ゲーミングPC感は抑えつつ、しれっとハイパフォーマンス。
能ある鷹は爪を隠す、的なガジェットって良いと思うんです。たとえばフォルクスワーゲンのフェートンW12は、派手やかなベントレー・コンチネンタルとだいたい同じエンジンを搭載しつつ、見た目はフォルクスワーゲンだった、とかです。そんな、一見普通なんだけど宇宙からサイヤ人が殴り込んできたらいつでも互角に戦えそうなガジェットのひとつが、MSIのGS66 Stealth(以下GS66)です。
MSI GS66 Stealth
これは何?:15インチのゲーミングラップトップ
価格:1600ドル(約17万2000円)から、レビュー機は2250ドル(約24万2000円)、日本向けモデルは31万6800円(オフィシャルストア価格、税込)
好きなところ:クリーンで控えめなデザイン、キーごとのRGBライティング、増強されたグラフィックス、ポートたくさん、画面のリフレッシュレートが最大300Hz
好きじゃないところ:画面の明るさがそこそこでしかない、ファンが異様にうるさくなる、タッチパッドがまれに飛ぶ
外観は全面黒、開くとRGB
2018年のGS65 Stealthはブラックとゴールドのスタイリングでしたが、2020年版のGS66はブラックオンブラックで、「ステルス」の名にぴったりです。MSIのロゴはほとんど影みたいにさり気なく、外側には通知のライトとかRGBライトとかもないので、外出先で使ってても、「あ、ゲーマーなんだ」って瞬時に悟られる心配もなさそうです。
でもフタを開けてみると、控えめな外観とは打って変わって、RGBライティングをキーごとにカスタマイズできるカラフルなキーボードが顔を出します。キーボードはゲーミングデバイス専門ブランド「SteelSeries」とのパートナーシップで作られていて、プレインストールされたSteelSeries Engine 3アプリを使って色設定を変えたり、マクロを組んだり、いろいろできます。
キートラベルの深さは1.5mmで、心地良い反発感があり、数時間ゲームやタイプをした後でも、もっと浅いキーボードを使った後みたいに疲れることはありませんでした。ゲーミングラップトップっぽさを隠したいときには、バックライトを完全に消すことも可能です。
GS66がGS65と違うところはまだあります。ヒンジのデザインが刷新されてもっとしっかりした感じになり、筐体も前より若干硬い感じになって、全体的にもっと頑丈そうに見えます。その分重量は2.1kgと、GS65より200gくらい重くなりました。でも一番インパクトがあるのは、タッチパッドが大きくなったことでしょうね。多分ゲーム用には外付けマウスを使う人がほとんどですが、超ワイドなガラスのタッチパッドはやっぱりうれしいです。ワイドすぎて、右クリックとかしたいときにコーナーに指を伸ばすのに慣れが必要なくらいです。ただカーソルがあさっての方向に飛ぶことが何回かあったんですが、全体的にはジェスチャーも含めて正確に認識されてました。
GS66のオーディオは、左右のパームレストに上向きスピーカーが入り、よりリッチでダイレクトな聞こえ方になりました。サイドには各種ポートがずらりと並び、USB-Cポートふたつ(うちひとつはThunderbolt 3対応)、USB-Aがふたつ、HDMI、ギガビットイーサネット、3.5mmオーディオジャックという布陣になっています。
リフレッシュレート300Hzが生きるパフォーマンス
でももっと大事なのは、中身です。Max構成だとディスプレイはリフレッシュレート300Hz、CPUは8コアのIntel Core i9-10980HK、GPUはNvidiaの2080 SUPERです。とはいえこの構成だと最低2500ドル(約27万円)になり、決して安くはありません。でもレビュー機は2250ドル(約24万2000円)で、CPUはi7、RAMが32GB、GPUは2070 SUPER、ディスプレイが1080p・300Hzでしたが、それでもパフォーマンスは十分でした。
試しに『Far Cry 5』を1080pで、画質はウルトラ設定でプレイしてみましたが、GS66でのフレームレートは平均96fps、画質をハイ設定に下げればすぐ120fps以上まで上げられます。でも240Hzまたは300Hzというディスプレイの真価を発揮させるには『オーバーウォッチ』みたいなゲームが適していて、これだと1080p・ハイ設定で270fpsに達しました。ここまで来るとプロのeスポーツの域ですが、1秒間のフレームが何十枚も増えることで、敵に撃たれるのか、うまくかわせるのかが変わってきます。さらにGigabyteの同等スペックのマシン、Aorus 17Gと比較してみたんですが、17インチ対15インチで冷却用のスペースが小さいので不利にもかかわらず、MS66のほうが多くのゲームで5〜10%高いフレームレートが出ていました。
もうひとつうれしいのは、バッテリー容量が99.9Whr(飛行機に機内持ち込みできる上限)あることで、電力消費の激しいゲーミングラップトップなのに動画再生テストでは5時間53分保ちました。GS65は4時間23分だったので、それより1時間半も伸びているし、Gigabyte Aorus 17G(3時間49分)より2時間以上長いです。一般的なウルトラポータブルPCは8時間以上保つのでそれにはまだまだ及びませんが、でも電源がない場所でもしばし安心して使えるのはありがたいです。
パフォーマンスには残念なとこも
GS66の不満なところは、いくつかにまとめられます。ひとつは画面の明るさが最大でも317nitで、まあ普通です。この価格帯のラップトップ、とくにゲーミングラップトップは400nit近くあるのが当たり前になっているし、GS66には4Kとか有機ELの選択肢もありません。なのでGS66は、ゲームとかコンテンツ制作用にラップトップを買いたい人が期待するほどきれいじゃありません。
もうひとつは、熱で動きが遅くなったりオーバーヒートしたりまではなかったものの、負荷がかかると本体がかなり熱くなりました。Webとか動画視聴より重いことをしようとするとファンが回りだし、サイドと背面の通気口から熱気がガンガン出てきます。熱くてヤケドしそう…ってほどには一度もなりませんでしたが、ゲーム中にいろいろな意味で手に汗握ることにはなりました。
でも熱よりうっとうしかったのは、ファンの音です。自宅でGS66のベンチマークテストをしてるとき、隣の部屋で仕事してた妻がわざわざ見に来て「なんかウィィィィィィンって高音がするんだけど、何?」って聞いてきたくらいです。
MSIがDragon Centerアプリのパッチを出して、ファンの音は全体的にだいぶ小さくなりはしました。でも、パフォーマンス設定を「Balanced」にセットして何も動かしていないときでも、ファンが突然回りだすことがありました。
「ステルス」らしからぬうるささですが、そのせいで買うのをやめるほどではないです。ただ、たとえば図書館みたいな静かな場所で使うときには、幸い「サイレント」っていうパフォーマンス設定があるので、これを使うと良いと思います。じゃないと、「なんでヘアドライヤー持ち込んでるんですか?」って問いただされるかもしれません。
GS66 Stealthの良いところはたくさんあります。抑えたデザインなので、ゲーミングラップトップってだけで「『Fortnite』のトラヴィス・スコットイベント、見た?」なんて話しかけられる心配もないし、ビルドのクオリティもどんどん良くなってます。240Hzまたは300HzのディスプレイのオプションやIntel・Nvidiaの最新チップによって、GS66は素晴らしいパフォーマンスを実現しつつ、バッテリーも驚くほど長持ちさせてます。まるで『ドラゴンボールZ』の良回のように、パワーとアクションたっぷり、音と熱気が少々、でも余計なものは入ってない、それがGS66です。
まとめ
・負荷が上がると熱くなるので、ひざの上に載せてゲームはしないほうがいいと思います。
・バッテリーは99.9Whr、たいていの飛行機に乗せられるバッテリー容量の最大限です。
・他の15インチラップトップとは違い、4Kとかタッチスクリーンのオプションがありません。でもリフレッシュレートは240Hzまたは300Hzから選べます。
・全ブラックのペイントですが、それでも指紋が付きやすいです。
・Windows Helloでログインする用の赤外線カメラ搭載、でも指紋リーダーは付いてません。
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2020-05-20 03:30:00Z
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