超大質量ブラックホールとその周りの降着円盤の想像図。円盤の中に2つの小さなブラックホールが含まれている。
Caltech/R. Hurt (IPAC)
- 2つのブラックホールが衝突して時空を曲げ、重力波を地球に向けて送り出した。
- レーザー干渉計重力波観測所(LIGO)はその時空の波紋を検出し、同時にカリフォルニアの望遠鏡は同じ場所からの光を検知した。
- この光は、光が逃げることができないような強い引力を持っているブラックホールから、初めて検出できたものだった。
- 将来の重力波観測では、科学者が宇宙の衝突をより多く発見し、その性質を研究するのに役立つだろう。
天文学者たちは初めて、2つのブラックホールの衝突による閃光を見た。
2つの物体は地球から75億光年離れたところでぶつかり、より大きな超大質量ブラックホールの周りの渦巻く物質の中で融合した。この渦巻きは降着円盤と呼ばれ、ブラックホールの事象の地平線(重力が非常に強いために光さえ脱出できないところ)を周回している。
急速に回転する超巨大ブラックホールが降着円盤に囲まれている様子を描いたもの。ブラックホールの主な特徴が赤い文字で示されている。
ESO, ESA/Hubble, M. Kornmesser; Business Insider
なので科学者たちは、2つのブラックホールが衝突するのを見たことがない。光がないので、重力波(巨大な物体の衝突によって生じる時空の波紋)を検出することによってのみ、そのような合体を識別することができる。
アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)は最初にこの現象を予測したが、重力波が検出されるとは考えていなかった。 それらは騒音と振動の中にある地球上で検知するには弱すぎるように思えたのだ。
100年の間、アインシュタインの言うことは正しいように思えた。しかし、2015年に、ワシントン州とルイジアナ州の2つの観測器が最初の重力波を検出する。これは、約13億光年離れた2つのブラックホールの合体からの信号だった。この発見により、天文学の新しい分野が開かれ、レーザー干渉計重力波観測所(LIGO)と呼ばれるこのプロジェクトの発案に貢献した研究者に対してノーベル物理学賞が与えられた。
今回、LIGOが発見したブラックホールの衝突では、科学者たちは初めて光も一緒に検知した。ブラックホールは光を発しないのでこれまではそのようなことは不可能だと思われていた。
2つのブラックホールが1つの大きなブラックホールに合体する様子の想像図。
NSF
研究者たちは、2つのブラックホールが合体した衝突の力によって、新しく形成されたブラックホールが、より大きなブラックホールの周りにある降着円盤のガスの中を通過したと考えている。
「望遠鏡で見ることができるような明るい閃光が発生したのは、高速移動とガスの反応によるものだろう」と、光を撮影したカリフォルニア工科大学の天文学者、バリー・マッカーナン(Barry McKernan)はプレスリリースで述べた。
イタリア版LIGOの重力波観測所「Virgo」内の鏡を検査する作業員。
EGO/Virgo Collaboration/Perciballi
研究者らは、6月25日に学術誌「Physical Review Letters」で研究成果を発表した。彼らは、このブラックホールは数年後には、超巨大ブラックホールの降着円盤に再突入すると予想しており、別の閃光を見ることが期待できるという。
「このような閃光を探すことは、天体物理学や宇宙論の問題の解明に非常に役立つ」と、研究の共著者でカリフォルニア工科大学の天文学部助教授のマンシ・カスリワル(Mansi Kasliwal)は、リリースで述べている。
「このようなフレアを再び観測し、他のブラックホールの合体からの光を検出することができれば、これらのブラックホールの居場所を突き止め、その起源についてもっと詳しく知ることができるだろう」
壮観なフレア(閃光)が重力波と一致した
このスーパーコンピューターによるシミュレーションは、宇宙で最も激しいイベントの1つを示している。2つの中性子星が衝突し、合体し、ブラックホールを形成するところだ。
NASA Goddard
アメリカの2つの重力波検出器で構成されているLIGOと、そのイタリア版であるVirgoの両方が、2019年5月に空間と時間の乱れを感知した。その数日後、カリフォルニア州サンディエゴにあるパロマー天文台の望遠鏡は、同じ場所から来た閃光を観測した。
カリフォルニア工科大学の研究者たちが、その領域のアーカイブ映像を見返して爆発を再確認した。その光は1カ月間かけてゆっくりと消えていったという。時系列と場所はLIGOの観測結果と一致していた。
「この超巨大ブラックホールは、今回の突然のフレアの数年前から賑やかではあった」とカリフォルニア工科大学の天文学の教授で研究の主著者であるマシュー・グラハム(Matthew Graham)はリリースで述べた。
「我々の研究では、このフレアはブラックホールの衝突の結果である可能性が高いと結論付けているが、他の可能性を完全に排除することはできない」
しかし、研究者たちはこの光が超巨大ブラックホールの降着円盤の日常的な爆発が原因である可能性は非常に低いと見ている。それは、今回の爆発以前の15年間は、超巨大ブラックホールの降着円盤は比較的穏やかだったからだ。
「このような超巨大ブラックホールは常にフレアを起こしている。彼らはまったく静かな天体というわけではないが、今回のフレアのタイミング、大きさ、場所は特別だった」とカスリワルは述べている。
LIGOは衝突するブラックホールをどうやって検出するのか
ワシントン州ハンフォードにあるL字型をした重力波検出器。
LIGO Laboratory/NSF
LIGOとVirgoはともに、L字型をした2.5マイル(約4km)の長さの管2本で構成されている。
レーザービームを発射して、ハーフミラーでそれを2つに分割する。分割されたビームのうち1つは片方の管をそのまま進み、もう1つは90度曲がったもう1本の管を進む。
LIGOとVirgoはともに、L字型をした2.5マイル(約4km)の長さの管2本で構成されている。
観測では、レーザービームを発射して、ハーフミラーのスプリッターでそれを2つに分割する。分割されたビームのうち1つは片方の管をそのまま進み、もう1つは90度曲がったもう1本の管を進む。
通常、ビームは2本の管の終点にあるミラーで跳ね返り、同時にスプリッターの場所の戻ってくる。
しかし、重力波が地球に到達すると、時空が歪み、それぞれの管が長さが変化する。これはリズミカルな伸縮で、重力波が通過するまで続く。すると2つの光は同時に戻らないため、明るさが変わる。
検出器は、この明るさの変化を測定することで、地球を通過する重力波を観測している。
この方法で、2017年10月には2つの中性子星の合体が、2019年8月には中性子星を飲み込むブラックホールが観測された。
これらの観測所では、これまでに重力波らしきものを30回以上検出している。
日本の「KAGRA」は、より多くの望遠鏡で宇宙の衝突を発見するのに貢献できる
科学者たちは、日本の岐阜県飛騨市にある新しい重力波観測所「KAGRA(Kamioka Gravitational-wave Detector)」が本格稼働すれば、数年のうちにこのような発見が増えると期待している。
LIGOとVirgoの科学者らは、KAGRAの協力で大規模な衝突の場所を現在の3倍以上の精度で絞り込むことができるとしている。これにより、望遠鏡で重力波の原因となる衝突を確認したり、重力波が発する光を発見したりすることがはるかに容易になるだろう。
ノースウェスタン大学とLIGOの宇宙物理学者であるビッキー・カロゲラ(Vicky Kalogera)は、この新しいグローバルネットワークによって、最終的には年間100回の衝突を検出することができるだろうとBusiness Insiderに語った。
成長を続ける重力波観測ネットワークが精度を上げて、より多くの衝突を検出するようになれば、科学者たちはこれらの巨大な衝突の性質についてより多くのことを知ることができるようになるはずだ。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)
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2020-07-02 19:52:26Z
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