以前の本連載で、「Surface Neo」は2020年内に登場せず、同デバイスに搭載されるWindows 10Xや同OSを搭載したサードパーティー製デバイスについても、2021年以降に延期されるという話を紹介した。
一方でAndroidを搭載する「Surface Duo」については、製品投入間近という話が出てきており、日本国内の投入時期はまだ見えないとしても、米国や一部地域では2020年の夏中には出荷が開始されるかもしれない。
2画面デバイス「Surface Duo」についておさらい
2画面ディスプレイを持つSurfaceシリーズの中でも、Duoは比較的小型で“ポケット”サイズをうたっている。Androidスマートフォンで2019年から2020年にかけて多数登場した有機EL(OLED)ディスプレイを搭載して“折りたたみ可能”な製品だ。
Microsoftの2画面ディスプレイ製品は、2枚の同サイズのディスプレイを組み合わせて360度開閉が可能な“ヒンジ”で接続することで、可搬性を重視しつつ、いざというときはクラムシェル型ノートPCのように使ったり、あるいは180度に開いて全画面ディスプレイとして利用したりするなど、用途の多様性を訴えるものとなっている。
現在もなお、比較的高価な大型OLEDディスプレイを“折りたたみ”加工するという特殊工程を持つ既存製品に比べ、おそらくSurfaceが採用する方式はより安価に導入が可能だ。また“継ぎ目”こそあるものの、画面を広く自由に使うという面では遜色なく、アプリケーションの提案次第ではそれなりにシェアを獲得できるという目算もある。
スペック的にみれば、Surface Neoが9型ディスプレイ×2の見開きで13型となっているのに対し、Surface Duoは5.6型ディスプレイ×2の見開きで8.3型だ。5.6型というサイズは、今どきのスマートフォンでは標準、あるいは小型に属する部類なので、普段はSurface Duoをスマートフォンのように活用しつつ、いざとなれば小型タブレットや小型ノートPCのような使い方も可能となる。
現在、MicrosoftがSurface Duoについて公開しているのは2019年10月に開催した製品発表イベントでのサイズ情報と、生活での利用シーンを紹介した動画が埋め込まれた公式ページのみとなっている。
Windows Centralのザック・ボーデン氏が自身の情報源として報じるところによれば、ディスプレイあたりの解像度は1800×1350ピクセル(401ppi)のAMOLEDで、QualcommのSnapdragon 855と6GBのメモリを搭載するという。バッテリー容量は3450mAhとやや少なめの印象もあるが、この他にUSB Type-Cポートを採用し、Surface Penが付属する。
OSはAndroid 10となるが、最新のバージョン11が2020年9月以降のタイミングで市場投入されるとみられ、Microsoftもまた比較的早いタイミングでSurface Duo向けのAndroid 11アップデートを提供してくるという。
ボーデン氏はSurface Duoのウィークポイントとして、最新のSnapdragon 865を採用せず、搭載するネットワーク方式も5Gではなく4G LTEに留まる点を挙げているが、今後Surface Duoの後継モデルが登場したときに、改めて両者がサポートされる可能性に触れている。なお、悲しい話だが、ボーデン氏の記事では現状のテストデバイスで「NFC」と無線充電機能は見当たらないという。
リリース時期とアプリケーション
Surface Duoについて興味深いのは、そのスペックよりも、むしろリリース時期だ。2019年10月の発表イベント時点では、Surface Neoと同じ「2020年のホリデーシーズン」とされていたが、ボーデン氏は5月時点で「間もなく」と表記しており、ローンチが大幅に前倒しされたことを示唆している。
1つ出ていたうわさが「7月中」というものだ。Neowinがまとめているが、もともとSurface Duoの発表前倒しは、Samsungの折りたたみ型デバイス「Galaxy Fold 2」が出る前の市場投入を狙ったものだったという。
Samsungは8月5日(日本時間で同日午後11時)に「Galaxy Unpacked 2020」イベントのバーチャル開催を予定しており、ここで恒例となるNoteシリーズ最新モデル「Galaxy Note 20」に加え、Galaxy Fold 2を発表するとみられていた。だが、ボーデン氏が7月14日にTwitterで報告したところによれば、Surface Duoのローンチは「今夏のいつか」まで後退したという。
理由の1つとしては、Unpacked 2020では目玉の1つとなるGalaxy Fold 2は発表されず、同イベントは純粋にNoteや関連製品の発表会になることが挙げられている。Galaxy Fold 2そのものは9月ないしは10月以降に順延ということで、「Surface Duoの駆け込みローンチは必要なくなった」という考えだ。
Fold 2が延期される理由は不明だが、Surface DuoがSamsung Display(SDI)のAMOLED方式のディスプレイパネルを採用しているため、Fold 2と合わせてパネル供給上の問題があった可能性も考えられる。同時期には最新モデル全てでOLEDパネルを採用してデザインが一新されたiPhoneの市場投入が見込まれており、大量のパネル需要が集中しているのではないかと筆者は予測する。
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2画面デバイス用アプリを開発できる手段
いずれにせよ、投入時期がかなり間近に迫っているというのは間違いない。米Microsoftのコミュニケーション担当リードのフランク・ショー氏が7月10日にWork From Home的な写真をTwitter上で投稿し、その中にSurface DuoとSurface Penが映り込んでいることが話題になった。明らかにわざとなのだが、少なくともステルスではないマーケティングを展開する程度にはデバイスが用意され、開発者にアピールする機会が増えているのだろう。
デバイス単体としても興味深いが、これが面白いのは「2画面デバイス」で手軽に実験できる手段が開発者に早い段階で提供されることだ。現状で2画面ディスプレイ用アプリケーションを開発するための「Surface Duo SDK Preview Release」と「Surface Duo Emulator」の他、Windows 10Xの開発キットとしてSDKとエミュレーターが提供されているが、実際に稼働をテストできる物理デバイスはない。
AndroidとWindowsという違いこそあるものの、アプリケーションやアイデアの挙動をテストするにはSurface Duoは適したデバイスだと思われ、これが早期に市場投入されるのは2021年の投入が見込まれるSurface Neoならびにサードパーティー製のWindows 10X搭載デバイス(2画面デバイス)の利用促進や、環境整備にプラス材料になるのではないだろうか。
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2020-07-16 02:30:00Z
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