地球に帰還するカプセルと飛び去る「はやぶさ2」の想像図(©JAXA)
小惑星「リュウグウ」での探査活動を終えた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が12月、地球に帰還する。リュウグウで回収した試料が入っているとみられるカプセルを豪州に投下し、地上で試料を分析する。一方、試料を地球に届けたはやぶさ2は別の小惑星に向けた新たな旅に出発し、今後の惑星探査に必要な長期間航行技術の獲得を目指す。はやぶさ2が約10年の追加ミッションに挑む。(取材・飯田真美子、冨井哲雄)
地球から9200万キロメートル
2019年11月にリュウグウを出発したはやぶさ2は、7月14日現在、地球から9200万キロメートルの距離を航行している。有機物や水を含む可能性が高い「C型(炭素質)小惑星」に分類されるリュウグウで、はやぶさ2は2度のタッチダウン(着陸)を行い、地表と内部の試料を回収したとみられている。この試料を地球に届け分析することがプロジェクト最大の目的だ。
リュウグウに人工クレーターを作り小惑星内部の試料を採取する新しい試みが注目された。内部の試料は太陽光などの影響を受けず、太陽系が形成された46億年前の状態の物質を保存している可能性が高い。はやぶさ2プロジェクトチームの吉川真ミッションマネージャは「試料を分析することで、太陽系の誕生と進化の解明につながる成果が得られる」と期待する。
現在、プロジェクトチームははやぶさ2の地球帰還後の試料回収ミッションに向け準備を進めている。はやぶさ2は地球軌道に入った後、試料が入っているとみられるカプセルを分離。カプセルは地球の大気圏に再突入し、豪州の南オーストラリア州ウーメラに12月6日に着地する計画だ。10年に小惑星探査機「はやぶさ」が宇宙から放出した試料入りカプセルの回収場所とほぼ同じ場所となる。
はやぶさ2から分離したカプセルは秒速約12キロメートルで地球に再突入し、地上からの高度約10キロメートルでパラシュートを開く。
その後、熱からカプセルを守っていた「ヒートシールド」を分離し、カプセルは通信用の電波を発信し降下する。カプセルの到着予定地域の周囲に、カプセルからの信号を受信するアンテナを五つ配置してカプセル落下地点の方向を調べる。
運用計画は、はやぶさの帰還時とほぼ同じだが、今回はレーダーと飛行ロボット(ドローン)を使い到着予定地域付近を探索する。地上のアンテナ4局のレーダーで、パラシュートからのレーダーの反射からカプセルが落下する方角と距離を測定。またドローンで空中から連続撮影し、撮った画像を素早く認識処理しカプセルを特定する。
JAXAはカプセルを回収後、豪州でカプセルの分解作業や試料からのガス採取、簡易解析などを実施し、日本に試料を輸送する。
カプセル放出後、次のミッションへ
カプセル放出後、はやぶさ2は他の惑星に向け宇宙飛行を続ける。大気圏に再突入し燃え尽きたが、はやぶさ2では引き続き宇宙探査のミッションを実施する。JAXAの津田雄一はやぶさ2プロジェクトマネージャは「ミッションを継続できることは幸せ。厳しい状況だが挑戦したい」と意気込む。
プロジェクトチームは地球軌道を通過する小惑星や彗星(すいせい)など約1万8000の候補天体を探索した。高速で天体を通過し観測する「フライバイ探査」ではなく、天体付近にとどまりながら探査する「ランデブー探査」ができる天体を優先して探した。はやぶさ2の残存燃料などから計算した際、惑星の重力を使い周回軌道に突入する「惑星スイングバイ」とイオンエンジンを使い30年前後までに到着しランデブー探査できる天体を絞り込んだ。直径30―40メートルで自転周期が10分程度の二つの天体を候補として選んだ。これらの天体を最終目的地とする二つの計画案を公表した。
一つは、はやぶさ2を24年に金星の引力を利用して軌道を変更し、29年に小惑星「2001AV43」への接近を目指す「金星への接近案」。2001AV43は金属を含む「S型(ケイ素質)小惑星」で細長い形をしている。
もう一つは、26年に地球近傍惑星「2001CC21」を通過後、地球の引力を利用して軌道を変更し、31年にも小惑星「1998KY26」への接近を目指す「2つの惑星への接近案」だ。1998KY26はリュウグウと同じC型小惑星であり、両者を比較することで大きさによる形成の違いを知ることができる。
両計画に共通した目標として、イオンエンジンの長期運用技術や宇宙探査機の長期維持技術などの獲得により、太陽系での長期航行技術を確立することが挙げられる。また高速で自転する小惑星を観測しリュウグウと比較する。
衝突懸念の小惑星の性質調べる
さらに探査対象となる2001AV43と1998KY26の大きさの小惑星は、100―200年に1度地球に衝突する可能性がある。これらの小惑星に近づいて探査し構造や強度などを調べることで、衝突した際に大きな被害を引き起こす数十メートルサイズの小惑星の性質を解明できる。天体の地球衝突による災害を防ぐ活動「プラネタリー・ディフェンス」に役立てられるかもしれない。プロジェクトチームは両案を検討し、9月にも一方の案を採用する。津田プロジェクトマネージャは「はやぶさ2の寿命を考えると、あと10年生き残る保証はない。だからこそ挑戦し、新たな惑星に到着して面白い成果を得たい」と語る。
12月にはやぶさ2は地球に帰還しカプセルを投下するとともに、新たな旅路へと出発する。はやぶさ2の物語はまだ終わらない。新たなドラマの始まりに期待が高まる。
日刊工業新聞2020年7月24日
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2020-07-24 21:20:36Z
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