、背面カメラがひとつ多いにもかかわらず、価格は599ドル(約65,000円)だ。
優れた点として挙げられるのは、有機ELディスプレイだろう。Pixel 4とPixel 4 XLのディスプレイは美しく(解像度は、それぞれ1080pと1440p)、OnePlus 7Tや「Razer Phone 2」と同じように、ディスプレイのリフレッシュレートが最大90Hzになる「スムーズ ディスプレイ」モードを利用できる。このモードを使えば、ウェブやSNSフィードのスクロール動作が、とても滑らかで自然になるのだ。
ただし、この素晴らしい機能はバッテリーのもちに影響する。このため個人的には、ほかのあまり使わない機能とともにオフにするかもしれない。
バッテリーの性能は、Pixel 4 XLを5日間試した限りでは、やや不安定だった。スマートフォンは1日中ずっと使用するものだが、いつもより頻繁に使っていると、夜の7時ころには残量が30パーセントになっていた。ここまでバッテリーが減ると、夜遅くにバッテリーが切れる可能性が高い。ただし、充電速度が速いのは幸いだ。
決して「ベスト」な選択肢ではない?
iPhoneが好きな人なら、「iPhone 11」(可能なら「iPhone XR」)を買ったほうがいいいだろう[編註:現在は「iPhone SE」も選択肢にある]。Androidスマートフォンがほしい人には、399ドル(日本では49,500円から)の「Pixel 3a」をお薦めする。ワイヤレス充電やクールな新機能はないが、重要なソフトウェアアップデートはおそらく素早く提供されるはずだ。また、Pixel 4にはないヘッドフォンジャックもある。
さらに高速で機能の豊富なスマートフォンを求める人には、OnePlus 7Tがベストだろう。Pixel 4より安いにもかかわらず、機能は同等なのだ。
799ドル(日本では89,980円から)のPixel 4と、899ドル(同11万6,600円から)のPixel 4 XLは、米国のすべての通信キャリアに対応しており、現時点で入手できる最高のスマートフォンのひとつだ。性能は間違いなく素晴らしく、ほかのどの製品よりもグーグルのヴィジョンを体現している。ただ、われわれが最もお薦めする製品とは言えないだけなのだ。
◎「WIRED」な点
同価格帯のスマートフォンで最高のカメラは、夜景モードが素晴らしい。顔認証は、ほかのAndroidスマートフォンより正確だ。ソフトウェアとセキュリティのアップデートは定期的に実施される。リフレッシュレートが90Hzの美しい有機ELディスプレイと強力なチップセットを搭載している。新しい文字起こし機能は実に見事だ。
△「TIRED」な点
バッテリーのパフォーマンスは調節できるが、夜遅くまで使うとバッテリー切れになる可能性がある。防水仕様だが防塵性能はない。ヘッドフォンジャックがなくなった。基本モデルはストレージが64GBしかなく、microSDカードスロットもない。「iPhone」好きの人ならそういう状態にも慣れているだろうが、そのiPhoneでさえさらに低価格でストレージ容量の多いモデルを選べる。
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2020-05-02 05:00:00Z
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