これまで使っていた筆者のメインマシンはCore i7-7700/16GB/500GB/Radeon RX 560を搭載したマシンだ。ベースとなったCore i5-6600の時から数えて約5年が経ち、そろそろリプレイスしたいと思っていたところに、第10世代Comet LakeのCore i5搭載NUCが登場。早速購入したので今回はその組立/試用記をお届けしたい。
117×112×51mmのコンパクトな筐体でモダンなPCを実現
本題に入る前に少し余談を。これまで約10年で筆者が使ってきたメインマシンを並べるとこんな感じになる。最近まで使っていたメインマシンは、2015年8月の記事ではSkylakeのCore i5-6600/iGPUだが、その後、ケースをフルタワーへ変更し、Core i7-7700/Radeon RX 560/80PLUS Goldの電源に入れ替え、本原稿を書く直前まで使っている。途中で構成を変更しているがもう約5年……。ここにあげたPCの中では一番長く使ったことになる。
去年あたりから「そろそろ入れ替えねば」と思っていたものの、とくに不都合や不満があるわけでもなく、いずれにしても次は第10世代と何となく考えていた。
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第10世代はご存じのように2種類あり、1つはComet Lake。ざっくり言えば第9世代の延長線上版だ。もう1つのIce LakeはiGPUを強化した別ラインとなる。いずれもモバイル用のSKUが先行。従ってプロセッサだけを購入することはできず、なにかに組み込まれたものを購入することになる(この原稿が載る前後にはデスクトップ版のComet Lake-Sが出そうだが)。
このようななか、注目していたのがIntelのNUCだった。第1弾はCore i7搭載で登場。性能はバッチリだが少し高い。次に出てきたのはCore i3。安いがさすがに2C/4Tなのでパス。そしてCore i5版が出たと思ったら2.5インチドライブ非対応版……。最近になってやっと2.5インチドライブ対応版の「NUC10i5FNH」が出荷された。本音を言えばIce Lake版のNUCが欲しかったものの、出るのか出ないのかすらわからないこともあり、つい先日購入に踏み切った。
Intel「NUC10i5FNH」は筐体、プロセッサ、電源などがセットになったベアボーンで、別途用意するのは、メモリとストレージ、そしてOSとなる(加えてミッキータイプの電源ケーブル)。仕様上、メモリはDDR4-2666 SO-DIMM×2、ストレージは2.5インチのSATAかM.2(NVMe)。
今回は手持ちのパーツを流用したこともあり、メモリはDDR4-2133 16GB×2、ストレージは2.5インチSSD「Samsung SSD 850 EVO」500GB。メモリに関してはDDR4-2133なのでパフォーマンスが気になるものの、計32GBの容量を優先したかたちとなる(最近安くなったとは言えこの容量だとそれなりにかかる)。
SSDはシーケンシャルリード最大540MB/s、シーケンシャルライト最大520MB/sと、M.2 NVMeタイプと比較すると遅いが、実用上は(筆者の用途的に)とくに問題ない。これらの組み合わせで実際どうなのかは、後半のベンチマークテストを参考にして頂きたい。
OSは64bit版Windows 10 Pro。WSL2を使いたかったこともあり、WindowsInsider Preview ビルド19041.207(20H1、バージョン2004)をRelease Previewリングでインストールしている(May 2020 Update相当)。
ハードウェア的なおもな仕様は以下の通り。
Intel「NUC10i5FNH」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i5-10210U(4コア8スレッド/1.6GHz~4.2GHz/キャッシュ 6MB/TDP 15W) |
メモリ | 最大64GB/2スロット/DDR4-2666 1.2V SO-DIMM |
ストレージI/O | M.2とSATA/2.5インチ |
グラフィックス | Intel UHD Graphics/HDMI 2.0a、USB Type-C(DP1.2) |
ネットワーク | Intel Ethernet Connection I219-V、Intel Wi-Fi 6 AX201、Bluetooth 5 |
インターフェイス | USB 3.1 Gen2(Type-A, Type-C)×2:前面、USB 3.1 Gen2(2x Type-A, Type-C/Thunderbolt 3):背面、音声入出力、SDXCカード(UHS-II対応)、赤外線受信センサー |
電源 | ACアダプタ式 19V/4.74A(90W) |
サイズ | 117×112×51mm(幅×奥行き×高さ) |
価格 | 50,500円(税込) |
プロセッサは第10世代Comet LakeのCore i5-10210U。4コア8スレッド、クロックは1.6GHzから最大4.2GHz。キャッシュは6MB、TDPは15W。メモリはSO-DIMMスロットが2つで最大64GB。ストレージは2.5インチ SATA接続と、M.2スロットがあり、2つ同時でRAID構成も可能だ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics。出力として、HDMI 2.0aとUSB Type-C(DP1.2)を備えている。ネットワークは、Intel Ethernet Connection I219-V、Intel Wi-Fi 6 AX201、Bluetooth 5。
そのほかのインターフェイスは、前面にUSB 3.1 Gen2(Type-A, Type-C)×2、音声入出力、赤外線受信センサー。背面にUSB 3.1 Gen2(2x Type-A, Type-C)×3。このType-CはThunderbolt 3だ。内部にUSB 2.0のヘッダーピンもあるが、これを使うことはないだろう。そして左側面にSDXCカードスロット(UHS-II対応)を配置する。
電源は19V/4.74A(90W)のACアダプタが付属。ただしAC電源側のコネクタがミッキータイプで、別途電源ケーブルを用意する必要がある。また、残念ながらUSB PDには非対応だ。本体と比べてこれだけ大きいACアダプタを付属するぐらいなら、USB PD対応で別途とし、少し価格を下げる……と言うほうが、今となっては使い勝手も良いように思う。
サイズは117×112×51mm(幅×奥行き×高さ)。iPhone Xとの比較写真からもわかるようにかなりコンパクトだ。重量はメモリやストレージ未実装の状態で実測584gだった。税込価格は50,500円@amazon調べ。今回のように流用できる手持ちのパーツがあれば安く仕上げることが可能だ。
なお、詳細な資料はここ(英文)にあるので、興味のある方は合わせてご覧頂きたい。
筐体はiPhone Xとの比較からも分かるように超小型のBOXタイプだ。手のひらにギリギリ乗るサイズとなる(実は扉の写真は当初手のひらに乗せたものにしていたが、ギリギリで収まりが悪く没にした)。質感も高くこのサイズで重量584g。持つとズッシリ詰まった感がある。
前面は、写真からはわからないが、左側に赤外線受信センサーとステータスLED。続いてType-C、Type-A、音声入出力、電源ボタン。背面は、電源入力、HDMI、Gigabit Ethernet、Type-A×2、Type-C、ロックポート。なおこちらのType-CはThunderbolt 3だ。左側面にSDカードリーダ。右側面はメッシュのみ。裏は4つのゴム足があり、外すと内部にアクセスできる。この時、パネル側に2.5インチのマウンタがあり、SATAケーブルが繋がっているため、強く引っ張ると切れたり、トラブルの元になるので要注意。
付属品は、VESAマウンタ、パッケージ、各種ネジ、ACアダプタ、説明書、Core i5シール。付属のACアダプタはサイズ約120×50×28mm、重量285g、出力19V/4.74A(90W)。本体の幅が117mmなのでそれより大きい。また電源ケーブルのコネクタ形状がミッキータイプなので、別途用意する必要がある。
この構造からもわかるように組み立ては超簡単だ。裏のゴム足にあるネジ4つを外し、裏パネルを開け、メモリをスロットへ、ストレージはM.2かSATAかで付ける場所が違うものの、取り付け自体はすぐだろう。手慣れた人なら5分内。筆者もそんな感じでとても自作とは呼べないレベルで面白くなかった(笑)。
あとはディスプレイ、USB経由でHIDデバイス、電源を接続し、電源オンにすればシステムが起動する。この時、はじめの1回目だけは妙にロゴが出るのが遅く、故障かと焦ってしまったが、しばらくするとブートする。初期化でも行なっているのだろうか。BIOS画面の呼び出しは[F2]。以下画面を掲載するが、とくになにも触らずそのまま使っている。
Windowsのセットアップなどは後半をご覧頂きたいが、実際使った感想を少し。まずとにかく静か。もちろんファンレスではないため、筐体に耳を近づければ気持ち音はするものの、旧メインマシンは、CPU、GPU、筐体、電源とファンが4つ。一部静音タイプなのだが、それでもやはり音がしていたのだろう。とくに気にしていなかったのだが、このNUCに変えてから、部屋の中がシーンと静まり返ってしまった。
発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、若干後部が温かくなる程度で、ないに等しいレベルだ。いずれにしてにさすがIntel純正と言った完成度だ。
i7-7700とパワー変わらず、Radeon RX 560の約1/3のiGPU性能
Windowsのセットアップは要点だけ。Windows 10用の「メディア作成ツール」をダウンロード、USBメモリへイメージを入れ、ブート。あとは指示通り操作すればWindows自体はインストールできる。
このとき、本機専用のドライバをいくつか入れる必要があるのだが、有線LAN/無線LANともに、Windows標準ドライバ群には入っておらず、起動直後はネットにアクセスできない。これではドライバをインストールするのが面倒なので、別のPCを使い有線LANのドライバだけ先にここの”インテル ギガビット・イーサネット・ネットワーク・コネクション・ドライバー for Windows 10 for Intel NUC”をダウンロードしてUSBメモリなどからインストール、ネットへ接続する。
仕上げは“インテル ドライバー & サポート・アシスタント”で確認。不足分をインストールすれば完了だ。筆者のケースではBIOSのアップデートもあったので、合わせて行なっている。
とりあえず入れたアプリケーションは、「Office」、「Photoshop」、「WinSCP/PuTTY」、「Visual Studio Code」、「WSL2/Ubuntu」、「Docker」、「秀丸」、「Chrome(ついでにEdgeもChrome版)」、「EIZO ColorNavigator」、「ShareMouse」、そして名刺印刷用に「ラベル屋さんHOME」。データに関してはNASかクラウドにあるため、一切コピーしていない(秀丸の設定やWinSCPのホストリストをインポートした程度)。
用途的には原稿、画像編集、ソフトウェア開発、裏ではWSL2/UbuntuやDockerでLAMPなどサーバー系が動く。つまりGPUを強化するよりメモリが多い方が有利。従って今回のNUCを選んだ次第だ。少し前は動画の編集も行なっていたので強いGPUにも興味があったが、今はこんな感じだ。本原稿も新メインマシン上で書いているが(掲載した写真も新メインマシンでPhotoshopを使用)、とても快適に作動している。
WSL1とWSL2の違いは、ざっくり前者がAPIエミュレーション、後者はVMに丸ごとLinuxが入ってるイメージだ。従ってWSL2の方が互換性は高い。ただしProではHyper-V、Homeでは仮想マシンプラットフォーム(Hyper-Vのサブセット)を使うため、VMwareなどと併用できない。大昔のEMM386とQEMMが同時に使えない事件を思い出してしまった。
見慣れない「ShareMouse」は、少し前に笠原一輝氏が書かれていた「Mouse Without Borders」のWindows/macOS版のようなものだ。有償であるが、ネットワーク上にあるマシン(Windows/macOS問わず)のマウスやクリップボードなどを共有できる。筆者の場合、Apple Magic Mouseのあの「持った感じ」と「滑らかなスクロール感」が好きで、その感覚をWindowsでも使いたく利用している(セカンドマシンがMacBook Pro 13)。
May 2020 Updateで興味深いのは、設定/Microsoft IME/キーとタッチのカスタマイズにある、キーの割り当てだ。各キーに好みの機能を割り当てるをオンにすると、無変換キーはIME-オン、IME-オフ、IME-オン/オフ、ひらがな/IMEオフ、変換キーはIME-オン、IME-オフ、IME-オン/オフといった具合に、従来のIMEオン/オフとは違うキーにアサインできる。以前からキーマップの変更は可能だったが、少しマニアックで設定が難しかった。日本語配列がUS配列より窮屈になってる理由の一つに[半角/全角]キーがあるが、そろそろ止めてもいいのではないだろうか。
さてWindowsが動いたところで、旧メインマシンとの差が気になるところ。簡易式だがCINEBENCH R20とGeekBench 5で比較したのが以下のとおり。ただし冒頭で説明したとおり、前者のメモリはDDR4-2400のところがDDR4-2133。後者はDDR4-2666のところがDDR4-2133となっている。
Core i7-7700/16GB(DDR4-2133)/Radeon RX 560 | Core i5-10210U/32GB(DDR4-2133)/iGPU | |
---|---|---|
CINEBENCH R20 | ||
Multi | 2,084(8位) | |
Single | 422(2位) | |
GeekBench 5.1.1 | ||
Single-Core Score | 1,101 | 1,103 |
Multi-Core Score | 4,393 | 4,250 |
OpenCL Score(RX 560) | 18,803 | 5,856 |
驚いたのはこのテストの範囲内ではCPU的にほぼ同等。非常に近いスコアが出ている。OpenCLはもっと差が出るかと思ったが、約3倍程度に収まった。フォームファクタや消費電力などを考えるとかなり優秀ではないだろうか。テキスト系の処理が多い筆者の用途的にはピッタリだ。
次にいつものベンチマークテスト。PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark。
ストレージがSATA接続2.5インチSSDなので、M.2 NVMeタイプより桁1つ遅くなっているが、ほかは最近掲載した同じCore i5-10210U搭載ノートPCより3DMarkも含め一部負けているのもあるが、多くは若干スコアが高めだ(CrystalDiskMarkを除く)。DDR4-2666とDDR4-2133で目に見えて違いが出れば、DDR4-2666 8GB×2を新調しよかと思ったが、その必要性もなさそうだ(DDR4-2666にするとさらに向上するかも知れないが……)。
PCMark 10 v2.1.2177 | |
---|---|
PCMark 10 Score | 3,963 |
Essentials | 8,024 |
App Start-up Score | 10,460 |
Video Conferencing Score | 6,370 |
Web Browsing Score | 7,754 |
Productivity | 6,335 |
Spreadsheets Score | 6,792 |
Writing Score | 5,909 |
Digital Content Creation | 3,325 |
Photo Editing Score | 3,972 |
Rendering and Visualization Score | 2,260 |
Video Editting Score | 4,098 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,630 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,715 |
Work Accelarated 2.0 | 4,936 |
Storage | 4,964 |
3DMark v2.11.6866 | |
Time Spy | 482 |
Fire Strike Ultra | 306 |
Fire Strike Extreme | 587 |
Fire Strike | 1,205 |
Sky Diver | 4,870 |
Cloud Gate | 9,790 |
Ice Storm Extreme | 47,713 |
Ice Storm | 68,713 |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 548.045 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 518.991 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 394.820 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 290.454 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 236.019 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 315.178 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 31.080 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 73.332 MB/s |
以上のようにIntel「NUC10i5FNH」は、117x112x51mmのコンパクトな筐体に、Comet LakeのCore i5、USB 3.1 Gen2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5、Thunderbolt 3などがビルトインされ、メモリスロット2つ、2.5インチ SATAとM.2スロットを備えたNUCだ。
今回筆者のケースでは、もともとCore i7-7700/16GB/500GB/Radeon RX 560からの置き換えなので、GPU性能に関しては約3分の1ほどになってしまったものの、その代わり省スペース、省エネ、静音、先に挙げた最新のインターフェイス、メモリ32GBなど、それ以外の部分が大幅にパワーアップ。非常に満足できる内容となった。
またメモリDDR4-2133、ストレージSATAと、一番遅い組み合わせなので、「これ以上遅くなることはない」と言う意味で今回の記事は参考になるだろうか(笑)。手持ちのパーツがある人もない人も、NUCに興味がある人は是非使ってほしい1台だ。
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2020-05-20 02:00:00Z
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